プロローグ
どうも、以前短編として投稿した作品の連載版となります。
主人公の地球での出来事や動機が変更されていたりと、短編から大分変わっていますので、お楽しみください。
おや、どうやら、また新たな来訪者のようですね。
ようこそ、世界からの落伍者、落人殿。
私、統括案内人のドクトルと申します
これよりあなた様に参加頂くのは、あなたが再び世界に這い上がる為の儀式【魂の選別】でございます。
……ノンノン、私はただの案内人。皆様を儀式の会場へ案内するだけで、詳しい説明は、然るべきものが行います故、私への質問はご遠慮ください。
それでは、ここでのことは記憶には残りませんが、良き旅路を……。
――――――――――――――――――――
突然の激しい光が閉じた瞼越しに目を刺す。
あまりの眩しさに目をしばたたかせながら瞼を開くとそこには何もない真っ白な空間が、ひろがっていた。
何だ?どこなんだろう、ここは?
確かぼく、ベットで寝ていたはずなんだけど…
服装は、寝る時に着ていた白いTシャツに上下の黒いジャージのままだ。
いまだ、はっきりとしない頭でそんなことを考えながら、辺りを見渡すと沢山の人間が、自分と同じように辺りを見回したり、泣きじゃくっていたり青ざめていたりと、様々な反応をして、皆一様に事態を把握できずにいた。
「おい!どこなんだよ、ここは!?
なんなんだよ、こいつら!」
突然、今目覚めたであろう男が、怒鳴り声をあげながら暴れ始めた。
金髪に浅黒い日焼け肌のガラの悪い男で、学校でいじめをしてきた奴らの中にも、同じような奴がいたなと、とても関わり合いになりたくないタイプの人間だと、呑気にもそんな場違いなことを考えてしまうほどに自分もまた、この訳の分からない状況に混乱して事態を把握できないでいた。
「ふざけやがって、舐めてんのか!!
誰だか知らねえが、隠れてないでとっとと出てきやがれ!!」
男は、ますますヒートアップして、辺りにあたり始める。真っ白な、天井も壁もわからない、辛うじて自分が床に座り込んでいると分かるこの空間で、暴れる男を横目になんとなしに上を見上げる。
なんだ…あれ?
見上げた視界の先の空間が、突然歪み始めた。周りの人も気付きだしたのか、辺りがざわめき始めた。
そして、歪みはどんどん大きくなり、やがて、いくつもの幾何学的な光輪を纏った光の球体が現れた。
『対象全員の覚醒を確認致しました。
これより、【魂の選別】を開始致します』
光球の出現直後に、頭の中に直接、そんな言葉が響く。
『これより始まる【魂の選別】は、あなた方、落人達に再び現世へと這い上がる為の機会を与える儀式となります』
光球から、頭の中に直接送られてくる言葉に対して、そんなことよりここは何処なんだとか、どうやってこんなところに連れてきたとか、言いたいことが頭の中で駆け巡るが、口は縫い付けられたかのように開かず、体も固まり動かすことができず、ただただ光球の言葉を一方的に伝え続けられる。他の人達も同じような状態らしく、あれほど暴れ回っていた金髪の男さえ微動だにせず驚愕の表情で光球を見上げていた。
『この【魂の選別】の参加者は落人と呼ばれ、多くの他者より強く疎まれた者。嫌われ、消えてくれと願われた、存在を否定され、世界から存在を抹消された者達です』
光球から教えられたこの【魂の選別】とやらの選ばれた理由にただ、“そうか、ぼくには本当にどこにも居場所の無かったのだな“という諦めにも似た失望だった。
そんなにも自分は周りから嫌われていたのかと、胸の中に言いようのない暗く重い澱が溜まる感覚がした。
『【魂の選別】に選ばれたあなた方には、これより魂の器に合わせた恩寵がひとつ与えられます』
『あなた方は与えられた恩寵を使い、これから送られる異世界【パーガトリアム】にて、魂の研鑽の為に競い合っていただきます』
光球の言葉と共に空間が歪み、白い空間の中に靄が縁取る綺麗な風景を映し出す鏡のような門が現れた。
『異世界【パーガトリアム】は、あなた方の故郷、地球とは異なる法則を持ち、今までの常識が通じない危険な世界であり、あなた方はこの地に降り立ち、恩寵に応じた
この世界での天職が与えられます。』
『天職にはタスクが定められており、それらを達成することで、業貨を得ることが出来ます。業貨を使い魂の位階を上げることで、魂が磨き上げられていくことでしょう』
『そして、魂の位階を上げ続けることで、いずれあなた方の魂は、星の輝きに至ることでしょう』
『また、この世界にはあなた方より先に【魂の選別】に選ばれ、より多くの研鑽を行なっている者たちもおり、彼らとの辛い戦いの日々も待っています』
『しかし、この世界での競い合いに勝ち残り星の輝きに到達した魂のみが、勝利者として再び現世に這い上がる為の機会を与えられます』
『それでは皆様、良き研鑽を』
【魂の選別】の概要が、伝えれた瞬間、光球が消えると同時に皆の目の前に揺れ動く靄のような玉が、顕れた。
恩寵の証である玉はそれぞれ異なり様々な色彩を放ち球体の大きさもマチマチだった。
そして自分の目の前に顕れた玉は光輝く虹色だった。
これが、ぼくの魂の器に合わせた恩寵…
目の前にある自分の恩寵の虹色の大きな玉の存在感に意識を奪われてると……
――――――ガァンッ!!!
「アガッ!?」
突如、後頭部を強い衝撃が襲った。
「へっ…」
衝撃により前へと倒れ込み、星がちらつく視界の端に嫌な笑みを浮かべた金髪の男が映った。男は、指輪の光る拳を振り下ろした体勢をしており、後頭部を殴られたのだと分かった。
地面に這いつき、意識が飛びそうになる頭を抱えながら、男を見上げていると
「よぉ~陰キャくん、悪ぃんだけどよぉ
てめぇのその虹色の玉、俺にくんねぇ?
あぁ、ちなみに拒否権は無しな」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらこちらを見下し、その手に酷く濁った小さい赤い玉とぼくの虹色の玉を持ちながら男は、そんな事を言ってきた。
ぼくは朦朧とする意識のなか、
「返し…て……」
か細い声を絞り出しながら男の持つ虹色の玉に向かって手を伸ばす。
そんな自分を見下しいた男は
「はぁ?」
ドスの効いた声と共に男は、眉を寄せて
――ドグサッ!!!
這いつくばるぼくの腹に深々と蹴りを突き入れた。
「かひゅっ」
蹴りの衝撃に息が詰まる。溝尾に深々と突き刺さる容赦のない蹴りは、横隔膜を押し上げ肺の中の空気を押し出し、激痛と共に容易く呼吸を奪った。
「拒否権なしって聞こえなかたったかな?あぁっ!!」
ドコッ!ドカッ!ゲシッ!!
「てめぇみてぇな陰キャが、こんな明らかに上等なモン貰うとかあり得ねぇんだよ!
陰キャは、陰キャらしくショボいモン手に隅っこでビクビク怯えながらせせこましく生きてりゃいいんだよ!!」
怒鳴りながら、愉しそうに下卑た笑みを浮かべ、容赦なく蹴り込んでくる金髪の男。
周りの人間達は関わり合いたくないと気まずそうに目を逸らすか、何が面白いのかニヤけながらこちらを見る者、こちらに一切の興味を示さずに無関心を決め込む者。
掠れゆく意識の中、そんな彼らを視界に収めながら、浴びせられる暴力の嵐に只々身を縮こませ、自分の弱さを叩きつけられた。
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少年が気絶した後も、暫く暴力を振るい続けた男は、やがてひと通り暴れてすっきりしたのか、満足げな顔で少年から離れた。
「ぺっ……素直に渡しときゃ、ここまでされずにすんだのによぉ
んじゃ、この恩寵とやらは、俺がもらっていくぜ〜
てめぇより、有効活用してやっから安心しな!アハハハハハハッ!」
男は少年に唾を吐きかけ、高笑いしながら門へと向かう。しかし、男が門を潜ろうたとき、
『恩寵は一人につき、ひとつまでです』
メッセージとも、警告とも取れるそんな
言葉と共に男は、門から弾かれた。
「あ〜確かにそんな事言ってたか…
そんじゃまぁいっか」
そう言って男は元々、自分の前に顕れた濁った赤い小さな玉を放り捨て、虹色の玉を持ったまま、門に入っていった。
しばらくすると、様子を窺っていた他の面々も、次々に門を潜っていき残されたのは気絶した少年ただ一人になった。
ただ、個々人、事情は異なるが、誰ひとりとして、横たわる少年に目を向ける者はいなかった。
―――――――――――――――――――
「うぐっ…痛ぅ…っ!」
体に走る痛みに意識が覚める。
鈍痛に悶えながら、なるべく痛まないようにゆっくりと体を起こす。
痛みに耐えながら、辺りを見渡すとそこには、鏡の門が残るだけで、周りにいた人間は誰ひとりとしていなかった。
「……………っ!!」
胸の中に鬱屈とした暗い澱が渦巻く感覚が広がる。腹の底からこみ上げてくる吐き気を必死に堪えながら、立ち上がる。
地面に転がるあの男が持っていた、あの時あった恩寵の玉の中で、もっとも小さかったであろう濁った赤い珠を見つけた。その玉を拾い手のひらに乗せる。
気を失う前に聞こえた、あの男の声が頭を過る。
―――陰キャは、陰キャらしくショボいモン手に隅っこでビクビク怯えながらせせこましく生きてりゃいいんだよ!!―――
それは、あの男は知る由もないはずの、家に引き篭もり、両親の罵り合う声を聞きながら、自分の殻に閉じ籠もっていた日々を思い起こさせた。
…………………………………………………
暗い部屋の中、部屋の外から聞こえてくる男女の罵り合う声。その声を聞きながら、閉じきったカーテンの隙間から漏れ出る光を布団に包まりながら、ただ見つめる。
お前の教育が悪いんだと、私にばかり責任を押し付けないでなど、お互いに相手を非難し合う両親の怒鳴り声を背景に、今日もまた、こうなった原因を思い返す。
始まりは仲のいい友人が、殴られている現場を目撃したところだった。思わず止めに入ったけれど、大して、喧嘩の強くないぼくは、結局、友人共々打ちのめされて終わりだった。
その日から、ぼくも目を付けられていじめられる日々が始まった。
物を隠されるなんてことは序ノ口で、下駄箱にゴミを詰められたり、人けのないところでよく殴られた。
酷い時は、机の中に動物の死骸が入れられていたり、裸に剥かれて写真を撮られた時もあった。
もちろん、先生にも相談したことは一度や二度じゃない。でも先生は遊んでいるだけだろなんて、いじめがあることを認めようとはしなかった。実際にいじめの現場で目が合ったこともあったけど、見て見ぬ振りをされたこともあった。
両親に相談したこともあったけど、教育虐待気味で期待を押し付けてくる両親には、寧ろ、いじめが原因で下がった成績のことを責められた。
大人は誰も頼りになら無かった。
そんな辛い日々だったけれど、彼と一緒に励まし合いながら頑張ってきた。それだけが、唯一の心の支えだったから。
でも、いつの頃からか、彼と過ごす時間が減っていき、偶に会う事があっても、何故か避けられて、会話する事も、少しずつ無くなっていった。
いつしか、学校では孤立していき、家でも落ちた成績の事で責められ、身も心も擦り減らしながら、段々と家にも学校にも居場所を無くしていった。
そんなある日、偶然、彼を見かけた。
話しかけようと近づいた時、誰かと話していることに気が付いて、何故か咄嗟に隠れてしまった。誰と話しているのか気になって、気づかれないようにひっそりと覗き込むと、彼は学校で一番人気の同い年の生徒会長とその取り巻きの生徒達と話していた。意外な組み合わせに驚きつつ、つい、聞き耳を立てて話を聞いてしまった。
微かに聞こえてきたのは、驚くべき事に自分達を虐める様、裏で指示を出していたのは、生徒会長だと言う事だった。
彼は生徒会長に対して、これ以上、自分達に関わるのはやめてくれと、訴えていた。
これ以上、自分達を虐げるというなら、出る所に出て、あなた達を訴えると。
それに対して生徒会長は、酷薄な笑みを浮かべながら、出来もしない事を言ったって、滑稽なだけだと、嘲笑っていた。
自分が如何に、信用され、信頼されているかを鼻高々に語り、それに対して君達の様な落ちこぼれの言葉を誰が信用するのかと、馬鹿にした。
確かに、生徒会長は教師や他の生徒からの信頼も厚く、仮にぼく達が生徒会長に何をされているのかを訴えたとしても、生徒会長の言う事を信じる可能性の方が高い。
それが分かっているのか、彼は悔しそうに俯いて手を握り込んで微かに震えできる様に見えた。
すると、生徒会長が近づいて、何か耳打ちした。彼はハッと顔を上げると、顔を真っ赤に染め怒りの形相で生徒会長に殴りかかった。
しかし、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる生徒会長に彼の拳が当たる前に、彼は取り巻きに取り押さえられて、地面に引き倒された。
必死に拘束を振りほどこうと暴れていたけれど、取り巻きが蹴りつけて、動きを封じた。
そのまま、寄ってたかって蹴りつけられてぼろ雑巾にされる彼を、ぼくはただ怯えて見ている事しかでかなかった。
彼が動かなくなると、生徒会長が彼に近づいて取り巻きが髪を掴んで顔を上げさせる。
一言、二言何か伝えると、地面に蹲る彼をそのままに取り巻き達を連れて去っていった。
生徒会長が、去った事を確認したぼくは急いで蹲る彼の元に駆け寄った。
「あっ、あの、ぼく、怖くてごめん、助けたくても足が動かなくて……」
やるべき事は、他にもあった筈なのに言い訳の言葉ばかりが、口から出ていた。
そんなぼくをよそに、彼はぼろぼろの体で立ち上がり、俯いたまま、
「………………………悪い」
ただ、一言。その言葉だけを残して去っていった。
意味が分からなかった。
助ける事も出来ずにただ見ているだけしか出来なかったぼくに何で謝まったのだろうか?
追いかける事もせず、ぼくは呆然と去って行く彼の背中を見ている事しか出来なかった。
その数日後、彼は自ら命を絶った。
ぼくの目の前で、地面に叩きつけられ、辺りを真っ赤に染め上げた彼の姿は、今でも脳裏に焼き付いている。
それから、ぼくは家に引き篭もるようになった。
学歴主上主義で世間体を気にする両親は、最初、ぼくを無理矢理にでも、学校へ行かせようとした。しかし、学校に行く途中、真っ赤に染まったあの光景を思い出して、過呼吸に陥り、その場で嘔吐して気絶してしまい、とてもじゃないが、学校に行くことなんて出来なかった。
結局、そんなぼくを両親は恥とし、失望して、ぼくに関わることをやめた。その時のぼくには丁度よかった。
それから数日して、何故か彼が自殺した原因がぼくにあると言う話が出てきた。
ぼくの携帯のメッセージアプリに、身に覚えの無い、ぼくが彼に行ったといういじめの行為に対しての誹謗中傷が引っ切り無しに送られて来ていて、そこで初めてぼくが彼を自殺に追いやった犯人にされている事を知った。
訳が分からなかった。
何故、ぼくが彼をいじめた事になっているんだろう?
そんなぼくの疑問を余所に、次々と送られてくる心無いメッセージ。
その中には、学校のクラスメイトや知り合いと思しき物もあって、誰もぼくが犯人だという事を疑っていないようだった。
だけど今のぼくには、誰の仕業とか、どうしてこんな事をとか考える余裕なんてなかった。
これだけ沢山のメッセージが送られて来ているのなら、殆どの人にこの事は広まってしまっているのだろう。
何処へ行こうと、ぼくは彼を自殺に追い込んだ人殺しとして見られてしまう。
ぼくの居場所なんて、最早何処にもなかった。
そうして、ぼくは自分の殻に閉じ籠り、彼はどうしてぼくに謝ったのか、あの時ぼくが助けに入れば彼は自殺なんかしなかったのか、今までのことをぼくはどうすれば良かったのかと、繰り返し思い返しながら、虚空に向かって謝るだけの日々を送っていた。
――――――――――――――――――――
あの日々を思い出していると、聞こえる筈のない声が聞こえくる。
『そんな事をするような人だとは思わなかった。あんなに仲良さそうだったのに、裏ではそんな非道い事をしていたなんて』
『非道い事するな。自殺にまで追い込むなんて、人として最低だろ。何でお前みたいな奴がまだ生きてるんだ』
『さっさと警察に出頭して、少年院にでも入ってしまえばいいのに。そうすれば、私達も安心できる。人殺しが野放しになっているなんて怖すぎる』
『ふざけるな!!お前の所為で、俺の面目は丸潰れだ!お前はどれだけ俺の期待を裏切れば気が済むんだ!』
『あぁ、なんて事。他所様から、どんな目で見られるか。あなた達は何で親に迷惑ばかりかけるの?!』
『君は本当に最低だね。あれだけ仲の良かった友達を追い詰めて自殺に追い込む。彼もさぞかし無念だろうね、そんな奴と友達になってしまったばかりに………』
―――違う、これは幻聴だ。
『『『『『『―――あんたの方が消えてしまえば良かったんだ―――』』』』』』
幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ幻聴なんだ―――――――――本当に?
脳裏に焼き付いた真っ赤に染まった地面の上で、ぼくを見つめる光を失った筈の眼球と目が合った。
「――――うぼぉえ”ぇ”ぇ”え”ぇ゙”ぇ”!!」
胃の底から溢れてくる吐き気。胃液が喉を焼き、鼻の奥に酸っぱい匂いが充満し、口から吐瀉物が溢れ出す。胸の中の、心の奥底に溜まる鉛の様に重く、ヘドロの様に粘ついた暗い澱を全て吐き出そうとするかのように。
胃の中が空っぽになるまで吐き続けた後、吐瀉物に塗れた床に這いつくばり、手にした濁った赤い玉を見つめる。しばらくして立ち上がり、手にした玉を握りしめ、痛む体を引き摺りながら、重い足取りで、ぼくは門を潜った。
一章分を書き溜めてありますので、一章が終わるまで毎日投稿していきます。




