そのヨンジュウサン ニコと3号と矢掴さん!
「……先代様」「むむ?」
結界に満ちた霊力に押しひしがれ、地に伏していた土屋だったが、むくり肩膝立ちまでに体を起こす。
「まだそこまで動けるか?」
片眉だけをピクリと上げる巌十郎。一方土屋は額に脂汗を浮かべながら、それでも口元に笑みさえおいて。
上と下、二人の視線は交わる。
「……あなたのお見立て通りです。『土屋蔵人』は人の世に借り住まうための名と姿、この私こそ、元、妖総大将土蜘蛛。
……ですから。ただこれだけの術で私を滅せられると……お思いになられては困りますよ……」
そう。巌十郎の術は確かに強力なものだ。このままでは祓われてしまうだろう……このまま、何も逆らわずにいれば。
「元より私は、先代様と事を構えるつもりなど些かもございません。ですがこのまま、訳も知らずに祓われるのは……私には、妻も養女もおりますので……事と次第によっては」
「逆らうも是非無し、その力もまだある、と?
……じゃろうな」
「……私の正体は、あの女から?」
「そうじゃ」
破邪の術の威力に押され、土屋の問う言葉は少ない。それに巌十郎も素っ気なく答える。本当は少し違う、だが事細かく答えるまでもなかろう、と。
「ならばお疑いはごもっとも。あの女ならば……」
一方土屋は納得の思い。あの女が巌十郎に自分の事をどれほど悪く吹き込んだのか?それは容易に見当がつく。そしてその狡猾さに唇を歪める。学園で一度戦い自分では到底敵わないと見て、あの女は巌十郎を焚き付けたのだ、だから……
「しかし先代様。前から私のことは……?」
「勘付いてはいた。この昴ヶ丘の町に、何か大きな力のある妖怪変化が隠れておるとは、な」
苦悶の顔の下で、土屋はしかし少し胸を撫で下ろす。それならきっと話せばわかる……
「でしたら、先代様にも何度かお気づきがありましたでしょう。この町で不逞を働く霊や妖が、いつの間にか姿を消したこと……」
「あった。わしが手を回す前に、何度もな。お主の仕業か」
「細かくは、後で詳しく……いくらでも申し開き致します。ですが……」
「今はただ、それを己の身の証にしたい、そして身代にしたい、とな?」
「そうです。私は確かに土蜘蛛、されど……今の私には些かの邪念もございません。この町に人々に仇を為したことも……いいえ先代様。殊更に手柄顔はいたしません、ですが先代様ならご存知のはず。私はこれまでこの町のため、いくらか働いて来たつもりです」
「そうじゃな。思い返せばわかる、いくつも覚えがある。確かにお主はよう働いた、蛇神様のおわすこの昴ヶ丘を、邪な霊の穢れからよう清めてくれておったようじゃな……」
「ですから……!」
「だがならぬ。わしはお主を許さぬ、断じてな。
……天の義に照らせば!わしがお主を祓うのは不当よ、道理に叶わぬ。だがそれでも、わしはお前を滅する!何故ならば……よいか土蜘蛛?わしのこの度の仕儀は元より大義にあらず!
……これはな?ただの私怨じゃからのお……」
冷ややかで淡々としていた巌十郎の言葉に、急に浮かぶ陰険さ。そして私怨とは?土屋が当惑にはたと顔色を変えると、たちまち!
「……うぉぉぉぉぉ〜〜〜ん!!」
「え?いや?その、先代様?」
それはなんと、突然のベソかき。こんな巌十郎の姿があるとは、土屋には全く思いもよらなかった……いや八ッ神恐子が前に見た、そして彼女は知っている。この爺さん、こうなった時が一番困るんだよね。
「ええええい、わしは知っとるんじゃ!これを見ぃ!」
涙と鼻水と涎で大洪水の顔を、質素ながら品のあるいい和服の袖で構わずぬぐい、懐にそのベチョベチョな手を突っ込む。そこからガサっと取り出して、土屋の顔に突きつけるその紙、写っているその映像は。
「……?これは……や?!やややそれわぁ!!」
そしてびっくり仰天、たちまち顔色を青くする土屋先生。ああそれは、あの早苗と土屋の「熱烈キッス」シーンではないか!
「せせせ、先代様?こんなものをどこで??」
「念写の術じゃぁぁぁ!!」
「念写……で、では先代様が、これをご自分で??」
「その通りじゃ、この悪党めぇぇぇ!よくもわしのかわいい早苗にその口でチュッパチュッパと……」
まさかそれ?あの時の早苗の唇チュッパチュッパが、巌十郎の怒りの理由ぅ?
「ちちち、違います先代様、いやその、違わないんですけどそれにはわわわ訳がぁ!!」
流石の妖総大将にもこれは予想外、言い訳の仕様がない。八ッ神恐子の讒言だけならどうにか申し開きもつく(だって自分よりあの女の方が明らかに怪しいし)のだろうが、巌十郎自身に念写を撮られているのでは……
だってチュッパチュッパしちゃったことは、まあまあ事実だし!
たちまち狼狽し呂律も怪しくなる先生の様子に、頑固爺さんいよいよ誤解を拗らせて。
「おかしいと思っておったんじゃ、毎朝修行中にお主が御社に現れると早苗がソワソワするし!それにこの所、急に早苗の霊力が高まって……それもお前の影響じゃろうが!!つまりこの時の接吻チュッパチュッパだけじゃのうて……その前から、お前は早苗に!
……『あ〜んなこと』やら、『こ〜んなこと』やら!しちゃってくれちゃったんじゃろうがぁぁぁあ?!」
「いいい、いやそんな?『そ〜んなこと』とかしてませんよ先代様!」
「嘘つけぇぇぇ!!うぉぉぉん、早苗、わしのかわいい早苗、おのれ土蜘蛛貴様、早苗によくもぉぉぉぉお〜〜〜〜〜!!」
まずい、これは圧倒的にまずい事態。落ち着かせてじっくり話せばわかってもらえると思ってた土屋先生、たちまち背筋が凍る……これはムリ、そもそもなだめるのがムリ!
千年前、蛇神に責められた時以来の大ピンチ。元妖総大将・土屋先生は絶句する……
「『ピポパポ……」
「ぱーんち!」
「……ピ!』ああもう、だからぁ!『ピ』じゃなくて『ぺ』!」
この時、八ッ神恐子と口裂け女との不毛な罵倒合戦は、相手かわってノッコとの、さらに不毛な電話ゲームになっていた。最後のもう一押しで毎回円盤に突撃され、八ッ神恐子はお邪魔娘2号早苗の番号にどうしてもコールしきれない。
「そうだこうなったら……『あっち向いてホイ』!」
「え?……きゃぁぁぁぁぁ?!」
円盤からニョッキリと伸びた二本の腕、その片方のハサミの先で、ヒョイとあらぬ方向を指し示す。思わず反応して横を向いてしまったノッコの体を、もう片方のハサミがガッシリ捕まえる。
「んぐんぐ……取・れ・な・い〜〜〜!」
振りほどこうとするノッコ、だがそのハサミ中々の力の強さ。簡単にはびくともしなさそう。
「アハハハ、いい気味!さぁこの隙に『ピポパポ……」
「こんのぉぉぉ!だったらお返しです!こっちもむんずと掴んで……えいやぁえいやぁ!」
ハサミに挟まれたまま円盤の腕にしがみつき、ブンブン振るノッコ。
「パ』……ウデ揺さぶんじゃねーわよ、揺れて番号押せないでしょーーーー!!」
「う〜ん、何してンのかよくわかんないけど……とにかくアイツの目は引きつけてくれてるわね……あっ、そうだ!」
一方地上では、怪異たちはノッコと円盤のその泥試合をポカンと眺めるばかり。その中で仁美が一人、ハタと我に帰って。
「ボーッと見てる場合じゃない!口裂けさんそれにみんな、早苗を探して!」
「「「「おおっといけない、そうだったぁ!」」」」
ワッと散っていく怪異たち、その背中をみて仁美はもう一つ思い出す。
「……ところでメリーさんは?先生にお知らせはどうなったの?なんで帰って来ないのよ??」
事ここに及んで、いつも図太い仁美もついに動揺し始める。何だろう、この万事どうにもグダグダ感?いやグダグダはある意味慣れっこなのだが、今回は何か変、何かがおかしい。パズルの大切なピースが一つ、どこかに隠れて見えなくなっている感じ……
(大変だ……!)
高校一年生、十五年ちょっとの短い妖怪生でニコが感じた、それは最大の恐怖。
ノッコちゃんのお養父さんが祓われそうになっている、それもまさか、早苗先輩のお祖父さんに?!
さっと彼女の片手はうなじに回り、そこからカチカチと音がする。それは震える体で爪を噛む音。
(……ううん、でも今は、私がしっかりしなきゃ!)
だが震えながらも恐れ慄きながらも、ニコは健気に自分を立て直して。
(まず知らせなきゃ、仁美先輩に電話だよ!)
バッグから電話を取り出し、仁美の携帯番号にコールした、その直後。
電話がかかってきた音がする。いや自分の手の中ではない、鳴っているのは!
(ダメだわ、今、2号に電話はムリ!)
1号が暴れるから、電話帳に登録していない番号にコールはムリ。そうあきらめた八ッ神恐子、仕方なく悪あがき。
(もう一度土蜘蛛にかけてみよう!)
土屋家の番号なら、スマホの電話帳アプリからワンプッシュだ。それならこの状態でも掛けられる……ポチッとな!
(誰から?出ていいの?)
一回、二回、三回と、土屋家の黒電話のコールが鳴り響く。
(仁美さん?……ううん違う!)
それなら自分の携帯は「話し中」になるはずではないか。だがそれは今、仁美の番号を順調に呼び出している……
「え?誰ぇ、こんな時に!」
仁美のバッグで携帯が鳴る。一瞬イラっとしたが、すぐに。
「そーだ、メリーさんからかも??待って待ってぇ!!」
あいにくバッグの底に滑り込んでいたスマホを、仁美が取り出すのに数十秒。そして画面に表示されている相手先に驚く。
「あれ?ニコだよ?どうしたのかな……モシモシぃ?!」
「タハハ、さつき殿?迎えはまだで御座ろうか?」
「ねぇちょっと?さつきさん?どうなってます?」
あの折紙の猫・ミヤが姿を消してから、実は一分も経ってはいない。だが待っている時間というのは長く感じられるもの、珠雄も槌の輔も少しじれていた。
「ペチャペチャゴシゴシ……ニャハ、慌てない慌てない♪」
一方さつきは呑気に前足で顔を洗いながら。
「ウチの八尺ちゃんは日本中あっちこっちフラフラするのが大好きだから♪今どこに行っちゃったのかはあたしにもわかんないけど、ミヤ子は鼻が利くからね。すぐに見つけてくるって♪」
「「に、日本中??」」
これは話が変わってきた。二、三分待てと言われたが、ホントに大丈夫なの?
「そんな、さつき殿ぉ??」
そして狼狽えた槌の輔、早苗の体のコントロールがうっかり緩んでいく……
(どーだい、早苗はいたかい?誰かみつけたかい?
……ああ邪魔だねぇ!)
(いや〜、こっちはいないっすね姐さん。
……ちょっとどいてちょ!)
(こっちもダメだな、見当たらねぇ!
……どけこのモジャモジャ、蹴っ飛ばすぞ!!)
(わしの方にもおらんぞい!
……ていうかコイツらどうにかならんのかい?!)
念話を飛ばし呼び合いながら、早苗(の体を借りた槌の輔)を探す怪異たち。だがあいにく、誰もコーヒーカップのところは見ていない……うんそりゃそう、子供のかくれんぼじゃあるまいし、そんなダメな場所に隠れてるとは、流石に誰も思わない。
そして捜索が捗らない理由がもう一つ。読者さんたち存在を忘れてるかと思いますが、思い出して下さい。園内には今、小グロゲロがウジャウジャと。そしてそれらは、まあまあ強い妖気のある彼ら現代怪異たちに寄ってきては体にまとわりついてくるのだ。倒して欲しくて。
(これじゃ邪魔くさくって探せねぇ!片付けていいか口裂け?!)
(駄目だよトンカラトン、斬ンな!なぁ八尺、いくらかでもどうにか出来ないかい?)
(ぽぽぽぽぽぽ……残念だけど、これは流石に多すぎて……)
(だよねぇ……ったく!あのケバケバめ、どうしてこんなの撒き散らしたんだい?!)
「嘘ぉ?!厳じいが土屋先生を?ニコ、それってどういうこと?!」
「よくわからないんです、でもノッコちゃんのお養母さんがそう言ってて……先生が、早苗先輩のお祖父さんに、丘の上の公園に連れて行かれたって!」
「大変だわ、それ大変!厳じいってば急に何を血迷って……ああモー、うるさいなぁ!」
ニコの語る重大事件、耳を済まそうとする仁美を、騒音が邪魔する。そう、その音は。
「ニコ?後ろで電話鳴ってるの?ベルがうるさくて、キミの話よく聞こえないよ!あのね、これ緊急事態だから!ニコお願い、一度そっち取って構わないから黙ってガチャ切りしちゃって!」
「はい!」
と、ニコは二つ返事で片手にスマホのまま、もう片手に黒電話の受話器を取る。ただし仁美にはガチャ切りでいいと言われたが、大人しく遠慮がちな性格のニコにはそれは出来ない。一応一言だけ断って、と受話器はうなじの方に持っていって後ろの口で。
「……もしもしどなたですか?すみません、今ちょっとこちら立て込んでて……」
すると、そう挨拶するかしないか、電話先からその断りを断ち切るようにガミガミ怒鳴って来たのは、もちろん!
「やっとかかったぁ!私よ私、矢掴今日子《八ッ神恐子》よぉ!!」
そしてその声が、ニコのスマホを通じて仁美にも。
「えええええ?!それケバケバからの電話ぁぁあ?!じゃあ何?アイツ今、あそこから先生のウチに電話してンの?!」
円盤をクワッと見上げながら、仁美のよく回る頭の中の計算機が、フルスピードで大回転。チンと一発出た答え、そうそれは、彼女に見えなかったパズルのピース。
(アイツが……巌じいに先生の正体をバラして、妖怪退治しろって焚き付けたんだ……だから!)
大体合ってる。いや、辻褄が合わないことも色々あるが……いいよ、わかんないことは直に聞くから!!
「ニコ!電話代わって!……オイコラこのケバケバ女ぁぁぁぁぁぁ!!」
ニコが片手に持ってるスマホ、そこから飛び出て空気をつん裂く、仁美自慢のあの大声。それは黒電話の受話器がニコの背後にあっても十分届く。巻き添えでキンと痛む耳、しかしすぐにニコは仁美の意を汲み、黒電話の受話器を顔の前に戻してスマホを押し付ける。
「アンタねぇ?!そーいう企みだったのね?アタシたちをここにおびき寄せて足止めして、その間に先生と巌じいを戦わせて倒そうなんて!!」
「……え?貴女?そもそも誰?」
「下見ろ、下ぁぁぁぁぁ!!ほらアタシよア・タ・シ!!電話かけてるアタシが見えるでしょぉぉぉぉお?!」
「ええ?下って……お邪魔娘3号??なんで?どーしてこの電話がそっちに繋がってるの??」
いや、繋がってはいない。地上と空中、ほんのすぐそこ目の前の二人がしかし今、土屋家の黒電話とニコのスマホを経由して、超まだるっこしく通信中。そんなクソめんどくさいこと、説明してるヒマはない。
「ンなことどーでもいいわ!!答えなさいよ、そーいう企みなんでしょう?!」
「え、違……や、あってるところもあるけどちょっと違うわ?そうじゃないわよ?」
「何がぁぁぁぁぁ??」
「あの爺さんと土蜘蛛を戦わせて共倒れにってのは、うん、それはその通りよ?ホホホ、どう?い〜い作戦でしょう♪……でもね?」
「でも、何ぃぃぃぃぃぃ??」
いやこの際。レーセーに考えたら八ッ神恐子には、仁美の質問に答えてやる義理は全くないのだ。だが相手のあまりの剣幕にうろたえ、そしていつもの作戦自慢のクセも出て、ついペラペラと。
「私はね?爺さんと土蜘蛛をここにおびき寄せるつもりだったのよ!グロゲロを撒いて騒ぎを起こして……でもね、ちょっと聞いてよ?せっかく場所を用意したのに!爺さんも土蜘蛛も!私の電話にちっとも出てくれないのよぉぉぉぉぉぉ!」
挙げ句の果てに愚痴り始めるケバケバ女、気持ちはわかるが自業自得。その上さらに図々しく。
「……そうだ、ねぇ貴女?だったらちょっと頼まれてくれない?あの二人をここに呼んで欲しいのよ」
何様ぁぁぁ?!仁美は思わずヒートアップ。
「何言ってくれちゃってんの??呼ぶ気なんて無いし!大体呼んだって来れないわ!!だって今あの二人はねぇ!!……」
と、ついそこまで喉から出てから、仁美はハッと冷静になった。
(そっか、あの二人もしかして!この女の作戦と関係なく、勝手にアッチでおっ始めちゃったってことぉ?!)
先程までの追求の剣幕もどこへやら、ハタと口をつぐむ仁美。もしそうなら、八ッ神恐子にはうっかりそのことを知られるわけには……だがもう遅い、いくら八ッ神恐子だって、その雰囲気の変化に気付かない程にはヴァカではない。
「……え?ちょっと貴女?『今あの二人は』何ですって?そう言ったわよね?あの二人がどーしたのよ?!」
逆に問いただそうとしたその時、背後のコーヒーカップの中から!!
「ダメ、おじいちゃん止めて!!」
槌の輔の憑依コントロールから外れた早苗が、立ち上がって絶叫する!
「先生は悪くないの、ダメ、おじいちゃんダメ、先生を祓っちゃダメェェェェェェ!!」
「早苗?!」「2号?!」「センパイ?!」
「「「「あんなところにいたぁ?!」」」」
その出現に驚く者たちと。
「タハハ、済まぬ憑依が外れた、巫女殿を止められぬぅぅぅぅぅ!!」
「ああまずいよこれ、僕たちも見つかっちゃう!……さつきさぁぁぁぁん?!」
「ニャハ〜?そうだね、ミヤ子ちょっと遅いねぇ?」
一人だけ呑気なコーヒーカップ組。
「やめておじいちゃん、先生、二人が戦うなんて……そんなのダメェェェェェ!!」
あらぬ方向を凝視し、早苗は正気を失ったまま叫び続ける。仁美にもようやくわかる、早苗が予知していたのはケバケバの悪事にあらず、土屋と厳十郎との戦いの方。そして予知能力はそのまま、今はリアルタイムの遠隔視にすり替わっているのだ!
そして2号早苗のその狂態を見て、八ッ神恐子もすぐに察する。
「ええと……2号のおじいちゃんって……鴻神巌十郎……先生って……土蜘蛛のことよね……『今あの二人は』……
ンまさかぁ?!あの二人、私抜きで今どっかで勝手に戦ってるってこと??だから来れない、電話にも出られない??
……ちょっと3号?!そういうことぉぉぉお?!」
「フンッ!!」「えい!!」
通話をブチっと切る仁美、受話器をガチャンと置くニコ。タイミングはピッタリ同時。
「あっ、このぉ!!やっぱりそうなのね?!」
「……うっさいわ!!」
そう、事ここに至っては、もはやお互い問答無用。
「こんなヴァカに付き合ってらんない!先生を助けに行かなくちゃ、あとその前に、早苗を守らなきゃ!!」
「あっと、貴女たち待ちなさいってぇぇぇぇ!!」
「……そうだね、ホントそう」
敵味方大混乱の最中、いつ現れたのか、円盤のさらに上空で。
「こんなグダグダのグチャグチャ、もう付き合ってらんない。もういいよ、やっちゃおうプチ!!」
「フララララーーーー!!」
ついに痺れを切らしたヤスデが、プチを従え動き出す。
……でも、「やっちゃおう」って一体何を?
(続)




