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アンケート  作者: 菊池まりな


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第86話 赤い警告灯

赤い光が、断続的に闇を切り裂いていた。


 消えかけた警告灯が、ゆらぐ心臓の鼓動のように通路を赤黒く染める。その明滅に合わせて、美佳の鼓動も落ち着きを失っていった。




「……誰か、ここで何かをしてる」


 宮下ユリの声がかすかに震える。彼女の指先は無意識にジャケットの裾を握りしめていた。




 純が壁際のパネルに近づき、手袋越しに埃を拭った。


「動いてるな。内部電源が生きてる。……電力供給の系統も切られてない。となると、管理している“誰か”が存在する」




「廃墟じゃないってこと?」


玲が吐き捨てるように言った。


「ええ、むしろ“生きた施設”。ここはまだ稼働中……」




 美佳は手の中のペンダントに視線を落とす。鍵は赤い光のリズムに呼応するかのように淡く脈打っていた。


「やっぱり、この工場そのものがLAPISに繋がってる……」




 と、その時。


 壁のスピーカーから、再び声が流れた。




 《……イ……げて……》




 前よりもはっきりしている。若い女性の声──かつて電話越しに耳にした響きと、どこか似ていた。


 美佳の呼吸が詰まる。




「今の……」


「美佳、知ってる声か?」


純が鋭く尋ねる。


「……わからない。でも、聞き覚えがあるの。たしか……あのときの……」




 記憶が揺れる。第1章で受け取った謎の電話。あの声が脳裏をよぎる。




 その時、足元の床がわずかに振動した。


「……何?」


ユリが目を見開く。




 直後、奥の通路の扉が自動的に開いた。


 冷気のような風が吹き抜け、赤い光がさらに濃く揺らめく。




「招かれてるみたい…」


玲が小さく笑う。だがその声には緊張が隠しきれなかった。


「……進もう」


純が短く命じる。




 美佳は無意識にペンダントを握りしめた。熱が強まっている。


 導かれるように、一行は奥の部屋へと足を踏み入れた。




 そこは制御室のような空間だった。


 壁一面に並ぶモニターはノイズだらけだが、かすかに映像が浮かんでいる。


 古びた機械の唸りと、低い電子音。


 そして中央の台座には、LAPISのロゴが刻まれた端末が鎮座していた。




「……これが、LAPISの中枢のひとつ……?」


 美佳は息を呑む。




 その瞬間、端末のスクリーンが赤く点滅し、文字が浮かび上がった。




 ──《ACCESS KEY CONFIRMED》




 ペンダントの熱が一段と強まる。


 まるで「鍵」がここを開けろと告げているようだった。




「美佳……」


純が低く呼びかける。


「どうする? この扉を開けるのか?」




 赤い警告灯が不気味に明滅する中、美佳は唇を噛み、ゆっくりと頷いた。


「ここに来たのは……そのためだから」



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