蠕動 黒の一族の復活 3
この話には凌辱的な表現がございます。
同時刻、スフスフ城内。
「なーんか陰気くさいお城ですねぇ
シェラ様」
リューズは案内された一室で腕を伸ばしながら愚痴っていた。
初めての長旅で筋肉は強張り悲鳴をあげているのだが
そのことに関しては内緒を決め込んでいる。
ミューズと違いインドア派のリューズは運動という物を積極的にやった記憶が
無い。
「それに私、もっとこう
大歓迎されると思ってました」
城に着き門兵に名乗り、そのままこの部屋に通された。
その間に幻羽人と一人も出会わずリューズは肩透かしを食らった気分だった。
マントを脱ぎながら
「ふふ、まぁいつも大体こんなもんだな」とシェラが言う。
「ええっー?どうしてですか??
私たち古の一族なんですよーー?
唯の幻羽人から見れば神様みたいなもんなんですよ?」
リューズが憤慨する。
「「神」のわりには
リューズは幻羽人を怖がっていたような?」
苦笑するシェラ。
「え、だって、、、
幻羽人って背の羽で全てを決めちゃうんですよね
羽が綺麗じゃないと酷い目にあっちゃうんですよね?
私の羽ってあんまり立派じゃないんですもん」
抗議する割には随分弱気である。
「古の一族って外見では幻羽人と区別つかないから
そしたらやっぱり怖いじゃないですか、、、」
拗ねたように上目図解にシェラを見る。
「私、シェラ様みたいに強くもないし
呪文もまだ下手なんですもん
酷い目に遭っちゃったら嫌ですもん、、、」
涙目になっている。
「やれやれ、素敵な矛盾だな」
腕を組みながらその様子をシェラは微笑ましく見ている。
「だが、、知らず知らず確信をついているのかもな」
?マークを飛ばすリューズ。
「確かに我々古の一族はかなりの長命で特殊な力を持つ者も多い
が、外見上は幻羽人を全く変わらない
幻羽世界は異種族混在世界だ
いろいろな種族が居る為、他種族にあまり違和感がない
つまり幻羽人は我々古の一族を取り立てて区別しておらんのだ
古の一族を神格化していると思うのは大きな間違いだぞリューズ」
シェラの答えにリューズは異議を申し立てる。
「えーーっ!力とか魔力とか天と地ほど違うのに?
そんなの変ですーーっ!!
ちゃんと称号受けてる方たちは、ですけど、、、」
「せいぜい格式だけがのある古い種族
くらいの認識だな」
納得いきかねる表情のリューズにシェラは続ける。
「まぁ、白の剣士のなかには
たまにはガツンと力を誇示しろ
と、いう者もいるが、、、」
その言葉にうんうんとリューズは相槌をうつ。
そんなリューズにシェラはにっこりと笑った。
「私は今のままで良いと思う
我々古の一族は幻羽世界を支配しているのではなく
皆と共存しているのだからな」
シェラの言葉にリューズは眼を大きく見開いた。
「シェラ様っ!!
私、感激ですっ!目から鱗ですーーっ!!
そうか、、共存なんですねっ!
勉強になります~!」
瞳をうるうるさせ両手を胸の上で組み合わせ。
すっかりシェラの言葉に感銘を受け180度考えを改めるリューズ。
共存し、影から幻羽世界を支える、それば白の一族が己らに課したルールだった。
すっとシェラの瞳が動く。
「どなたかな?
気配を忍ばせて来るとは
よい趣味とは思えませんが」
シェラの言葉に入口のドアが開いた。
「、、、これは失礼
いや、流石ですな剣士殿
ほんの戯言故、許されよ
私は今度王になるムカサムです
ご挨拶を、と思うてね」
新王だと名乗るムカサムが現れる。
一見したところ端正ではあるが老いを感じさせる風貌だ。
「これはご無礼を
この度白の里から参りました
私はシェラと申します。
この者は司祭を務めさせていただくリューズ
改めてこの度はご即位おめでとうございます」
シェラは礼儀正しく一礼する。それに合わせてリューズもぺこりと頭を下げる。
「ほう、そなたが司祭を?」
「はいっ、精いっぱい務めさせて頂きます」
リューズは再び頭を下げる。
「これは楽しみだ、よろしく頼むよ
では詳しい事は夕食の後にでも、まずはゆっくりくつろいでくれたまえ
長旅で疲れたであろう」
そう寛大に笑みムカサムは部屋を後にした。
彼が去るのを待ちリューズは小さな声でシェラに言う。
「なんか、、老けた王子様ですねシェラ様
王子様っていうより、、オジサマ?って感じです」
確かに幻羽人の寿命は短い、40~50年というところである。
世代交代も早い。
稀に先代が長生きし、次の代が受け継ぐとき老いが始まる年齢になる事もある。
今回もそうなのだろうか?
だが、シェラはその優美な眉を顰めたままだった。
「結界を張っておく
私が戻るまでこの部屋を出るなよリューズ」
微かな闇の力を王から感じ取ったのだ。
城の地下。
薄暗い日の当たらぬ部屋で、黒い装束の男たちが数名蠢いていた。
「思ったより若い娘だな」
「いや、丁度よい」
「しかしあの剣士はどうする?
シェラと言えば若いが
緑の女神の異名を持つ使い手だぞ?」
「いくら「あれ」があったとて、、、」
「む、、、」
黙り込む4人の男、そこに追随していた男が声をかける。
「その件ですが、もう一人の白の娘を捕えましたぞ」
「なに?もうひとりだと?」
「はい、城下に居たものを偶然に」ひっひっと笑い声がする。
「それは重畳、さっそく儀式を」
「そうじゃ儀式を」4名のうちの2名が口々に言う。
「まぁ、待ちなされ
唯殺しても今までの「ニエ」と変わりませぬ
いくら白の娘とは申せ
そのままでは役に立ちませぬ」
今まで押し黙っていた4人のうちの一人が話し出す。
どうやらこの男が指示しているようだ、4人と2人
薄暗闇の中合計6人の男が居る。
「白の血は清い
「ニエ」の血は穢れた血でなくてはなりませぬ
恐怖と絶望、狂気、屈辱そしてなにより
憎悪に塗れておらねばのぅ」
眼の焦点が合っていない。
この男は荒野で荒れ地を引っ掻いていたあの男に違いなかった。
「その娘、奥の部屋に連れてきておるのじゃな?
では例の場所に移しあれらを呼び集めよ
なに、今から取り掛かれば日が暮れ新月が三日月に代わるころには
憎悪と絶望に満ち満ちた血になっておるじゃろう」
「なるほど」
「なるほど」
口々に同意する声が上がり暗闇の中笑い声がこだまする。
そして影は次々と己が仕事を成すために散って行った。
グランは時折立ち止まり、地面を嗅ぎ血の臭いを追っていた。
すれ違う婦人が珍しがる子供をたしなめながら足早に去ってゆく。
曰く、駄目、係わっちゃいけません。
野外店からここまでそうやって来ていたためすれ違う人々の冷たい眼が
多少痛かったがこの際気にしていられなかった。
嗅覚には自信があった。
あの男のマントに付いていた血の臭いなら何処までも追える自信がある。
多分、そこにミューズも居るはずだ。
そして、、、城壁の一角にたどり着く。
「城?
この中だって?どうなってるんだ?」
血の臭いはその壁に作られた小さな鉄の扉の中に続いている。
グランは迷うことなく城壁を駆け上がった。
リューズは一人ぽつんと床の敷物の上に座っていた。
「シェラ様遅いなぁ、、、」
暇だった、かなりの時間がたったと彼女は感じている。
「そういえばミューズ、あの子もなにやってるのかしら
もう、きっと羽目外して遊び呆けてるのね
仕方ない子なんだから」
本当は自分も遊びに行きたかったのだ。なんといっても初めての都
珍しいものが沢山あるに違いない。
でも、臆病な性格が災いし付いて行けなかった。あっけらかんとした妹が
羨ましかった。
「そうだ、シンクロして探しちゃおうっと」
双子の神秘、リューズはミューズとシンクロしあう事が出来る。
だが、ミューズからは出来ない。
もしかしたら魔力と何か関わりがあるのかもしれないとリューズは考えていた。
同じ双子だがミューズにはあまり魔力が無い。
その為ミューズは剣士見習いになったのである。
リューズがその気になってシンクロすればミューズの感じた事見たことが
手に取るように解る
あわよくば自分もミューズと同じように都見物を楽しもうと思ったのだ。
だが、その思いは粉微塵に打ち砕かれる。
精神を集中させミューズと高度なシンクロをする。
その途端リューズは体を強張らせびくんと跳ね上がり悲鳴が喉から飛び出た。
股間に異物が挿入してくるような激しい痛みを感じ
胸が揉みしだかれ指の形に凹み見えない指が蠢く。
体中を撫で回され押さえつけられ身動きもとれない。
恐怖が体を支配する。耐え切れずリューズはシンクロを断ち
そのまま横たわりガチガチと歯を鳴らし震えが止まらぬ体を抱きしめる。
怖かった何が起こっているのか解らなかったが、ただただ怖かった。
涙が溢れ声にならぬ声で助けを呼ぶ。
助けて。
助けて。
助けて。
頭の中で助けを呼ぶ声がこだまする。
それは、ミューズの叫びだった。
「助け、、、なきゃ」
リューズはよろよろと立ちあがり壁に寄りかかりながら
のそのそと歩き出す。
「あの子、、、助けなきゃ
このままじゃ壊れちゃう、、、心が目茶目茶になっちゃう、、、」
震えながら部屋を後にする。
その頃ミューズは大勢の男に嬲られていた。
入れ替わり立ち代わりまだ少女の青い体躯をこじ開け踏みにじる。
止めて、許して、お願い助けて、と叫びつづけた声は枯れ果て
涙が止め処なく流れ落ち体は悲鳴を上げ血を流す。
だが男たちの欲望は止まらない、恐怖が体を支配する。
助けを呼ぶ声が届かない、、、。絶望が心を黒く染めて行った。
王宮を探索していたシェラは漸く王の部屋を見つけ出す。
「あそこか?他の目ぼしい部屋には何もなかった
やはり怪しいのは、、、」
部屋の入り口を守る衛兵をそっと当身で眠らせ
「すまんな」と詫び素早く王の部屋に滑り込む。
「王は留守か、、」
王の部屋を捜索し始める、と、妙な風の流れに気が付く。
「なるほど、隠し通路だな」
カタンと壁に巧妙に隠されたドアを開き下に伸びる階段を覗き見る。
「深そうだな、、、」
シェラは迷わず踏み入っていった。
やがて月が登り始める。
この時期新月から半月、真夜中過ぎに満月となる。
三日月が空に高く上った頃。
「月が登ったぞ、まだ出来上がらんのか?」
いらだった声でムカサムが入ってくる。
岩でできた台の上で男が激しく腰を突き動かしている。
「そろそろ仕上がる頃ですじゃ
どれ、王ももう一度お抱きになりますかな」
「ふむ」まんざらでもない顔でムカサムがミューズを見、ぎょっとする。
「なんだっ?!その顔は??」
ミューズの顔は皮膚が赤くただれ水ぶくれ見る影もなかった。
息ももはや絶え絶えである。
「くくくっなに、血は貴重ですからな一滴も流すわけには参らぬ故
気絶するたび気付けに熱湯をほれこのように」
ミューズの顔に柄杓で煮えたぎる熱湯をかける。
悲鳴が上がり蒸気がじゅうじゅうと立ち上がる。
「さすが白の娘、頑丈なものですのぅ」
生命力の強さが仇となる。普通の幻羽人ならばとうに死に楽に成れたであろう
だが強靭な白の一族の生命力が許さない。
「、、、ってやる、、、呪ってやる、、、
お前等、、、皆、、、呪ってやる、、、」
辱めを延々と受け続け、身を引き裂かれ顔を焼かれ。
いくら呼んでも来ぬ助けにしだいに絶望し。
恐怖に憎悪が勝り、助けを呼ぶ声はいつしか呪いを呟く声に変っていた。
それを聞きニヤリと男たちが笑う。
「絶望が心に闇を落とし、憎悪が血に染み渡ったようですな」
くくくくと笑い声が暗い室内に木霊する。
「では、後を頼む、私は客が来るようなので出迎えてくる
大事な儀式を邪魔されんようにな」
「は?では我々の手の者も」
「「コヤツ」じゃないと止められぬ「コヤツ」がそう言っているわ」
ムカサムは腰に吊るした剣をポンポンと叩いた。
所々に火が灯った明かりがあるだけで薄暗い土を掘った地下道を
シェラは足早に歩いていた。
もうかなりの距離を歩いている。体感でだが都はすでに出ていると思う。
シェラは気が付かなかったが途中の小部屋に簡易転移魔方陣が書かれていた。
男たちはそれを利用し瞬時に転移していた。
シェラの足は速い、それでもそこまで歩いてくるのにかなりの時間を要している。
城に残したリューズが気になったが、自分の結界内に居れば大丈夫なはずだ。
「もう、夜が暮れている頃だな、、」
頭の中にスフスフの都を中心に地図を思い起こす。
確かスフスフの都の近所には前の大戦で黒の一族を封印した時に使用した
要石を祭る神殿があったはずだ。
「このままいくとまさか神殿に?」
困惑した声で呟く。
「そう、この通路はその神殿に繋がっておるよ
だが、剣士殿を通すわけには行かんな」
前方の暗がりからムカサムが現れる。
「王、これはいったい、、
!貴方の手にあるのは、、まさかっ!」
ムカサムの手には腕に深々と触手が食い込んだ黒い剣が握られていた。
その件は彼の血を吸い赤黒く脈動している。
「それは、黒魔剣ではないのか?!」
黒魔剣は力を持たぬ幻羽人を大戦に利用すべく黒の一族が作り出した魔剣である。
幻羽人の命を喰らい白の一族に対抗できる力を与える物だ。
「そう、コヤツが私に力を与えてくれる
幻羽人に過ぎぬ私に白の剣士をも打ち倒す黒の剣士の力をな」
すっと剣を持ち上げシェラに剣先を向ける。
「愚かなっ!」
シェラの脳裏にリューズが話した、老けた王子様ですね、という
言葉が蘇る、この剣の所為だったのかと。
「その剣は持ち主の命を喰らい力を出すのだぞ!
持っているだけですでにそのように老いているではないかっ!
そのような物を使えば貴方の命は無いぞっ!」
「かまわぬさ、私の望みが叶うのならな」
この男は自分の命を賭けて何をしようというのか?
「望み?」
反射的にシェラが問う。




