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第22話 ティーチャードクター⑥

 遊園地での事件の翌朝、秀は璃海に呼び出された。

待ち合わせ場所は昨日の公園だった。暑さのせいで、やはり誰もいない。集合時刻の10分前に璃海は現れた。彼女は時間に厳しく、遅刻などをすることは絶対になかった。


 互いに何の話になるのかはわかっていたが、逆に気まずく、なかなか話し出せずにいた。

「今日はいい天気だね。」

先に切り出したのは璃海だった。

「ああ。気持ち良すぎて体温も爆上がりだ。」

と秀も答える。しかし、二人ともどこかぎこちなかった。


 遂に覚悟を決め、璃海が本題に入った。

「ねぇ松浦くん。昨日のことなんだけどさ…。」

「やっぱりそれか。」

「うん。観覧車で何があったか、全部百合から聞いたよ。」

「そうか。」

秀は少しばつの悪そうな顔をした。

「百合の夢に反対したんだってね。応援するって言ってたのに、どうして急に反対したの?」

と問われ、秀は少し考えてから答えた。

「上野の成績は明らかに悪い。あんなことでは生徒に教えることなどできるわけがない。それに、教師っていうのは教えるだけが仕事じゃないんだ。裏でものすごい量を働いている。事務仕事から何から、それはもう目が回るほどの量だ。基本の教えることすらままならないのに、そんなことまでできないだろ。」

「でも、私たちはまだ高校1年生だよ。これから努力すればいいじゃん。」

「遅い。本当になりたいやつはもう本格的に勉強を始めている。ただの高校のテストであんな得点のやつが、今からたったの2年ちょっとでテスト点を普通以上にし、その上資格試験の勉強、さらに教育学部の受験勉強なんて間に合うわけないだろ。」

「でも、夢を追って頑張ることは大切なことだよ。」

「理想じゃなく現実を見ろ。確かに夢を追うことは大切だ。だが、叶う夢と叶わない夢との線引きもしなくちゃならないんだ。」

すると、璃海の顔が歪んでいった。それは、驚きと恐怖が入り混じったような表情だった。

「松浦くんはそんな人じゃないと思ってたのに…。」

そのまま璃海は走って公園を出て行ってしまった。


 その場には、秀だけが取り残された。俯いたまま、じっと動かなかった。

5月、炎天の下。蝉はまだいない。

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