↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンケート  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/104

第26話 接続領域L-001:記憶の交差点

──まぶしい。




目を開けた瞬間、美佳は自分がどこにいるのか分からなくなった。




足元に広がるのは、どこまでも白い床。その上に散らばる無数の断片─│写真、日記、教室、駅のホーム、アンケートの画面。




「ここは……?」




声に出すと、自分の声がやけに遠く響いた。重力も温度もない空間。ただ、記憶だけが散らばっていた。




「ようこそ、“L-001記憶層”へ。」




不意に背後から声がした。振り向くと、そこに立っていたのは──朝倉純だった。




「純……くん?」




美佳は言葉を詰まらせる。


藍都学苑時代、誰よりも穏やかで、優しい眼差しを向けてくれた少年。その姿は、あの頃のままだった。




「君の記憶が作り出した、ぼくの像さ。本物のぼくじゃない。」




「じゃあ……これは全部、私の記憶?」




「そう。LAPISが接続を試みるとき、最初に通るのが“意識の整合”だ。君の中にある未解決の断片を整理し、今の“君”を再定義する。」




純の声は優しく、美佳を導くように響いた。




「見えるかい? あれは、君が“後悔した瞬間”だ。」




純が指差した先、映像のように浮かぶのは、七海彩音とすれ違った日の教室。


無言で背を向けた美佳の表情と、寂しげに肩を落とした彩音。




「私は……」




「君は選ばなかった。ただ、それだけさ。何かを選ばなかったことが、誰かの記憶には“拒絶”として残る。それが、記憶の交差点。」




「でも、どうしてこんなものを見せるの……?」




「LAPISは、君の“再構築の意思”を確かめようとしているんだ。自分自身と向き合えるか、記憶に溺れるか。それが、この空間の意味。」




美佳は黙って足元の写真を拾った。そこに写っていたのは、まだ何も知らなかった頃の自分。


スマホを手にして、アンケートに答える瞬間の、自信なさげな横顔。




「──わたしは」




その唇からこぼれた言葉に、自分自身が驚いた。




「私は、あのとき逃げてた。何も考えずに、選ばされるまま、答えてただけだった。でも今は、違う。ちゃんと、自分で決めたい。」




純の幻影が、微かに微笑む。




「なら進める。この層を超えて、次のステージへ。“LAPISの中枢”が待っている。」




空間の中心に、ひとつの扉が現れる。そこから微かな青い光が漏れていた。




「ありがとう、純くん。たとえ君が記憶の幻だとしても……ここまで来られたのは、あなたのおかげ。」




美佳は静かにその扉へと歩き出す。


記憶と向き合い、自分で選んだ道を、今度こそ踏み出すために。




──彼女の目は、もう迷っていなかった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。