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アークの試験⑵

今回は別視点入ります。天の視点です。

「いやあああああなんでブラックドラゴンが!?」

あの後、全員が手を止めたタイミングでレムを覚醒させた。こんな叫びが漏れたのも妥当だと言えるだろう。

「では、次の試験に移る」

各人、己の力を示せ。これが第二段階だ。

その結果ーー今、レムは魔法の鎖を引きちぎっている。

意外に静かなのは、皆が声をあげながらの奇襲などないと理解しているからだ。まあ中にはーー。

「うおおおおおおおくらええええええ!!!」

引き付ける目的なら理解出来た。だがあの少年はただただ全ての攻撃を声を上げながら行っているだけ。身体能力が上がるとか、魔力が上がるとかそういった特殊効果もない「気分の問題」だそうだ。

魔眼を持ったクーリが言うのだから間違いない。

そういえばあの保健医、三年後まで待てると良いんだけどな。

と、レムがブレスを吐こうとした。俺は首輪に指示を出してそれを止める。過去に首輪に付与した魔法効果だ。伸縮自在、命令厳守、暴走停止などなど。

レムは一瞬締まった首輪に、俺へ恨めしげな視線を送るが、攻撃を手加減しつつ続行する。と、カトリーナの元へ精霊が一体降りてきた。

「アルデバルビエさん、あのドラゴンさんに沈静化をお願い出来ますか!?」

『カトリーナ!どうしてこんな危険生物と戦ってるの!?あ…狂戦士!?もう、分かったわよ。沈静化ね?あんたにはクッキーもらったりしたし、いろいろ相談にも乗ってもらってるから良いんだけど、ね!』

アルデバルビエ、ごめん。友達だったのかカトリーナ。

「ふふ、この精霊魔法使い、いい」

隣のアズサがおかしなモノでも見るように見てきたがそれは大した問題じゃない。

『眠りなさい』

魔法耐性は上級、されど精霊魔法は本質に語りかけ、眠気を誘う。レムはゆっくりと目をしばたかせ、地に首を落とした。

「そこまで!」

全員がピタリと動きを止めた。

「では、全員に今の戦いの解説をしてもらおう」

「解説…ですか」


「…ってぇ…あーあーあ、合格者は九人か。いつもどれくらいだ?」

「大体十五ですか。二次試験のあとは」

クローリーそういや空気だけどいいんだろうか。

「ふふふ、我の牙も久々にうずいて…」

あ、違う。みんなうざいからスルーされてるだけだった。あまりに空気過ぎて忘れてた、うっかりうっかり。

「よし、戦いを見る目があったのは、この九人。魔法の才も体術も、ほぼ前の新人と比べて遜色はない」

「あの、ギン?この2人はなぜダメだったんだ?」

「ラルフは三回、ミソラは四回自分の実力に見合わない攻撃を仕掛けて吹っ飛ばされている」

「そんなに見ていないよ…」

アイルももっともだ。そして三つ目の試験には俺は関与しない。なぜなら戦闘技能ではないから。


「……お前ら鬱陶しいぞ」

もふもふもふもふ。

「狂戦士も動物に好かれるのね…すごいわ」「きゃあー!舐めないでくださいよ、うふふふ」

お題はこのブラックテリアを一匹飼いならすこと。群れのうちどれを選んでも構わない。

「私の友人になりたいものはいらっしゃい!」

「ガゥ」

一匹の気高そうなブラックテリア。

「ふ、いい度胸ね。あなたとは良いライバルになれそうだわ」

リリアンナは順調だ。

「えーと、俺は気が弱いっすから、えーと…引っ張ってくれる様な子っすか」

「わふっ!」

だが、三人は苦戦している。

「えーとえーと…」「何でよってこないんだよ?」「…ふふふふ可愛い」

最後以外はわからないよ。

「あはは、やめてよぉ!きゃっ」

「自分は、こいつに決めたであります!」

「わん!」

この試験では己を把握することが出来ているかが見られる。例えなつかれなかったとしても、なぜ懐かれないかわかるなら良い。

「はいOK。じゃ、選定するねー」

クーリは甘々だ。結局二人しか振り落とさなかった。さっきの最後の女性は「ええ、変態ですから」とあっさり認めた。

「今日はこれで試験終了だよ。明日は辛いから頑張ってね~」

「「「はい!」」」

俺は肩に乗ってきたレムを撫でると、その場を後にした。


*****


「いやぁ、疲れましたね!すごい威圧感で」

「あれは恐ろしかったわね。ああ、私はリリアンナ。姓はどうでもいいわね」

「あたしは、カトリーナです!」

「自分はヴィルです!」

「俺はササキです。まあ、名前嫌いなんで勘弁してください」

「ユーリ」

「自称変態、エレステラだ。ステラでいい」

六人が自己紹介をし終わると、見計らった様に一人の金髪の前髪を上げたメガネの少年が恭しくお辞儀をしたーーわざとらしく。

「どーも皆さん初めまして。俺はアークで事務員やってる、ギンです!あ、そこのお姉さんキレイだね、よければあとで案内してあげるよー?」

「結構だわ。明日に備えるので手一杯」

「そう?ならいいや。俺今度全魔権に出るんで、受かったら応援してくださいね☆あ、そうそう。皆さんの部屋を案内するように言われたんだったー」

全員が疑問符を抱える。

こいつホントに事務員かよ、と。


「ここが女子のお部屋。男子はこっちねー、気楽にしてよ。俺は受験して入ってくる子とちょっとしたお友達になりたいって思ってさ」

「あら、全魔権に出るほど優秀(・・)なのにコネクションなんかいらないんじゃあないかしら?」

ギンはニコニコ笑うと、「そうかな?」と言った。

「俺はお姉さんみたいな人嫌いじゃないなあ。綺麗だし話しやすいし、何より偉そうじゃないから。実力のある人の余裕?」

「俺としては、君はそんなに強そうに見えないっすよ、ギンくん?」

「おやおや正しいことをいうね、おにーさん。俺も全魔権出るほど強くないんだよ。ぶっちゃけ、巻き込まれただけだし?」

「まきこ…そうっすか。そう言えば狂戦士信者追い出されてましたけど、あれってレギオっ奴っすよね」

「あ、知ってる?まぁ俺最初からやる気ないんだけど。ぶっちゃけ三回戦進出で御の字かな。あ、ロストエデン餅食べる?美味しいんだよ、お煎餅もあるからね。明日は死んだ方がマシだって思えた狂戦士メニューを10分の1でお送りするって」

全員が固まった。

「アイルさん張り切ってたよー、レムだけじゃ持久力は見れないから、ってね」

ギンはにこやかに言って、「じゃね!」と呆然とした皆を残したまま、その場から消えた。

次回カトリーナちゃん達女性陣の視点からです。二日目は耐久試験。

走らされたりします。

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