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アンケート  作者: 菊池まりな


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第70話 虚像の来訪

冷たい零域の空気が、微かに揺れた。


次の瞬間、暗がりの中央に淡い光が収束し、女の姿が浮かび上がる。




「……やっぱり来たのね、美佳」


その声は懐かしくも不気味で、耳の奥に直接響くようだった。




「……ミオ?」


美佳は思わず一歩後ずさる。そこに立つ女は、確かにかつて通信画面越しに見た顔──第1章で出会った、あのホログラムの女だった。




だが、今回の映像は異様に鮮明だった。零域の暗闇と溶け合い、まるで触れられるほど実在感がある。


光の粒が彼女の髪を滑り、呼吸すら感じられるような錯覚を覚える。




「安心して。私はここに“実体”を持ってはいないわ」


ミオは微笑む。


「でも、この零域では、映像は記録を超えて干渉できる。……あなたの鼓動も、温度も、全部感じられるの」




美佳の背筋が粟立つ。


触れられていないのに、肩口に温かな感触がよぎった気がした。


「やめて……」


「やめられない。あなたが持つ“鍵”は、私をここに引き寄せる。私が待っていたものだから」




純が一歩前に出て、美佳とミオの間に立ちはだかる。


「彼女にこれ以上干渉するな。……お前の目的はわかってる」


「わかっているなら、なおさら止められないでしょう?」




ミオの姿が揺らぎ、光が一瞬だけ赤く変わった。零域の奥から低い振動音が響き、周囲の空間が歪む。


その瞬間、美佳は悟った。この対話は単なる言葉の応酬ではなく、記録と記憶をめぐる奪い合いの始まりだと。




「鍵は……誰にも渡さない」


美佳は強く言い切った。しかしその言葉に、ミオはただ意味深に笑うだけだった。



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