剥き出しの欲望 その2
「最近の調子はどうなん? ストレスとかたまってへん?」
う、痛いとこついてくるなぁ。
「そ、そんな事はないアルよ」
「「そ、そうネ! そうネ!」」
全員で苦し紛れに中国人のふりをしてみるけど、アンナはそれで誤魔化せるはずもないんだよなぁ。
「そうアルか~、そいじゃ美味しい話しは無いという事でええな。ほんならBB、行こか!」
美味しい話し?
まぁ、実際のところそんなに美味しくはないんだろうけど。
というか、多分聞かないと回線を切ってくれないんだろうな……。
「「「ちょっと待つアル」」」
「あいよぅ」
どうせこんな流れになると予想はしてたけど、私達は三人でラグビーの試合開始前みたいにスクラム組んで会議。
「ちょっとどう思う?」
「どう思うも何もアンナ姉さんの持ってきた美味しい話しだよ? ジョニー、止めとこうよ」
「でもさ、アンナ姉さんのもってくる仕事が小さいためしもないし……話だけでも聞いてみようよ」
「それでまたクロックスがボロボロになったらどうするんです!」
「いや、でもまぁ……話し聞かないと帰ってくれそうにないし」
「……そうだね、話しだけね」
「……話しだけの方向で」
「と、いうわけでアンナ姉さん。話しだけは聞かせて欲しいんですけど」
正直微妙な気持ちのまま、とりあえずアンナ姉さんの言う美味しい話とやらを聞くという結論に至った私達。とはいえ、聞いたら首を突っ込まざるをえないっていうのもわかってるため事実上はOKのようなもんなんだけど……。
「ケッケッケ、じゃあセミオートシステムでドッキングするからハッチを開けておくれ」
「って、すぐそこまで来てるんですか!」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャーンってやつやな」
言われて窓の外を見てみれば、ブゥーンと窓の外が真っ赤になる。どうみてもファルコ号だ。
やっぱり甘かった、どっちにしろ私達はアンナ姉さんに付き合わなければならない運命だったようで……。
「……元気そうで何よりだ」
コンパクトな船内通路がちょっと狭そうな様子でカンザキさんがメイド服のスカートをひらひらなびかせやってきた。
久しぶりに見るとやっぱり異様だ。
「こんにちは! お邪魔します! エクレアさんはどこですか!」
パカーン!
「マチコさん、お久しぶりです」
実に良いテンポで声をあげながら、カンザキさんの脇をぬって流星のように駆け寄ってきたムーの頭をキラーパスのように目を合わせることなくおもっきり銃でひっぱたくと、何事もなかったかのように次に入ってきたマチコさんに挨拶するエクレア。
仰向けに倒れ込むムー、死ぬ直前のゴキブリのようにしばし激しくもがき回るが、やがてピクリとも動かなくなった。
「相変わらずここも賑やかね、元気そうでなによりよ」
「せやな、ムーは相変わらずってってか、進歩ないなぁ」
「ケッケッケ、静かでかえっていいわよ」
「おいーっす」
ぞろぞろと集合するアンダーソン商会の面々、ちょっと手狭な感じだけどここまでこの船がにぎやかになるのも久しぶり。
「世間話もしたいでしょうけど、まずは仕事の話しからよ」
「そやな、一度話しはじめたら収集がつかなくなってまうで」
こういう時にマチコさんのような場をビシッと締めてくれる人がいるとスムーズでうれしい、私達なんてその場のノリでズルズルって感じがほとんどだしなぁ。
何かのマシーンのようにテキパキと手際良くオペレーションマシンを操作してホログラムを部屋に出すマチコさん。
しばらく使ってなかったから埃をかぶっててスッゴイ不満気な顔でこっちを睨んできたのは三人で軽くスルー。
「惑星、クロスアート。この星の一国が私達のクライアントよ」
ほへー、いきなり国レベルの依頼! さすが個人事務所はスケールが大きいなぁ!
「正確にはこの星の国連を代表しての一国がクライアントにあたるわけだが……」
すげぇ、国レベルを通り越して星レベルの仕事だよ!!
「ジョニー、マヤ、エクレア、どうかしたの?」
ああ、しまったあまりに話しが急にでかくなったから見れば私達だけハトが豆鉄砲くらったような顔してる。
この前は成り行きでアサシン星を救ったけど、こうめんと向かってって話しはなれてないから。
「コホン、主な仕事はこの星に暗躍している一種の活動団体の目的行為の阻止というものにあたる」
なんだかわかりやすいんだかわかりにくいんだかサッパリな内容説明だなぁ。
「はい、先生! 活動団体と目的行為についてくわしく!」
さすがエクレア単刀直入すぎ!そこにシビレル憧れるぅ!
「活動団体の名称は不明だ。私達は団体Aと呼んでいる。が存在が予想される場所、および目的行為は確認ずみだ、それについてはミノルから報告してもらおう」
「……わかった。調べたところAは一種の宗教団体のようだ。……教団員を捕まえて尋問したところ答えが宗教化のそれだった。……しかし答え方に不信な点があるところから一種のマインドコントロールを受けている疑いもある」
マインドコントロールっていうとアレか、勝手に人の心をいじくってしまおうというアレか。ってその規模が惑星全体とはスケールが大きいな。
「でも、マインドコントロールって思想とかじゃなくて思考を強制的に変えるものですよね?」
え、それって何か違いがあるの?
……。
駄目だ、エクレアが聞いてくれない。
「ねぇ、マヤそれって何か違いがあるの?」
「ありますよ、えっと例えばジョニーに朝起きたらコーラを飲む。と習慣ずけさせる事は可能なんですよ。でも、コーラしか飲まないって考えを植え付ける事はできないんです」
「「へー」」
やっぱりエクレアもわかってなかったか。
「でも、それはそれで何がしたいんだろうね?
「……それはわからない。現状ではAの規模も不明だ、行動の阻止が目的であり、鎮圧、解散は我々の仕事の範疇外だ……」
「まぁ、あとは戦争屋の意見もあるしな。大きい仕事は首を突っ込みすぎるとその首斬られるしな。まぁ、そんな機会作る連中や、バックも大きいやろ? それにそんな機械なんて使い方しだいでは恐いでぇ、簡単な事をやらせるだけしかできんとはいえ隣にすんでる人を殺せってやるだけで無差別テロや虐殺なんて言葉では言い表せないほどの惨劇がおこるんやで」
「うへぇ、ってかそんな一大事ならその国連が解決すればいいのに
「そんもいかんやろ、共同やら何やらうまい事をいってもそんだけのパワーを国レベルの思考で考えたらよしんば自分だけのものにしたろ思うのが国ってもんや。それだったら第三者にどうにかしてもらおって考えに至るあたり、まだよー考えてるほうやで」
な、なるほど……っていうかやっぱりメチャクチャ重い仕事だよ。
さすが個人事務所アンダーソン商会!と尊敬する反面、ちょっとジェラシー。
「ケッケッケ、惑星規模で動いてる団体みたいだから色んな国に査察をいれるだけでも国家単位としては動きにくいしね。その点ではうちにはそこでノびてるムーがいるから」
いまだにピクリとも動かないムー。この子は大丈夫なんだろうか?
「まぁ、私達だけでもなんとかなと思てたんやけど。宙域戦にもなるかしらんし、ムーがあと三人は欲しい言うてな。そんなわけでジョニー達に声かけたんや。下調べは済んどるし、あとは暴れるだけ。どや、悪い話やないやろ?」
よくわからん、というかムーってこの面子でそんなに発言力があるのか?
私が知ってるムーはファルコの索敵件砲手って事くらいしか知らないんだけど。
「ねー、どうするのー。モモははやくあばれたいのー!」
さっきから宙にプカプカ浮きながらモモがじたばたしてる。
「どう思うジョニー? 暴れるだけなら私達の独壇場だけど」
「目的がハッキリしてるぶん、危険度はあるけど逆をいえばやりがいがあると思います」
「う~~ん、大暴れするだけなら。最近はそういう話しもなかったし。よし、乗った!!」
「おおきに~!」




