Episode3-2
俺が文彦と出会ったのは中学の時で、初めのうちは文彦の近くに一人いたと思うが、いつの間にか文彦の近くからいなくなって一人でいる印象があった。首席入学のエリートで喧嘩ばかりする不良と噂だったから近づいていくやつは少なかった。
俺が初めて話したのは幼なじみの飛鳥が、突然文彦に話しかけたことで始まったんだ。
「それって新思潮?僕も読んでみたいけどまだ買えてないんだよね」
「……ぇと、岡村?もう読んだから読む?」
「いいの?羽鳥ってもしかして本好き?」
「文学は好きだよ、知らないこととか言葉がわかるから……後ろのやつは?」
「僕の幼なじみの門倉麻也。ねえ、一緒に文学サークル作ろ」
飛鳥が俺のことも紹介してくれたおかげで、文彦と接点を持つことが出来たからあの文学バカには感謝してる。
文彦は成績がいつもトップクラスで頭はいいが、素行は良くなくて虐められている奴がいたらその場でいじめてたヤツらをボコボコにするガキ大将で、体育は真面目にやらないからよく先生とグランド鬼ごっこしてた思い出があるよ。文彦は足が早くて掴まったことないし……後は氾濫して橋が流された川を泳いで横断したって話も聞いたことあるかな。
まぁ、文武両道だけど素行だけは悪かったかな?俺の弟と文彦の妹が同い年で弟たちも仲が良くて海とか一緒に遊びに行ったことを覚えてるよ。
あのころは楽しかったな……走り回って飛鳥なんて医者になりたいのに勉強が駄目で、飛鳥の家に3人でよく泊まって勉強会をしたよ。頭を抱えて問題を解いてる俺たちの横で膝を立てながら本を読んでいた文彦の姿が未だに思い浮かぶよ。すました顔で本を読んで、たまに外から輩に呼び出されては喧嘩して戻ってきたら何事も無かったように問題を見てくれるんだから面白いよね。
リーダー気質なのか人を引っ張ることが上手くて、無茶ぶりでも何故かみんな文彦について行けば大丈夫だと思って動いてしまうんだ。……その気質が晩年の羽鳥文彦大尉を生み出したんだろう。
だが、俺と飛鳥が知っている文彦は大人しく、読書をしている時が1番楽しそうにしていた文学少年の姿かな?
まぁ、文彦と言えば本と喧嘩の印象が強いからね。 あのころの同級生たちなら全員同じことを答えるよ。まさか戦時中にあそこまで活躍する軍人になるなんて想像もしてなかったからね。




