生命
貴方が何度別の人生を歩んでも、私は変わらず此処にいる。丁度良い。だって、儚く咲いていた貴方を、貴方の咲いた色を知るものはもう、私しか居ないのだから。これを此岸から消してしまうのはあまりにも勿体ない…。
そう思っていた。
思っているはずだった。
それなのに、ふとしたときに足が赴いているのは、決まって草ばかりで川も海も見えない場所だった。仰向けに転がり、ため息と共に目の上に腕を伸せる。空を通る飛行機が低い音を響かせた。皴一つ無い張のある肌に、思い通りに動き続ける身体。
私の時はまだ止まったまま。
「私はいつまで、貴方のいない世界から離れられないのですか…」
掠れた声が静かな草原に消えた。意識がはっきりしなくなってきて、仕方がないので水を呼び出してその降りかかる水に溶けるように住処へと戻る。
「…主様?何処で何をしていらしたんですか?」
戻った途端、目の前に私と同じか少し年下くらいの見た目をした少女が仁王立ちしている。
「少し、散歩を…」
言うと、少女がずいっと顔を近付ける。
「何度言ったら聞いて下さるんですか。儀式の後くらいは普通に休んでください」
「すみません」
私が苦笑いすると、彼女は隣に座ってため息をつく。
「一体私の主様は何をお考えなんでしょうね」
「何でしょうね。恋煩い…とか?」
「恋煩い!?」
「ふふっ、冗談ですよ」
その少女、夕空は、もう、と溜め息をつく。彼女とはもう長い付き合いだった。私と同じで時の止まった身体を持つ。近頃は私と匹敵する程力が強く、代替わりの日は近いかも知れない。
ふと隣を見ると、夕空は怪訝そうな顔を見せる。
解放されたい気持ちはあるものの、彼女が一人になるのは気が進まなくて複雑な気分だ。月夜様も、同じようなお気持ちだったのだろうか。もう別れて久しい彼女を懐かしむ。
そして、その時は、間もなくやって来た。




