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アンケート  作者: 菊池まりな


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第25話 オブザーバー001-その目に映るもの

廊下の先、金属の足音が徐々に近づいてくる。美佳は無意識に息を潜め、玲の隣で後ずさった。


現れたのは、黒衣に身を包んだ人影──しかしその顔は、マスクの奥に覆い隠されていた。




《オブザーバー001、該当エリアに到達。対象ユーザー:三枝美佳、反応レベルA。制御権限:仮承認。》




電子音声が静寂を破り、空気が凍りつく。


玲が静かに呟いた。




「“あれ”は、監視者でありながらも、最終的な判断者。LAPISの意思を代弁する存在。……気をつけて。」




「……こっちの会話、聞こえてるのかな?」




美佳の問いに、玲は小さく首を振る。




「聞こえていても、“理解”しているかどうかは別。あれには感情も、自我も、基本的には存在しない。“記録”と“評価”のみを行う、機械の目。」




監視者が数歩前へと進むと、壁に設置されたスクリーンが反応した。


まるで、誰かが遠隔操作しているかのように、映像が切り替わっていく。




美佳の通学風景。


彩音と笑い合う時間。


そして、アンケートに答えるときの、わずかな迷いの瞬間。




「やめて……!」




美佳は思わず叫んだ。見られたくない自分が、丸裸にされていく感覚。


しかし、監視者は無言のまま、美佳に手を差し伸べる。




「何……?」




「これは、“接続の提案”だと思う。LAPISと直接、意識レベルでリンクする……」




玲の声が震える。


「でもそれは同時に、君の“無意識の選択”すら吸い上げられることを意味する。」




監視者の手は、静かに、だが確実に美佳へと伸びてくる。まるで運命そのものが形を取ったかのように。




「決めて、美佳。受け入れるか、拒むか。」




その選択が、次の道を分けるのだと、美佳は理解した。




受け入れれば、自分の意識はLAPISと繋がる。その先にある真実へ、近づくことができる。


だが、もしも意識が“取り込まれる”という結果に終わったら……。




「……私は、進むよ。」




美佳は手を差し出した。震えながらも、その指先は迷いを振り切っていた。




「私は、知りたい。“この都市で、何が始まっているのか”を。」




監視者の掌と、美佳の手が触れた瞬間、世界が反転する。




視界が暗転し、感覚が上下左右を失っていく。




“意識層接続開始。準備完了。”




脳内に直接響く声。そこには、かすかに人間のような温度があった。




「……あなたは誰?」




問いかけると同時に、美佳の脳裏に浮かんだのは、あのアンケートの最後の設問──




「あなたは、世界を再構築したいと思いますか?」




目を閉じたその先にある答えを、美佳は、まだ知らない。





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