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ゆるふわニーナちゃんの雑貨屋~商いしていただけなのに、人類に敵認定されちゃいました~  作者: なすちー


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24 リザードマンとサハギンの湖問題 中編

 湖の問題をどう解決するか、モノさんにお願いしたけど、私もちゃんと考えないと……。


 くいくい……くいくい……


 私の服の袖を、ウンディーネさんが小さく引っ張ってきた。


 もしかして、何か良い案を思いついたのかな? と期待して振り向くと、彼女は私の目をじっと見つめて言った。


「ニーナ、パフェ! パフェ!」


 あー、そうだった。

私はもともと、ウンディーネさんとデザートを食べる予定でここに来たんだった。


 確かに、あまり放置していると溶けちゃうし、それに甘いものを食べたほうが良い案も思いつくかもしれない。


 私はまず、待ちきれない様子のウンディーネさんにパフェとスプーンを渡した。


 そして、自分の分を出す前に、サハギンさんとリザードマンさんに向かって声をかけた。


「湖の問題はちゃんと考えるから、先にパフェ食べてもいい? もともと、デザートを食べる約束をしてたんだよね」


 私の言葉に、二つの種族が呆気にとられている。そんな中、腕の中のモノさんが声を上げた。


「ニーナさん、パフェ食べるんスね。了解っス。じゃあ、その間にアッシは湖の調査をしてくるっスよ」


 そう言って、モノさんが私の腕の中からぴょーんと飛び出した。


 ふわふわと浮きながら、湖の中をのぞき込んだり、周りを調べたりし始めている。


「ありがとね、モノさん。私もパフェを食べ終わったら頑張るから!」


 モノさんにそう声をかけると、リザードマンさんが不思議そうに口を開いた。


「ふむ、まあ構わんが……。パフェとは一体なんだ?」


「好きにするがいい。別に人間に期待などしていないからな」

サハギンさんはそっけなく、興味なさそうにそう言った。


「よーし、許可ももらったことだし!」


 私は意気揚々とカバンの中に手を入れた。

そして、中からパフェを取り出す。じゃーん! 特製の、おいしいいちごパフェだ。


「これだよ。甘くて、冷たくて、とってもおいしいんだから」


 自慢げにパフェを掲げてから、さあ食べようと思って隣のウンディーネさんを振り向いた。

けれど、彼女はもうパフェを口に運んでいた。


 無表情なのは相変わらずだけど、どこか、ものすごく幸せそうな顔をしている。


「……うん。やっぱり甘いものを食べると、そうなっちゃうよね」


 私はその様子を見て、なんだか自分まで嬉しくなってしまった。


「ふむ、それがパフェというものか。どれ、一口……」

リザードマンさんが、興味深そうに身を乗り出してきた。


「我も味見してやってもいいぞ」

サハギンさんまで、なぜか上から目線でそんなことを言い出す。


 えぇっ? いや、これ、私の分なんだけど……。

うーん、でもまあ、お家に帰ればまた食べられるし、仕方ないなぁ。


「……わかったよ。一口、一口だけだからね」


 私はしぶしぶ、ほんと仕方なく、いやいやながらパフェとスプーンを差し出した。


 リザードマンさんとサハギンさんは、順番に器用にスプーンを使って、一口ずつ食べた。

サハギンさんも手のヒレが邪魔にならないのかなあ。


 ……って、ちょっと待って!

「一口」は「一口」だけど、二人とも口がものすごく大きいから、中身が半分くらい減っちゃってるじゃない!もうもう!

私は心の中で、キーッ! と文句を言った。


「うむ、これはうまいな。口に入れると、甘みの中にいちごの酸っぱさが広がっていく。くどくなくて、しかも口どけがいい」


「ギョギョッ、うまいぞ、これは! 人間にしては、なかなかやるな!」


二人は予想以上に絶賛している。すると……。


「ニーナ、ひとくち。ひとくち!」


 横からウンディーネさんまで、袖を引っ張っておねだりしてきた。


「えっ、ウンディーネさんには丸々一つあげたでしょ? ……って、もうほとんど食べちゃってるじゃない」


 大精霊の食欲、恐るべし。


 私は少しだけ切ない気持ちになりながらも、気を取り直して二人に声をかけた。


「おいしいでしょ? 一応これ、私の雑貨屋で売ってるんだよ。リザードマンさんが持っている剣や、サハギンさんの槍だって置いてあるし」


 私はお店がある方向を指さして、商売人らしい笑顔を作った。


「あっちの方にあるから、よかったら来てね。もちろん、お金を持って、だよ?」


 パフェをたっぷり二口分も損しちゃったけれど、営業活動はバッチリ。これでお客さんが増えてくれればいいからね。


「人間の雑貨屋か……。我らリザードマンのような魔族が行っても、本当に構わんのか?」


「ギョギョッ、そうだぞ。我はサハギンだぞ。行ったら人間に攻撃されたりしないか?」


 二人は大きな体を少し縮めて、不安そうに私をのぞき込んできた。

強そうな見た目をしているけれど、案外心配性なのかもしれない。


「攻撃なんてしたりしないよ。私の雑貨屋は魔族のみんなも大歓迎なんだから。ケルピーさんやドライアドさん、他にもたくさん魔族のお客さんが来ているんだよ」


 私はぶんぶんと首を横に振って、笑いかけた。


「あとね、私のことは『人間』じゃなくて、『ニーナ』って呼んでね。ちゃんと覚えておいてよ?」


「む、わかった。ニーナ、だな。今度、店に寄らせてもらおう」


 リザードマンさんが重々しくうなずくと、横からサハギンさんが腕を組んで、そっぽを向いた。


「ギョギョッ……。仕方ない、そこまで言うなら行ってやろうではないか」


(なんだかサハギンさん、ちょっと照れてるのかな? サハギンさんちょっと可愛いかも)


「うん、待ってるからね!」


思いがけないところで新しいお客さんが増えそうで、私は嬉しい気持ちになった。


 よし、二人からスプーンを回収して、私もようやく自分のいちごパフェを食べよう。


 いつもは湖の真ん中まで行っているけれど、今日はもうこのあたりでいいかな。


 私は、近くで待機してくれていたアスモくんを呼んだ。

空飛ぶ長椅子の姿をしたアスモくんが、私の足元までふわりとやってくる。

私はその柔らかな座面に腰かけて、ゆっくりといちごパフェを味わった。


 うん、やっぱりおいしい。

ピリピリした空気のあとの甘いものって、体にしみわたるよね。


「ニーナよ、不思議な乗り物があるのだな。はじめて見たぞ」


「ギョギョッ、サハギンもこんなのは知らないぞ。それも店で買えるのか?」


 リザードマンさんとサハギンさんが、珍しそうにアスモくんをじろじろと眺めている。


「うん、かわいいでしょ? でも、これは売り物じゃないんだ。アスモくんっていう、私のお友達なんだよ」


「ニーナ。……ニーナのほうが、かわいい」


 横でパフェを食べていたウンディーネさんが、ぽつりと褒めてくれた。


「えへへ、ありがとう、ウンディーネさん」


 それからしばらくの間、私たちは四人で和やかに会話を楽しんだ。


 少し離れた場所では、他のリザードマンやサハギンたちがこちらを遠巻きに見ていたけれど、私たちの周りだけは穏やかな時間が流れている。


「リザードマンの剣捌(けんさば)きは、それはもう一流なのだぞ」


「いやいや、サハギンの槍筋(やりすじ)だって、なかなかのものだ」


「ニーナ。私、水魔法が得意だよ」


 なんだか、さっきまで争っていたのが嘘みたいに仲良しに見える。これなら場所さえうまく分ければ、手を取り合って暮らせるんじゃないかな。


 そんなことを考えていたら、調査に行っていたモノさんが戻ってきた。


「うーん。やっぱり湖を分断するのが一番だと思うんスけど、ただ、この湖は結構深いみたいなんスよね……普通の方法じゃ分断なんてできないっスよ」


 私の腕の中に戻りながら、モノさんが困ったようにそう言った。


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