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アンケート  作者: 菊池まりな


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第47話 記録者の声

扉が完全に閉じられた。


カチリと重たく鳴ったその音が、空間ごと隔絶されたことを告げる。




美佳はただ、ポッドに沈む“自分”を見つめていた。


自分がここに立っているはずなのに、どうしてそこにも自分がいるのか──脳がその矛盾を理解する前に、再びスピーカーが低く唸るように鳴った。




『三枝美佳。あなたは、記録の断片であり、観測結果であり、最後の「選択」を担う個体です。』




「……何を言ってるの?」




美佳の問いに、返ってきたのは冷たく無機質な声。




『この施設は、LAPISの前身組織(サードスクリプト)によって設けられた。人間の行動原理と集団意識の変容を観測し、最適化するための長期実験区──“学園都市藍都”全体が、その実験場です。』




息をのむ。


学園都市が、実験場?


そんなバカな。




『あなたは観測個体第27号。三枝美佳の人格データは、複数の記憶断片をもとに生成されました。現在行動しているあなたは、“模倣個体”です。』




その瞬間、視界がぐらついた。




「……模倣……? わたしが……偽物ってこと?」




ポッドの中で眠る“もうひとりの美佳”が、まるで本物であるかのように、静かに呼吸している。その姿が現実味を帯びてくるたびに、美佳の中で何かが軋んでいった。




『あなたに残された役割は、記録の統合と、最終鍵の承認です。記録者・七海彩音によって鍵は託されました。あなたは最後の観測者であり、選択者です。』




「彩音が……知ってた……?」




美佳の視界に、言葉にならない混乱と怒りが渦巻く。


誰も何も教えてくれなかった。


朝倉純も、宮下ユリも、有栖川玲も──みんなが何かを隠していた。




「だったら……どうすればいいの? 何を選べばいいの!?」




スピーカーの沈黙。それが何より残酷だった。




そのとき、ポッドの脇にあった端末がぼんやりと光を帯びた。


画面にはこう表示されていた。




《選択肢:記録の統合を開始しますか? YES / NO》




指先が震えた。選べというのか。この先に何があるのかすら教えずに──?




けれど、美佳はふと、彩音のあの言葉を思い出していた。




「あなたの物語は、あなたの手で終わらせなきゃ」




迷いながらも、美佳は手を伸ばした。


画面の「YES」に、そっと、触れる。




──瞬間、部屋全体が低く振動し、薄く青白い光が天井から降り注いだ。




ポッド内の液体がかすかに波打ち、“本物”の美佳の瞼が、ゆっくりと、開かれた。




鏡合わせのように、二人の視線が交差する。




「──わたしは……誰?」




それは、ふたりの美佳が同時に発した言葉だった。



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