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アンケート  作者: 菊池まりな


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89/104

第89話 仲間割れ

スクリーンに走ったノイズが消えると、青白い光が制御室を再び満たした。


 その瞬間、美佳の胸の奥に鋭い痛みが走った。視界の端に、一瞬だけ「廃工場」の錆びついた鉄骨がよぎる。あのとき確かに見た、壁に刻まれたロゴ──




《LAPIS: Logical Algorithmic Parallel Integration System》




 そして耳の奥に蘇る声。


《──必ずまた連絡する》


 第3話で聞いた、あの電話の声だ。若い女性。彼女はいったい誰だったのか。






重苦しい空気が支配する零域の一角。


七海彩音から受け取った“鍵”をめぐり、仲間たちの間に緊張が走っていた。




有栖川玲が苛立ちを隠さず声を荒げる。


「……やっぱり、その鍵が全てのトリガーなんだね。…でも、どうして美佳なの? この都市の真実に触れるのは、私の役目のはずよ!」




宮下ユリも強い口調で反論する。


「彩音は美佳に『選ばせた』んじゃない。託したのは“守るため”よ。都市が壊れるのを、彼女は望んでいなかった」






二人の言葉は鋭くぶつかり、火花を散らした。


美佳は言い返すこともできず、ただ胸の奥で波打つ不安を抑えようとする。




「守る? 笑わせないで。守ってきた結果がこの欺瞞(きまん)でしょ。美佳、その鍵を私によこして。私が公開を実行するわ」








その時、沈黙を保っていた東郷翔が、低い声を放った。


「……言い争っても結論は出ない」




彼の声は冷静で、二人の熱に押されることなく場を切り裂いた。


「問題は“鍵”そのものの意図だ。美佳に託されたのは事実。そして、それをどう使うかは彼女が決めるしかない。俺たちはその結果に従う──それだけの話だ」




短い言葉だったが、その重みは議論を一瞬で鎮めた。


玲もユリも、なお納得しきれない表情を見せつつも、翔の冷徹な現実認識に反論はできなかった。




美佳は視線を落とし、手のひらの中の鍵を見つめる。


冷たい光を放つそれは、まるで「選べ」と無言で迫っているように感じられた。




──私が、この都市の未来を決める?


胸の奥で、恐怖と覚悟がせめぎ合う。




その横顔を翔はじっと見つめていた。


冷静な瞳の奥に、わずかな期待と不安が交錯していることを、誰も気づかなかった。



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