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アンケート  作者: 菊池まりな


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第23話 選ばれた扉、分岐する意志

光の渦が引いていく。眩しさが消えると、美佳はいつの間にか別の空間に立っていた。白く輝く廊下。左右には無数の扉が並んでいる。それぞれに数字と文字が浮かび、まるで意味を持つかのように瞬いていた。




「どこ……?」




美佳の声は、廊下に吸い込まれるように消えていく。さっきまでの“彩音”の姿はもうなかった。代わりに、廊下の先にひとつだけ赤い扉が見えた。




──001.回答者:三枝美佳


──アクセスレベル:改変許可権限取得済




「私専用……?」




扉の前に立つと、まるで意思を持つように音を立てて開いた。中には一台の端末があり、その前には……人がいた。




「……純?」




振り向いたその顔は、確かに朝倉純だった。けれど、どこか違う。彼の目はどこか焦点が定まっておらず、意識の奥で何かと格闘しているようだった。




「……美佳、なのか?」




その声に微かな震えが混じっていた。だが、それでも彼の中に残っている“本物の純”の気配に、美佳はかすかに胸を撫でおろす。




「ここで何してるの? LAPISに……捕まってたの?」




純は苦笑いを浮かべた。




「捕まってた? 違うよ。俺は、自分からここに来たんだ。」




「……え?」




「美佳、お前があのアンケートに答えたとき、俺はもう、LAPISの中にいた。自分の意思で。」




その言葉に、美佳の心臓が強く脈打つ。




「じゃあ、最初から知ってたの? これが何かって……!」




「知ってたさ。でも、それでも俺は選んだんだ。“再構築プログラム”の一部になることを。」




純の言葉は平坦だった。しかしその瞳の奥に、葛藤と痛みが浮かんでいた。




「LAPISは、ただの監視システムじゃない。“選択”のデータを集積し、未来の統治構造そのものを設計しようとしてる。お前も選ばれたんだ、美佳。“答える側”じゃなく、“問う側”として。」




「……問う側?」




純は立ち上がり、美佳に一枚のカードを差し出した。それはLAPISのアクセスキーだった。IDは──“Operator: MIKA-0001”。




「君はもう、ただの被験者じゃない。ここから先は、“意志”を持って、選択しなきゃいけないんだ。」




廊下の向こう側、再びいくつもの扉が現れる。それは美佳の選択によって開く未来の分岐点。




「純、あなたは私に……何をさせようとしてるの?」




「それは君次第だよ。君が何を“正しい”と思うのか。君の選択が、現実を変えるんだ。」




──LAPIS。


この都市を支配する仮想の意志は、もはや単なるシステムではない。人間の“選択”を食らい、進化を続ける、新たな“意志体”だった。




美佳はカードを手に取った。その表面が、彼女の指先で熱を帯びた。




「なら……私は私の意思で、決める。」




彼女は、未来を問う者になる。


その第一歩を、今、踏み出したのだった。





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