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支配された世界の英雄は仲間の不幸に涙する  作者: ラード
1章 マナ編
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1章21話 危機と新しい気持ち

 私は浮かれていた……慢心していた……それに気づいたときにはもう遅かった。


 私はアキトを置いて一人でひなさんのとこへ行こうとしたことがダメだった。


 森が危険な場所だということさえ忘れていた。


 森はひなさんとアキトのおかげで魔物は少ないから大丈夫だと思っていた。


 まず、考え事をしている私は複雑な森の道を正確に移動することなどできずどんどん道を間違えた私は気づいたときには迷子になっていた。


 森の中は木々に遮られ日の光が入らず薄暗く私の不安が増していくのを感じた。


 そして不安は現実になることで絶望へと変わる。


 その生き物の腕は私の腰より太く体は3メートルを超えていた。


 私を微かに照らしていた日の光は巨体にさえぎられて私の周りは暗闇になった。


 「グレートベアー……」


 私は体を後退させようとするが私の体は言うことを聞かず、私は尻もちを付く。


 抵抗もできずにただ座っている私をグレートベアーは完全に餌と認識して襲い掛かってくるわけでなくゆっくりと歩いてきた。


 グレートベアーの一歩一歩が私の死へのカウントダウンだった。


 カウントが刻まれるごとに私の下半身から暖かいものがあふれだす。


 私の目の前へと来たグレートベアーは足を止め右腕を上に掲げた。


 私は恐怖から目を閉じるが死の衝撃が私の体を切り裂くことはなかった。


 私が目を開けるとそこには死神の鎌をもって私を完全に見下しおもちゃとして扱うように口角を上げてうれしそうな顔をするグレートベアーがそこにいた。


 私は忘れていた……グレートベアがただの熊ではなく魔物だということを。

 私は知らなかった……魔物という存在は獲物の恐怖や絶望を見てもてあそぶような生き物だということを。


 私は自分の無力さに腹が立ちその怒りで恐怖をごまかすことで右の手のひらをグレートベアに向けた。


 「確かに私は魔法をまだ使えない!火の出し方も水の出し方も火がどうやれば起きるのかも水がどうすればできるかもわからない!でも!この生きるか死ぬかの状況で魔法が使えないなら私のこの魔法の血に意味はない!」


 私は右手にどんどん魔力をためた。


 グレートベアーは私の魔力を感じて急いで右腕を掲げようとした。


 「もう遅いんだよ!このクソグマガァ!!!!」


 私の手から魔力が解き放たれる。


 だが……そんなに現実は都合よくできていなかった。


 私の放った魔力はただ分散して消えていった。


 私は死を悟り目を閉じた。


 「…………」


 どさッ……

 

 「……………………そうか!これが走馬灯ね!死に際に世界がゆっくりになるやつね!心の他いろんな記憶も思い出してきそうだわ!」


 「お前何一人で言ってるんだ?怖くてこわれたのか?」


 私の耳に聞こえるはずのない声が飛び込んでくる。


 相変わらず人を馬鹿にしている兄弟子のどこか優しい声。


 私の閉じた目から涙がこぼれ初め私は恐る恐る瞼を開いた。


 「だからあの時一人で森行くのは危険だっていっただろ?」


 「……うん……ごめん」


 わたしの前にある光景に私は唖然とした。


 そこには先ほどまで私に死の運命を告げていたグレートベアーが首を無くして横たわりその上に無邪気な子供の顔をした兄弟子が座っていた。



 無邪気な笑顔を見た私の心臓が鼓動を早くした。

 

 この鼓動の変化はグレートベアーが怖かったから、助かったのがうれしかったから……それだけでないことを私はわかってしまった。

 

 吊り橋効果かもしれないけれど……考えれば考えるほど私の鼓動は早くなる。


 「おぉ!アキト!マナは見つかったか!」


 「師匠~!妹弟子が襲われてたので助けました!ほめて!よしよししてください!」

 

 私の後ろから大好きな凛として優しい声が聞こえるのに私はアキトから目が離せない。


 そんな私に見向きもせずにアキトの瞳はひなさんに吸い込まれる。


 私の胸が締め付けられるような痛みに襲われる。


 「ヒナ大丈夫だったか?一人で森に行くのは危ないだろう!これから森に行くときは私かアキトに一言言ってくれ。」


 ヒナさんのことは大好きなはずなのに……ヒナさんはこんなに優しいのに……私の心の隅に黒い感情が芽生えた気がした。


 「そーだ!そーだ!これからはこの兄弟子さんにたのみなさい!」


 いつもはからかわれればむかつくはずなのに……反撃したくて仕方なくなるはずなのに……私の頭はさっきまで魔法でいっぱいだった私の頭は今はアキトとの森デートのことでいっぱいだった。


 「そそそれなら今度一緒に森に行ってよね!」


 大したことは言っていないのに私の顔が熱くなり、アキトの顔が見れずそらしてしまう。


 「その時は任せろ!」


 アキトの声を聴くと私は俊座に顔をアキトの方へと向けてしまう。


 その視界に映った自信満々な満面の笑みに私の頭は真っ白になり、頭が完全にオーバーヒートした。


 それからヒナさんと私で苦戦しながら火魔法と水魔法の使い方を見つけたり、アキトの兄弟子ブームが終わったり色々あったが毎日三人で楽しい日々を過ごしていた。


 結果から言うとあれから半年アタックしまくったけどアキトには効果がなく逆にウザがられていて最近私に冷たい気がする。


 それなのにアキトはヒナさんにはいつもあんなに好意的な目線をしている!

 羨ましい!


 私の中でヒナさんは師匠件ライバルになっていた。

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