エルフの評価と外れ魔法。
最近スランプ……てかコメディーしたくなってくるあたり作者の業は深い。
「……さあ、今度こそ……」
アスターが再び眠りについてから15分ほど経ったあと。
焚き火の前で胡座をかく忠人の姿あった。両眼を閉じ僧侶のように静かに呼吸している。
忠人はアスターのアドバイスどおり“大いなる根源”がどのようなものか想像して何度か挑戦していた。
最初は6種類のファイルのインストールされたパソコン。今までよりは手応えがあったものの繋がるーーそう思ったとたん弾かれた。
携帯のアプリケーション。パソコンよりも手応えがなかった。
次に一冊の本。携帯ほどではないもののあまり手応えはなかった。
(本でダメなら図書館でいこう)
これでダメならもうイメージは情報の海とかそんな漠然としたものしかないなとぼんやり考える忠人。
流石に少し眠気が強くなりだしていた。
「さ、やろう」
ゆっくりと深呼吸して魔力を活性化させる。何度も繰り返したおかげかもう手慣れたものである。
体のうちからせり上がる心地よい魔力。
それを右腕から順番に体中に漲らせていく。
「…………『接続』!」
一番魔力が活性化した、そう感じた瞬間そう呟く。
今までとは違って体の奥が何処かへと繋がりそちらへ引き寄せられる、まるで中身が吸い出されるような感覚。例えるならエレベーターの中で胃がふわっとするようなそんな感覚を味わって。
忠人の意識は“大いなる根源”へと飛んでいった。
「…………本当に一夜で成功させるとはな」
信じられない、と言った様子でビオラが呟く。
「さすがは勇者様、ということでしょうか」
つい15分前の会話を思い出しアスターが笑う。
「なるほどな。勇者様、だものな」
それを聞きビオラも笑みを浮かべた。二人の前では軽い笑みを浮かべて目をつむり座禅を組む忠人。
「……ところで、アスター。お前が接続できるようになったのは魔法を習ってどのくらい経った時だ?」
「…………活性化に5日、接続に更に二週間といったところでしょうか」
「……私もだいたいそのくらいだ」
たった1日。否、一夜でその一端に過ぎないとはいえ魔法を得ようとしている忠人に二人は僅かにだが恐れを抱いた。
「しかし面白い少年ですね」
「確かにな。話をしていて嫌な気がしない。あの会話法、どこかの貴族か商人なのか?」
「本人はまだ職を手につけていないと言っていましたが……」
「何というか未熟だが割と理想的な人物であると言えなくもないな」
頭がかなりまわり身体能力も低くない。さらに相手への敬意も忘れず謙虚。子供への配慮もある。
かなりの好人物だと二人配慮思っていた。
「なぜ少年はエルフに生まれなかったのか……」
「それを言っても仕方ありません。しかし確かにこの時代に人間として現れたのは少年に取っても不幸かと」
そう言って二人は忠人を見る。彼配慮穏やかな笑みを浮かべてそこに座っていた。
「……取り敢えず、焚き火の側から離しましょう。焼けます」
「そうだな」
一方の忠人は。
「お、溺れ、溺れる!?溺れる溺れる溺れる溺れる!溺れるってばさ!?」
水の中にいた。
正確には水で満ちた図書館の中に。
「って、あれ?息が出来る?」
一しきり一人で騒いで落ち着くと忠人は辺りを見回す。
重力があるのかないのか忠人は地面に足をつけていない。だが本棚はきちんと地について並んでいる。その数24。6方向に4つずつ向かう本棚。その高さは3階建ての建物並みだ。おそらくこれが所属領域なのだろう。上を見上げれば水面から光が差すのが見えた。
簡単にまとめるなら水没した図書館。忠人は“大いなる根源”にそんな印象を受けた。
「なんか楽しいな」
元の世界のアミューズメントパークでもこんなものはないだろう。そう思えば珍しい体験をできることにワクワクする忠人。
そもそもこの世界に来てから良くも悪くも珍しいの連続だがそれは置いておく。
「じゃ、取り敢えずっと」
目の前の本棚に近寄る忠人。
しかし、本まであと30cmと言ったところで
「うおああああ!?」
猛烈な水流が発生して元の場所に戻される。
「ビオラさんの話じゃ魔法には向き不向きがあるわけだからあの本棚は俺向きじゃないってことか」
その場を離れ隣の本棚へ移る忠人。しかしそこでも水流に押し戻される。
「やべっ」
先ほどより速く移動したからか勢いのまま飛ばされる。
そして反対側の通路に身体が入り、また吹き飛ばされた。
「のっ!わっ!あっ!」
ゴム鞠のように弾む忠人。外から見ればなんだか楽しそうだが、回転しながらあらゆる方向に飛ばされる本人としてはたまったものではない。
「うわああああっ!」
少しだけ忠人が跳ね返るのに慣れたとき急に反発がなくなりそのまますっ飛んでいく。
「うおおお!?どうやれば止まんのー!?」
くるくると縦回転しながら本棚の間を突き進む忠人。
「止ま、止ま、止まれ!」
そう叫んだ途端身体が急停止する。突然の変化に驚き辺りを恐る恐る見回す忠人。
「ここ……は?」
近くの本を見ると本のラベルに『6』と書き込まれている。
「……『第六領域』っぽいね……」
取り敢えず、と目の前の本を手に取る。題は『シャドーチェンジ』。
「んーと?“シャドーチェンジ”。使用した場合使用者の影の形を変更することができる。以上」
二度見する。しかし書いてある文字に変化はない。
「使えな!?」
びっくりするくらい何の意味もない魔法だった。
「ただの影絵じゃん。いや、まああったら面白いけどさ。でも戦闘にも実生活にもあまり役に立たないし。影絵士しか喜ばないだろこんなん」
他のを、と隣の本を手に取ろうとしたとたん本に弾かれた。
「またか!」
床に『シャドーチェンジ』の本と共に倒れる忠人。飛んだ勢いで本が忠人の胸に触れた。
すると本が忠人の中へ吸い込まれ消滅する。
「え!?もしかして、俺これ取得した?」
慌てて胸を触るものの本は元に戻らない。
「やべぇ……取得に限りがあるのに……あんな使い所の無いのを……」
がくりと膝をつく。しかし取ってしまった以上仕方が無い。どうにもならない。
ガチ凹みであった。
「ああ……なんという……てかなんでこんな……ああ……ええ……?……なんで……」
ビオラさん言ってたなーごった煮だってーと遠い目をする忠人。
しばらくがっくりとしたあと忠人発射立ち上がる。
まだ立ち直り切っているわけではない。しかしなんだか息苦しさを感じていた。直感的に息ができなくなった時が“大いなる根源”にいることができふタイムリミットなんだと悟った。
「ぐずぐずしてたら取捨選択する時間がなくなりそうだ」
一度弾かれたからか触れることのできる本が微妙にわかるようになっていた。
「巻いていこう」
片端から触れられる本を手に取り忠人は自らが得られるより良い魔法を求めて行動を開始した。




