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見た目は完全に元の面影はないし、中身も、演技することをやめ、素になったことによって全く違う性格になっている。
ということで、本当にすっかり別人になった紫司馬、改め、白陽は、わたしのところで働くこととなった。正社員扱いの透くんと違って、完全にバイトだけど。
わたしの万道具によって作られた『嘘』がバレないか、と言う見張りをこめて、しばらくはここで働くつもりらしい。単純にお金がない、というのもあるみたいだけど。紫司馬のお金を使ったら紛い香を使ったのが犯罪になっちゃうからね……。殺しをしていたであろう彼を逃がした時点で、もうアウトではあると思うのだが、罪を重ねるとそれだけ隠すのが大変になってしまう。
『紫司馬の死』が偽装であることがバレ、一族の追手が来るようなら殺す、と言われはしたものの、白陽としてうちの店でバイトをする彼は、なかなか楽しそうに生活しているように見える。
そんな彼を、複雑そうな目で見ているのは透くんだ。
最初こそ、人を殺しておいて今更自由を楽しむのなんて云々、というアレなのかな、と思ったけれど、ぼそっと、「折角万結さんと二人で働いていたのに……」と恨めしそうに言っているのを聞いてしまって、言及するのをやめた。
ちなみに、わたしとしては、人殺しをしてきた彼が自由を楽しむことに関して、そこまであれこれ言うつもりはない。というよりは、それ以上、彼の――紫司馬という男の心の中に踏み込むつもりがない、というのがより正確だろうか。
彼を救うつもりのないわたしが、そこまで寄り添う義理はないし、最後まで彼の隣にいるつもりがないのなら、下手に手を出すべきではないと思っている。彼を逃がそうと手を貸したのは、あくまでわたしたちのため。透くんに手を汚させないためにしたことであって、紫司馬の救済のためにしたことではないのだ。
ま、折角なら、楽しく働けてたほうがいいかな、くらいは思うけど。
「透くん、呼んだー?」
わたしは工房の方で素材の在庫確認をしている透くんに声をかける。
「ああ、すみません。この箱、在庫表にない素材ばかりで――」
「う、うわーッ!」
わたしは思わず大声を上げてしまった。
透くんが指さした箱。そ、それは……ッ!
「あ、あ、あ、そ、それは大丈夫! 個人的な奴だから! 店には関係ない奴だからッ!」
わたしは慌てて、透くんと箱の間に滑り込む。くそう、一応隠しておいたつもりだったのに。
「まったく、功甲さんに店のと個人的なもの一緒に置くなって言われてましたよね。功甲さんがいたら怒られてますよ」
「え、えへへへへ……」
呆れたように言う透くんに、わたしは笑って誤魔化す。
「そ、そうだよね! うん、そう。へ、部屋に置いてくるね」
わたしはバッと箱を持ち上げて、慌てて工房を出る。
ばたばたと箱を持って、私室へと駆け込む。結構素材が入っているので、それなりに重量はあるのだが、焦りで気にならない。
透くんに気が付かれてしまったけど――何を作ろうとしたかまでは、バレてないよね? 透くん、何故か万道具作らなくなっちゃったし……平気、だよね?




