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07 チート道具とファンタジー教育
前日は早い時間に就寝したので、迅は午前7時頃には目覚めた。
が、部屋を出てみれば、既に仁もエルザも薫子も起きている。
「おはようございます」
「あ、御堂さん、おはようございます」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「はい、ぐっすりと」
「それはよかった。もうすぐ朝食の支度ができるよ」
「ありがとうございます」
口をすすぎ、顔を洗って食堂へ。
仁、エルザらと一緒に朝食である。
献立は朝粥、油揚げとホーレンナ(ホウレンソウ)の味噌汁、焼き魚、卵焼き、お新香。お茶はほうじ茶である。
「ああ、美味しい」
「梅干しが欲しかったら言ってくれ」
「俺はいいです」
「あ、私は、できれば……」
「はい、どうぞ」
「エルザさん、ありがとうございます」
2人とも、異世界での日本食をたっぷりとお腹に収めたのである。
* * *
食事後、御堂迅は仁と一緒に研究所の工房へ、薫子はエルザとともに研究所の研究室へ。2人は別々にレクチャーを受けることになった。
「まず迅君は未来の『勇者』だそうだな」
「はい、”女神様”からそう言われました」
仁は頷いた。
「他に何か言われたかい?」
「ええと、魔王と対になる、人々の剣であり盾でもある、それが勇者だ、とかなんとか」
「なるほど、俺が思っている勇者像とそう変わらないな。君はどう思っている?」
「俺もまあ、勇者、っていうのはそういうものかな、と」
「つまり、魔王と戦う必要があるわけだ」
「そうなりますね」
「で、君は、強いのか?」
「は?」
仁からの質問に、迅は一瞬言葉に詰まったものの、自分のことゆえすぐに返答する。
「強くは……ないですね。中学の頃、剣道をちょっとだけやっていましたけど、段も級もないですし」
「それから?」
「学校の授業で柔道をかじっていますから、受け身くらいは取れますが、投げ技はあんまり」
「なるほど。……まあ素人よりはマシ、ってところか」
「はい」
「なら、イメージトレーニングしてみるといい」
「効果あるんでしょうか?」
「あるようにしてやろう」
仁は工房の隣の部屋へと迅を連れて行った。
「……これは何ですか?」
「『魔導回復機』の試作機だ」
「マギリハビリマシン?」
「『マギ』は魔法の、魔法利用の、という接頭語だと思ってくれ」
「つまりリハビリマシン、ということですね」
「そうだ。これを使うと、身体の動かし方を覚えられる、ということだな」
その説明で迅はピンときた。
「つまり、剣道や柔道の練習ができる?」
「そのとおり。しかもこいつは10倍速まで可能なんだ」
「ええと、現実は1時間でも、10時間分の練習ができるということですね?」
「そうだ」
「すごいじゃないですか!」
「まずはこれを5分ほど使ってみてくれ。その内容で、訓練プログラムを考えるから」
「わかりました!」
ラノベでよくあるフルダイブ型のバーチャル空間だ、と迅は喜々としてシートに座ったのだった。
* * *
一方、薫子はエルザの研究室にいた。
「私は、この世界で『医師』として指導をする立場に、ある」
「お医者様なんですね」
「ん。そして昨日、あなた方2人の……わかりやすくいうと『脳波』みたいなものを調べさせてもらって、いる」
「あ、あの時ですね」
仁が『向き不向きを調べたい』と言ったときのことを思い出す薫子。
「そう。その結果、あなたには『医療魔法』の素質があることが、わかった」
「私に、そんな素質が……」
”女神様”に、聖女とは『勇者を支え、人々の希望であり癒やしである』と言われたことを思い出した薫子である。
「私と、この蓬莱島でなら、短期間であなたに『医療魔法』を教えることができる、けど」
「教えて下さい!」
勢い込んで薫子は言う。
「異世界に来てからずっと私、なんにもできないことが気になっていたんです。御堂さんの助けになれるなら、学びます。教えて下さい」
「ん、わかった」
エルザは大きく頷いた。
そしてさっそく講義に入る。
「……日本から来た高校生なら、人体について、基本的なことは知っているはずだけど、あなたは?」
「ええと、『保健体育』である程度は」
「ん、それなら、基礎はできている。なら次は、魔法を使えるようになる、こと」
08 それぞれの修業
《う、うわああああ!》
御堂迅は『魔導回復機』を使い、バーチャル空間でショウロ皇国の騎士と戦っていた。
双方ともに木剣での試合であるが、迅はただいま12連敗中。
やはりちょっとカジッただけでは本職には敵わないなと心の中で溜め息を吐いている。
そうこうするうちに現実時間で5分、バーチャル空間で50分が経過し、迅は現実に戻った。
「どうだった?」
「全然、歯が立ちませんでした……」
がっくりする迅だったが、仁はそんな彼を元気付ける。
「そう悲観することはないぞ。最初に比べ、最後の方は見違えるように動きがよくなっていたからな」
「でも、勝てませんでしたよ」
「それは、相手が騎士団長クラスだからな、いきなりでは無理だろう」
仁は説明を続ける。
「今の動きを解析して、相手の強さを決めていこう。で、少しだけ強い相手を設定する」
それに勝てるようになったら、また相手の強さを上げる、と仁は説明。
「1日で10日分の練習ができるからな」
「残り6日で60日分……それでも、付け焼き刃じゃないですか。」
「いや、身体が疲れることはないから、休憩時間はいらないし、普通なら2時間程度しかできないような実戦形式の稽古を10時間はできるだろう」
だから300日分……1年くらいの修業ができる、と仁は言った。
「まあそこまでせずとも、裏技があるんだがな」
「え? それは何ですか?」
「そっちは後のお楽しみ、ということでな。……それじゃあ、今度は相手の強さを調整するから、また5分、行ってこい」
「あ、はい」
ということで、再びバーチャル空間へと旅立つ迅であった。
「老君、相手の強さの調整、頼むぞ」
『はい、御主人様。お任せください』
蓬莱島の全てを統括する究極の魔導頭脳、老君が調整しているため、仁としても安心して任せておける。
「今はまず、ある程度強くなることだ」
今日1日はバーチャル空間での修業だな、と仁は考えていた。
* * *
夢小路薫子は、エルザによる魔法の指導を受けていた。
まずは自分の中の魔力を感じ取り、制御するところからである。
全く魔法が使えない相手に、魔法を教えることはできないのだから。
この点において、薫子は3歳児並みであった。
(そう、それが、魔力)
(……これ、が……)
ゆえにエルザは、子供が初めて魔法を習う過程をそのまま薫子に適用している。
手をつなぎ(肉体接触)、己の魔力をほんの少し相手に流す。
それを感じ取ることが、初歩の初歩の初歩である。
「……ちょっと、休憩」
「ふう……」
最初は、極度に精神を集中する必要があるため、薫子の消耗は大きい。
が、慣れてくれば、文字を書くくらいの労力で魔法が使えるようになるはずなのだ。
「夢小路さんは、かなり保有魔力が多い、みたい」
「そうなんですか?」
「ん、さすが、『聖女』」
訓練の合間に、エルザは魔法についての説明も行っていく。
「魔法使い、魔導士と呼ばれる者は、空気中にある自由魔力素を呼吸などで取り入れ、体内で魔力素に作り変えることが、できる」
「はい」
「体内の魔力素は魔法を使えば減少するけど、時間が経てば空気中の自由魔力素を取り込んで、回復する」
「そうなんですね」
「この魔力素は、人間の意志とイメージにより、様々なエネルギー形態を取らせることができる。そしてそれを操ることができる。これが魔法」
「なんとなくですが……わかる……気がします」
こんな具合である。
「一度、魔法が使えるようになれば、あとは、簡単」
「がんばります!」
こんな風に、2人の修業はその日いっぱい続いた……。
09 それぞれの成長
翌日も、2人は前日と同じく修業である。
迅は『魔導回復機』を使い、5分の修業をして5分休憩、の繰り返し。
これを朝から夕方までやることで、40時間相当の修業をしたことになる。
「随分動きがよくなったみたいだぞ」
「だったら嬉しいです」
昨日の終わり頃は新米騎士にようやく勝てるくらいだったが、2日目が半分終わった今では、中堅騎士と互角にまで上達した。
「でも、このままの上達速度じゃ、間に合いませんよね……」
あと5日しかないと思うと、焦りも出てこようというもの。
だが仁は、そんな迅に笑って言う。
「そこはそれ、『裏技』があるしな」
「また『裏技』ですか……」
この人はいったいどれだけ引き出しがあるんだ、と迅は呆れた。
「昨日と今日で、大分こうした魔力的な接続に慣れたようだからな、『知識送信』も受け入れられるだろう」
「せんどいんふぉ? ですか?」
「そう。その名のとおり、情報を送り出す魔法だ。もちろん、送り出す情報は『戦闘技術』だし、受け取るのは君だ」
「そんなこともできるんですか……」
「ああ。そうだな、3回くらいに分けて行おうかと思う。どうする?」
「是非お願いします」
このまま魔王と戦っても勝ち筋が見えてこない。なら、なんでも受け入れようと迅は覚悟を決めていた。
そんな気質は、やはり『勇者』なのだなと仁は思った。
「よし、では行おう。リラックスしてくれ」
「はい」
そして仁は、用意しておいた『魔結晶』の内容を『知識送信』で迅へと送った。
「うわっ!?」
「大丈夫か?」
「あ、はい。いきなり知識が増えたんで驚いただけです」
「よし、ちょうどいい時間だから、お昼にしよう」
* * *
夢小路薫子もまた、エルザに特訓を受けていた。
「そう、随分よくなった。あとはイメージをより正確にすること」
「はい……」
行っているのは、青銅の塊を使って直径1センチの真球を作る練習。
似たような訓練を、かつてエルザも仁から受けていた。
これは魔力の制御とイメージの正確性、そして発動のタイミングの練習にもってこいなのだ。
『医療魔法』と『工学魔法』は、どちらもイメージが重要なのだから。
そして制御の正確さは、そのまま外科的な医療魔法の訓練につながる。
必要最小限の魔力で、体内の故障を治癒することができれば、より多くの回数の行使が可能ということであり、それすなわちより多くの人々を救うことができることになる。
それを理解している薫子は、エルザの特訓について行っていた。
保有する魔力……『魔力素』が尽きかければ『特製ペルシカジュース』で回復しての特訓である。
なので少々お腹がたぷたぷしているのは気のせいではないだろう……。
「まずはここまで。お昼休みに、する」
「はい……」
そういうわけで、こちらも昼休みとなった。
* * *
「あれ? 夢小路さん、食欲ないの?」
天気がいいので昼食は外で食べよう、ということで前庭の芝生の上にシートを敷いてピクニック気分。
……なのだが。
「ちょっとジュースを飲みすぎまして」
「ふうん?」
「ペルシカジュースはビタミンもカロリーも豊富だから、無理して食べなくても大丈夫」
「はい……」
せっかくのサンドイッチだったが、1切れしか食べられなかった薫子であった。
* * *
午後もまた、修業の続きである。
が、迅は動きが格段によくなり、多彩な技を繰り出せるようになっていた。
「今回の相手は騎士隊長クラスだ」
「はい!」
そんな相手とも、互角以上の戦いができるようになった。
その上、
「次からは格闘戦も交えるからな。注意しろよ」
……と、柔道と空手、レスリングなどをミックスしたような格闘技戦が始まった。
「うわっ、うわっ、うわっ」
最初は戸惑っていた迅であったが、すぐにその動きに慣れ、覚えたての技で応酬できるようになっていく……。
* * *
そして薫子も、
「ん、午前中に比べて格段によくなった」
「何となく、コツが飲み込めた気がします」
「その、調子」
2日目の修業が終わる頃には、2人とも大きく成長したようである……。
10 装備のデザイン
そんな日々が続き、この世界に来て5日目の朝となった。
「2人とも、修業は卒業だ」
仁が宣言した。
「……で、今日は2人のために最強装備を作ろうと思う」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
仁の言葉に、礼を言う2人。
「まずは下着からにするか」
「えっ?」
「鎧を着けるにしても防具を着けるにしても、下着は大事だぞ」
「そう、当たったり擦れたりすると、痛い」
「夢小路さんはエルザと、な」
「あ、はい」
「迅は俺についてきてくれ」
「わかりました」
* * *
仁の工房では、まず採寸が行われる。
これは『職人』と呼ばれる技術ゴーレムが行った。
「脱ぐ必要もないさ」
見ただけで身長、体重、スリーサイズまでわかるのだ、と仁は説明した。
そして。
「これでいいかな」
用意されたのは純白の布地。
メリヤス編みにされた、伸縮性のある生地だ。
「『分離』『変形』『安定化』……これでよし」
あっという間に上下一組の下着が完成した。
今、迅が着ているものとほぼ同じデザインだ。
「この上に着るミッドレイヤーも作ろう。……『分離』『変形』『安定化』……こんなものか」
ジャージの上下のようなものが完成した。ちゃんと前はファスナーである。
「まずは、これを着てみてくれ。更衣室代わりに、その衝立の向こうでな」
「はい」
早速着替えた迅は、その肌触りのよさに驚いた。
「仁さん、この生地は一体何ですか? すごくいい肌触りなんですが」
「それは『地底蜘蛛絹』といってな。1600℃まで耐えるし、酸やアルカリにも溶けない、引張強さは鋼鉄の10倍はある」
「レア素材ですね……」
「そうでもない。この島の地下に『地底蜘蛛』を飼っているからな」
「……」
”女神様”がこの世界に送り込んだわけを改めて理解した迅であった。
* * *
同じような反応を、薫子もしていた。
「エ、エルザさん、この下着、すごく着け心地がいいんですけど」
「ん、よかった。それ、水で洗えば、大抵の汚れは落ちる、から。それに、数分で乾く」
「すごい素材ですね……」
「ん、あなたたちは運がよかった」
「本当ですね……エルザさんや仁さんに出会えなかったら……」
しみじみとめぐり合わせの幸運を噛み締める薫子だった。
* * *
下着とミッドレイヤーが出来たなら、アウターも必要になる。
これについてはデザインにも拘る必要があると、仁は判断。
迅と薫子の意見も聞くことにしたのである。
「……で、どういうものにする?」
「俺としては、動きやすそうなものがいいですね。鎧はちょっと」
「なら、軽い防具にするか……」
「まず、それぞれのイメージを描いてもらったら?」
「ああ、それがいいな」
ということで、紙にイメージスケッチを描いてもらうことにした仁とエルザである。
で。
「……これは?」
「胸当てと手甲、すね当て、でしょうか」
「……なるほど、わからん」
迅は、壊滅的に絵が下手であった。
それに比べて薫子は……。
「厚手の白いローブ……かな?」
「はい。それに帽子」
「うーん、いかにも『聖女』っぽくていいな」
なかなかイラストが上手であった。
「これなら防御力も高そうだし、いろいろ付与できる。あとは魔法を仕込んだ杖を持ってもらうか」
「腕輪とかネックレスもいいと、思う」
「そうだな」
薫子の方の方針はすぐに決まった。
「それじゃあ、ローブはエルザに任せる」
「ん、了解」
問題は迅である。
「イメージか……うーん……」
なまじファンタージーやラノベの知識があるだけに決めかねている迅。
そこへ、仁が一言アドバイス。
「ジャンパーっぽいものでも鋼鉄より強くできるから、自由にデザインしてみろ」
「え? あ、はい!」
どうしても人体の急所……心臓やみぞおち、首筋などを守ろうと拘ったため、デザインの幅が狭くなってしまったようだ、と迅は反省。
(過去の勇者じゃなく、俺なりの勇者を目指せばいいんだ)
ということで、迅が考えたのは黒い革ジャン、黒い皮ズボン、そして黒いヘルメット、黒づくしである。
「……うん、夢小路さんが『聖女』で白を基調にしているから、こっちは黒。いいんじゃないか?」
「でも、ヘルメットのデザインがいまいちなんですよねー……」
フルフェイスのヘルメットっぽいデザインである。
確かにこれだと視界が狭まりそうだなと仁は思った。
「なるほどな。なら、こういうのはどうだ?」
仁が描いてみせたのはゴーグルとジェットヘルっぽい絵。
昭和アニメのヒーローが被っているようなデザインだ。
あるいは二昔くらい前のモトクロス用のヘルメットとゴーグルか。
「これで、状況に応じてフェイスガードというかマスクを着ける」
「あ、いいかも。……じゃあ、ここをこうしてもらって……」
着脱が楽な方がいい、と迅は主張し、その意見を反映させ、仁は最終的な仕様を決定した。
これで、2人の装備について、デザインが決まったのである。
11 最強装備 前
デザインが決まれば、製作はお手の物。
『聖女』のローブはエルザに任せ、仁は『勇者』の装備を作っていく。
革ジャンと革のズボンは問題なし。
『古代竜』の抜け殻を使う。
10年おきに採取に行っているため、今ではかなりの量が溜まっていた。
それを黒く染め、『軟化』を掛けて着心地をよくする。
ブーツも同一素材で用意した。
最終的に『表面処理』と『色変化』で黒くした。
「着心地はどうだい?」
「申し分なしです」
「それはよかった。その革は、耐熱性なら3000℃以上、耐寒性はマイナス270℃くらいはあるから」
とんでもない数値を口にする仁。
「『ダイラタンシー処理』もしておいたから、強い衝撃を受けたときだけ硬化して守ってくれる。ただ、じわじわと締め付けられるというような力では硬化しないからな」
「わかりました」
触手には気をつけよう、と肝に銘じた迅であった。
その次がヘルメット。
これには『巨大百足』の甲殻を使う。
体長50メートル、体幅5メートルの巨大ムカデである。
その甲殻は、生きていたときは魔力で硬化されているためアダマンタイト以外では傷付けられない。
トータルでの強度は『古代竜』の抜け殻より少しだけ落ちるが、1つ大きな長所がある。
より軽いのである。
この『軽さ』を活かし、仁はヘルメットを仕上げた。
「どうだ?」
「うわ、これはカッコいいですね!」
気に入ったようである。
「レーザー光線も跳ね返す素材だからな」
「それは凄いですね……」
「投光器も付いているぞ。可視光、紫外線、赤外線に切り替えられる」
こめかみ部分にある切り替えスイッチで光量と光の種類を調整できるようになっていた。
「で、ゴーグルだ」
「あ、これもカッコいい」
フレームは『巨大百足』の甲殻、レンズ部分は『地底蜘蛛樹脂』……『地底蜘蛛の糸を元に作ったプラスチック』だ。
こうして、『勇者』としての基本装備が完成した。
* * *
一方エルザと薫子も、純白の『聖女のローブ』を完成させていた。
「ん、似合う」
「わあ、ありがとうございます!」
白を基調とし、ところどころに入っている金色のアクセントがより神聖感を増している。
「その金色は、飾りじゃないから」
「え、そうなんですか?」
「ん。『人為的魔術変異元素』化した軽銀を使っているから、あなたの魔力を受けて急所を守ってくれる」
「え?」
「『人為的魔術変異元素』は、魔力による強化レベルが50倍以上」
つまり、ただでさえ軽くて強い軽銀の強度が50倍に上がる、とエルザは説明した。
「心臓や、腋窩動脈、頸動脈、大腿動脈などを、守ってくれる」
「す、すごい……ですね」
「ん、でも、多分、これが役立つことは、ない」
エルザは微笑んだ。
「え? どうして、ですか?」
「それは、このあと、わかる」
そして2人は仁と迅、2人のジンと合流する。
* * *
「お、いいなあ」
「夢小路さん、よく似合ってるよ」
「そ、そうですか? ……ありがとうございます」
迅に褒められて、薫子は少し頬を染めている。そしてお返しの言葉を口にする。
「御堂さんも、格好いいですよ」
「あ、ありがとう」
迅もまた、少し照れたのだった。
「よーし、装備の仕上げを行うか」
そんな2人を微笑ましく見ていた仁だったが、時間は有限である。
「まずはアクセサリーからだ」
仁は『魔結晶』を使い、腕輪と指輪を2個ずつ作り上げた。
それを1つずつ、迅と薫子に渡す。
「まず指輪だが、これは『守護指輪』という。装着者が『バリア』と唱えれば、物理・魔法攻撃を通さない障壁を作り出す。解除するには『解除』だ」
これがあるので、服に付けた防御機能はまず使わない、とエルザは言ったわけだ。
「だいたい……多分だが、大型ミサイル100発くらいの直撃も防いでくれる」
「す、凄すぎます」
「いや、魔王とやり合うならこれくらいは必要だろう」
「そう……なのかな?」
首を傾げる迅であるが、まあ防御が堅いに越したことはない、と納得する。
「あとは腕輪だが、腕輪同士で通信できるようになっている。腕輪に向かって声を掛ければ、相手に伝わるんだ。やってごらん」
「あ、はい」
2人は20メートルほど離れて動作確認をしてみる。
「……ええと、夢小路さん、聞こえる?」
「はい、聞こえます! ……御堂さん、聞こえますか?」
「よく聞こえるよ」
これは便利だ、と2人とも喜んだ。
「次は……『聖女の杖』かな?」
仁を止めるものはこの場にはいない……。
お読みいただきありがとうございます。
次回更新は1月3日(土)12:00の予定です。
20260102 修正
(誤)『|魔導回復機《マギリハビリマシン』
(正)『魔導回復機』
3箇所修正。
(誤)今迅が着ているものとほぼ同じデザインだ。
(正)今、迅が着ているものとほぼ同じデザインだ。




