序章
幻羽世界、ぼちぼち書き始めます。せっかく書き直すのだから大筋はそのままですが漫画では描けなかった事も書きたいですね^^
満月が湖面に光を落とす。
綺羅々と小波に光が乱舞し水面にたたずむその人を浮かび上がらせている。
ふわりと背の羽が開き優雅にその人は空に浮かびあがった。
柔らかい光の雫を散らしながら飛翔するその姿を
-なんて美しい飛翔だ、、。
蜘蛛の網に捕らわれ死の顎に飲まれようとしている彼。
恐怖に支配された思考の最中、、彼はぼんやりとそんなことを思った、、。
まだ彼は知らない。
彼女は幻羽婦人、光神・幻羽の奥方とされる美少女。
婦人と呼ばれてはいるがその姿は可憐な少女である。
憂いに帯びた瞳。総てを嘆き悲しむかのようなその顔は
時の牢獄に縛られ救いの手を伸ばすことを禁じられた彼女の苦痛。
時の確変時に否応なしに立ち会わさせられてしまう彼女には
己の無力さを嘆くしか方法はなく。
ただ流される時の囚人に甘んじる。
いつの日か幻羽が蘇るその日まで、、。
そして、残忍な蜘蛛の毒牙が彼に振り下ろされる。
背に羽を戴く幻羽人の住む世界には、羽を持つ幻羽人。
羽を持たぬ、または羽以外の物をも持つ亜幻羽人。
そして蜘蛛族が暮らしている。
幻羽人の生涯は生まれ落ちた時にほぼ決まる。
羽を愛でた創造主により、より美しい羽を持つ者には
他者を従わせる事が出来る魔法がかけられているようなものだ。
故に羽の美しさ=権力となる。
いくら容姿が美しかろうが徳を持つ者であろうがそれは2の次3の次となり
羽の優劣のみが全てを決める。
亜幻羽人は幻羽人の奴隷として底辺に位置付けられ虐げられている。
蜘蛛族は捕食者として存在している。
蜘蛛族は非常に強靭で狡猾、幻影魔法を多少使い幻羽人を捕え喰う。
が、時に共食いすらする貪欲さのためその数は多くはない。
羽の魔法は彼らには効力はなく、蜘蛛の網に捕えられた幻羽人が助かるすべは
ほぼ無い。
唯一蜘蛛族に勝る者は、背に羽を持ちながら羽の魔法に捕らわれることのない
幻羽人の住む前から幻羽世界に存在していた古の一族のみ。
古の一族は非常に長命で魔法と剣にたけ。
世界が始まりし頃から存在するとも言われている。
その種族は慈愛に富み光神に従う白の一族。闇神に従う好戦的な黒の一族。
森の緑の民等に分かれる。
まだ幻羽人が世界を総べるまえ、白の一族と黒の一族の大戦があり
白の一族が勝利し世界は平和になったと伝えられている。
が、黒の一族は滅んだわけでは無く次元の狭間に封じられているに過ぎない。
いつしかまた世界をその手に入れんがため幻羽世界に帰る日を虎視眈々と狙っている。
その日は間もなく訪れんとしている、、。