新しい朝が来た! その6
「にしても今日もダルイなぁ~、何か面白いテレビやってないの~?」
私は起きたばかりだというのに自堕落にソファーに倒れ込んだ。
「ん~……あ、KANATAが番組のゲストで出てるよ!」
そういって意気揚揚とマヤがチャンネルを変えた。
「「う~~、ファラオー!」」
私達三人は盛大にずっこけた!
「ちょ、ジョニー!」
「言うなエクレア!」
私達の目の前にはいつぞやのコスチュームを着たクレオとパトラが!
少しずつ人気が出てきたとは聞いてたけどまさかこんなところで再会するとは、というあか世間は私達が思ってるよりも少しおかしいのか!?
「さぁ、CM開けは今をときめくザ・エジプトズに歌っていただきます、その前にここでCMです」
マヤは肩をふるわせてただ笑っている、ムカツク!
「なにも……ねぇ……」
言いたい事がうまく口にできずに口篭もるエクレア。
うん、すっげー言いたい事はわかる。
とりあえず、落ちつこうと水を口に含む私。
「観光はここギャクダスカルへどうぞ、ギャクダスカルで僕と握手!」
ぶーーーーっ!
私は盛大に水を吐き出した。
「「「ドラッケン!!」」」
そうだ、このデブゴンは忘れもしないドラッケンだ。
「汚いよジョニー!」
マヤが文句を言うけど、でもこれはちょっと……
「出世したね……」
「うん……それにまた太ったね……」
「CMとかで私腹を肥やしたのかな……」
とりあえず床を拭きながらドラッケンのCMを見る。
みんな何も言えない。
とりあえずCMがあけたらザ・エジプトズとまた再会なわけで私とエクレアはあまりいい気分じゃない。
マヤは凄く楽しそうなのがムカつく。
と、いきなりチャンネルが変わった。
「YO YO お前達!」
「あ、ザ・ママだ」
「懐かしい、ザ・ママだ」
「ザ・ママだね」
私達三人の冷めたリアクションにザ・ママが逆にオーバーリアクションで答える。
「YO! 何だYO! そんな反応あるのかYO!」
わめくザ・ママだけど、私達としては今のところ『ふーん』状態。
「だって、事情は説明したじゃないっすか。私は怪我だし、エクレアは銃がオシャカだし」
「そうそう、しばらくまったりしたいのに」
「いや、私はわりと元気なんだけど……」
働き者のマヤはんな事いってるけど私達二人はヘロヘロのまま。
「YEAR♪ YEAR♪
やる気ない二人 やる気だす絶対♪
YEAR♪
気づかない三人 ランクUPしてる事に♪
SO♪
ブルーウォーターで50位 ランキング上位♪
最高にイケテル状態♪
最高の仕事だ絶対♪
SO♪
ラップが私のスタイル♪
君達は働いてスマイル♪」
……
あれ、何ていった?
「ザ・ママ、私達のランクっていくつ!?」
「そう、今何ていったの!?」
「ヘタなラップはどうでもいい普通に言え!」
私達が詰め寄るとザ・ママは慌てながらたじろぐ。
思えばこの人は私達の上司なんだが。
「え、現在49位。あの騒ぎになった事件がおおやけの仕事じゃないっていっても効いたのよ。アンダーソン商会の口添えもあったしね。あの事件って商会の仕事で宇宙規模だったんでしょ?」
あ、そういやアンダーソン商会は宇宙連盟が依頼主だったんだっけ。
間接的とはいえ、あの仕事の一助を担ったって事になったの
か。
なんか、ひょんな事から不意に目標だたブルーウォーター50位内に入るという目標が達成されて、冷静になるとちょっと拍子抜けかも。
「んで、各企業50以内にランキングしてる人達に対しての依頼で希望者限定なんだけど。惑星ラグなんとかの地表調査とかがあってさ。いろんな人もいるからあんたらのこれからのステップアップとリハビリにいいかなと思ってさ。やる? やるなら書類を送るけど?」
私達はうなずくととりあえず書類に目を通した。
「ふ~ん、なるほどね。確かに楽といえば楽かな?」
「まぁ、いい経験になるだろうしね」
「じゃ、決まりですね」
そう言ってマヤは力こぶをつくる。
「まぁ、しばらくはリハビリもかねてゆっくり行くか。そうだ、マヤしばらくぶりに体を動かすのに組み手に付き合ってよ」
「ほいさ!」
「んじゃ、私は銃の手入れでもするかねぇ……ああ、私のマザーテイストトッピング……」
いろいろとあったけど、結局のところ私達は変わらない。
宇宙は広くて、凄い人にいわせれば宇宙の危機なんて1日単位で起きてるらしい。
そのことごとくを人は止めてしまうんだから凄いと思う。
もしかしたら、この世界っていうのは物凄い確立でできてるのかもしれない、仮に別の世界があるのならこんな平和じゃないのかもしれない。
んでも難しい事を考えたって話にならない。
その人ができる事をやって、その人にしかこない朝がやってくるのだ。
今日はダルかったけど、明日の朝は爽やかに目が覚めると信じて。
そして船は行く。
今日の航海もおおむね順風満帆だ。