↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンケート  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/104

第20話 選ばれし者の意志

「選ばれた者……? どういう意味なの、翔くん」




 美佳の声が震える。彼の姿を見た途端に湧き上がった懐かしさは、すでに消え去っていた。


 代わりに胸を満たしたのは、疑念と、かすかな恐怖だった。




 「この都市が“特区”として成立した理由を、お前は知らないだろう、美佳」




 静かに語り出した東郷翔の声は、機械のように冷たく、理論的だった。




 「藍都学園都市は、国家主導の“情報倫理実験区”だった。LAPISは、その中枢となるシステム。人々の無意識の選択や傾向をデータ化し、それを元に社会モデルを最適化する。つまり、ここは“未来の社会”のテストケースだったんだ」




 「……そんな。私たちは、実験材料だったっていうの?」




 「そうだ。そして、その中で、特に適応能力と判断力に優れた者たちが“選ばれた”。LAPISの根幹を支える演算因子、コードネーム《ARCHIVE》として」




 「じゃあ……あなたは、その一人だったってこと?」




 翔はうなずいた。


 「だが、再構築が完了すれば、この演算因子の体系は崩壊する。お前がやろうとしているのは、“世界の書き換え”ではなく、“世界の削除”だ」




 美佳は唇を噛んだ。言い返せなかった。


 確かに、再構築が成功すれば、LAPISの制御構造は一度完全にリセットされる。選択の責任が“自分自身”に戻るということは、それまで誰かに“代行”してもらっていた無数の結果が、意味を失うということでもある。




 だが──それでも。




 「それでも、私はやる。私が、アンケートで“望んだ”結果は、誰かを犠牲にしてまで叶えるようなものじゃなかった」




 「理想論だ」




 翔の瞳が、わずかに揺れた。




 「人は、自分に都合のいい答えを望む。アンケートは、その本音を暴く鏡だ。だからこそ、そこから得られた情報にこそ価値がある。お前のやろうとしていることは、人の弱さを否定する行為だ」




 「違うわ。私は、人の弱さを“受け入れたい”だけ」




 その瞬間、美佳の足元に青白いリングが広がった。


 ミオが再び再構築プログラムの起動に成功したのだ。




 《再構築プログラム、起動確認。意志の最終入力を求めます》




 東郷翔は、美佳の前に立ちふさがる。




 「進むなら、俺を超えていけ」




 美佳は拳を握る。


 その背後には、かつての仲間・朝倉純と、彩音、ユリの姿があった。




 彼女は小さく、でも力強く頷く。




 「翔くん。──私は、過去の自分にも、未来の自分にも、ちゃんと責任を持ちたい。それが、私の選んだ答えだよ」




 《最終承認:三枝美佳。再構築プログラム、最終フェーズへ移行》



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。