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魔法の気配と少しの郷愁

週に一度くらいは更新したいと思っています。

「わかりました」


どことなくわくわくした様子のビオラに少しだけ笑うと忠人はその言葉を口に出す。


「接続」


しかし、何も起こらない。

小首を傾げてもう一度。


「接続」


やはり何も起こらない。

自分は『接続』できないのだろうかと不安になる忠人。


「おかしいな。魔法が使えている以上できるはずなんだが」

「……接続。……できません」


何が違うのだろうかと自分の両手を見つめる忠人。別に何の変化もないいつもの自分の手だ。


「……団長」

「なんだ、アスター」

「彼は魔力操作ができないのでは?」

「ああ!」


納得したと言うように手を打つビオラ。一方の忠人は何が何だかわからない。


「魔力操作?ですか?」

「体内の魔力を魔法を使えるように調整する技術のことだ。また、生命力を効率良く魔力に変換する技術でもある」

「なんか凄く大事そうに聞こえるんですけど」

「いや、この世界の人間なら(とお)になる前にできる技術だからな。できないという可能性を考えてもみなかった」


意外とフランクと言うかいい加減というか、研究所を脱出してからなにやら地がでてきているのかキャラクターが変わっているビオラを半目で見ながら忠人は尋ねる。


「で、魔力操作ってどうやるんですか?」


そんな忠人の質問にむむむ、と唸りだす二人。


「どうと言われてもな」

「こう体内で粘土を捏ねる感じ……ですかね?」


アスターはあてにならない。


「血液って流れてるだろ?」

「……はい」

「それが体内で輪になっているとしてそれを水車のような動力に見立てる感じかな」


ビオラの説明でなんとなく想像する忠人。体内に血液モーターを作るイメージだ。


「……とりあえずやってみます」


静かに目を瞑り忠人は意識を集中する。


心臓から出て肩、腕、掌、指……と理科の教科書に載っていた人体の図を思い出しながら忠人は血液の流れを意識する。


夜の森に音は少ない。忠人は自らの心臓の音が中から響きだすような感覚を覚えていた。


ゆっくりとした呼吸で忠人は意識を全身に撒き散らしていく。


(身体を一つの環として見立ててる……10歳の子供でもできることだ。そう複雑じゃない……さあ……)


忠人は自らの中心から輪がゆっくりと大きくなる、そんな気配を感じた。


しっかりとした意志を持ってその輪を大きく広げていく。


「廻れ!」


忠人が輪を回転させようと意識した途端何かが体内で爆ぜる。


身体に満ちる心地よい波動ーー魔力。それを身体の隅々まで満ちさせる。


「まさか、一発で成功させるとは」

「はい、しかもこの魔力量…エルフ(我々)と同等です」


その声に忠人がはっと目を開く。すると今まで忠人に周りに漂っていた魔力が霧散した。


「できた……んですよね?」

「ああ、完璧だ。あとは体内の魔力を言葉に乗せれば良い」

「そうですね。彼ならすぐできるでしょう。私たちは三時間ほど寝るのでその間に『接続』できるよう努力しろ。もちろん何かあったらすぐに起こしてくれ」


どうやれば言葉に魔力を乗せられるか教えて欲しい、と思う忠人をよそにさっさと横になってしまう二人。

しかも寝ずの番と魔法の練習をやらねばならないようだ。











「できねー!」


魔力を言葉に乗せることができず忠人はすでに1時間を無駄にしていた。


「魔力は充分なはずなんだよな」


魔力の生成速度を上げることは上手くいっている。しかし、それを言葉に乗せるとなるともうわからない。


「心を込めて、ってわけでも無いし心を無にってわけでも無い。だーっ!わからん!」


身を地面に投げ出し忠人は空を見つめる。


「同じ空の下、じゃないんだよな……」


知っている星座の見あたらない夜空に悲しみを覚えた。冷たい風が忠人と焚き火の炎を撫でていく。


「背中から刺されるし、ゾンビには襲われるし、奴隷にはされるし、めっちゃしごかれるし、ほんと最悪」

「……その割にはにやけているな」


唐突にかかる声。


「アスターさん」


飛び上がりそちらを向くと青い髪の男性が穏やかな表情でこちらに歩いてきていた。


「まだ接続できないのか」

「はい、残念ながら」


弱りましたと頬をかく忠人。


「お前は……変な奴だ」

「いきなりですね」

「帝国との間での戦争が始まってもう長い。帝国が人間族の八割を占める以上帝国が敵というのは人間族が敵と同義なのだ。だから、な。人間らしいというのは人間族以外を徹底的に排斥するような人間なのだよ」


人間族=帝国民という図式が出来上がっているというわけか、と忠人は納得する。


「だからお前のような優しい人間族にはどう対応していいのかわからん」

「そこまで俺は優しい訳ではないですよ?」

「お前は十分優しいさ。見ず知らずの子供を命を張って助けたのだからな」

「命を賭ける意識があった訳でもないですし、思考放棄した結果みたいなものですよ」


そう言ってアスターに背を向ける忠人。


「だとしても、なかなかできることではない」

「ほんと、そう言うんじゃないですよ」

「そうか?」

「じゃあ……そうですね、運命だったんです。……そう言うことにしておいてください」


そう言うと忠人は手を広げ魔力を練り補充する。


「…………接続!」


しかし接続は失敗し魔力はただ空中に霧散していく。


「…………少年。もっと想像しろ。自分勝手なイメージで良い、確固たる目標を持て」

「……ありがとうございます!」

「これは貸しだ。これからしっかりと、例えるなら奴隷のように働いてもらうからな」

「……わかりました。全く!最悪ですね!」


お互いの顔を見ながらにニヤリと笑う二人。そこには互いを敵としてみる空気は無く。


「……私は寝る、成果を出せよ」

「もちろんです。俺は勇者らしいですからね」


影のない笑みで胸を叩く忠人。

そこには年相応の表情のどこにでもいる少年が立っていた。


「……まずは目の前のことを」


今までもよりも多く、異世界の少年は魔力を生み出した。

魔法まとめ


・魔力は生命力から生まれるとされている。

・魔力は意志の力で膨張する。(あっためたら空気の体積が増えるようなもの)

・魔力が0になると気絶する。ただし異世界人はこの限りではない。

・魔法は設計図から再現されている。(録画したテレビ番組を再生している)

・魔法の設計図を“大いなる根源”で習得する必要がある(テレビ番組の録画が必要である)


だいたいこんな感じです。

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