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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第51話:砂漠の決戦。太陽を喰らう死神の炎

「……電池、だと?」


 カイルム様の声が、地下の冷気を一瞬で沸騰させるような、恐ろしい「熱」を帯びて響きました。

 彼の背中から溢れ出す漆黒の魔気が、蠢く影となって床を浸食し、アハメド王子が引き連れてきた兵士たちの足を次々と凍てつかせていきます。


「閣下、落ち着いて……。あの子が、怖がっていますわ」


 私は、震える少女を強く抱きしめながら、カイルム様の背中に呼びかけました。

 少女は私の胸に顔を埋め、ガチガチと歯を鳴らして震えています。……かつて、王都の冷たい屋根裏で、誰の助けも来ないと諦めていた私と同じように。だからこそ私は、この子の震えだけは、何があっても自分の腕の中で鎮めてあげたかったのです。


 カイルム様は、私の一言でわずかに肩の力を抜きましたが、その眼光に宿る殺意は一分いちぶたりとも減じてはいませんでした。彼はゆっくりと振り返り、私と、私が抱く少女を、この世で最も尊いものを見るような、蕩けるほど甘い瞳で見つめました。


「……ああ。すまない、エルシア。……だが、安心しなさい。君の慈悲に触れる価値さえないこの塵芥ちりあくたを、一瞬で片付けてしまおう」


「ほ、ほざけ! やれ! その魔女ごと、死神を焼き殺せ!」


 アハメド王子の叫びと共に、兵士たちが赤黒い「呪いの炎」を纏った剣を一斉に振り下ろしました。

 砂漠の魔物と契約したという、ドロドロとした不快な熱気。


 けれど、カイルム様は剣を抜くことさえしませんでした。


「――消えろ」


 ただ一言。

 カイルム様が掌をかざした瞬間、彼の内側から爆発的な漆黒の魔炎が解き放たれました。

 それは「太陽」を自称する王子の炎など比較にならない、すべてを飲み込み、無に帰す「終焉の黒炎」。


「ぎ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 兵士たちの呪いの炎は、黒炎に触れた瞬間に「捕食」されるように消え去り、彼らの鎧は一瞬で塵へと変わりました。殺すまでもない。魔力という拠り所を完全に破壊された彼らは、もはや立ち上がることさえ叶わない、ただの抜け殻となって床に転がりました。


「な、なんだ……この力は……!? これでは、どちらが魔物か分からぬではないか!」


 アハメド王子が、腰を抜かして後退りします。

 カイルム様は、そんな彼を蔑むように一歩、また一歩と追い詰めました。


「……魔物か。……確かにそうかもしれんな。エルシアに出会うまでの私は、この忌々しい熱を持て余すだけの死神だった。……だがな、王子。今の私は、彼女という『光』を守るための盾であり、彼女を傷つけるものすべてを焼き尽くすための業火だ」


 カイルム様の大きな掌が、アハメド王子の首を掴み、そのまま壁へと叩きつけました。


「……君のその醜い瞳が、私の妻を、そして彼女の家族になろうとしているこの子を、ただの道具として見た。……その罪は、万死をもってしてもあがなえん」


「ま、待て……! 私が死ねば、この国のオアシスは……!」


「……オアシス? そんなものは、エルシアの指先一つでいくらでも蘇る。……貴様が握りしめていた腐った権威など、私の愛の前では砂粒以下の価値もないのだよ」


 バキッ、と不吉な音が響き、アハメド王子が大切にしていた「魔剣」が、カイルム様の魔力によって粉々に砕け散りました。

 地位も、力も、自分を「特別」だと信じ込ませていたプライドさえも。

 すべてを失ったアハメド王子の顔は、もはや怒りさえ失い、ただただ底知れぬ恐怖に染まりました。


「……エルシア。この男の処遇は君に任せよう。……私の独占欲に従えば、今すぐこの場で塵にしたいところだが」


 カイルム様が私に視線を向けました。

 私は、少女を抱いたまま、ゆっくりと立ち上がりました。

 私の指先からは、かつて王都で忌み嫌われた、けれど今は誇り高い「白氷」の魔力が溢れ出しています。


「……アハメド王子。貴方は、この子を『電池』だと言いましたね」


 私は、這いつくばる王子の前に歩み寄りました。

 恐怖で震える彼の眉間を、冷たい指先でそっとなぞります。


「……この子は、ただ暗闇の中で、誰かが手を伸ばしてくれるのを待っていただけ。私も、そうでした。……だから、貴方には少しだけ、その心地を知っていただきます」


「……凍りなさい。貴方のその傲慢な心も、他者を傷つけるために使われたその魔力も。……貴方はこれから、魔力を持たないただの人間として、この砂漠の熱さを知るのです。自分がこの子から何を奪ったのか、一生をかけて悔いてください」


 ――キィン。


 澄んだ一音と共に、王子の体内の魔力回路が、永遠に溶けない氷で封じられました。

 王族としての力を失い、ただの無力な男となった王子。

 それは、権力を愛する彼にとって、死よりも屈辱的な結末でした。


「……おわったの……? おねえさま……」


 腕の中の少女が、おずおずと顔を上げました。

 私は彼女に最高の笑顔を向け、その冷たくなった頬を、カイルム様から教わった「温もり」で包み込みました。


「ええ。もう大丈夫よ。……これからは、私たちが貴女の家族。……この広い世界の美しさを、二人でたくさん教えてあげるわ」


「……エルシア、気が早いな。……家族を増やすなら、まずは私との時間をしっかり確保してもらわねば困るぞ」


 カイルム様が背後から私と少女をまとめて抱き寄せ、その大きなマントの中に私たちを閉じ込めました。

 独占欲に満ちた、けれどこの上なく優しく温かい腕の中。


 地下の暗闇の中、私たちの周囲だけは、極光オーロラのような光に包まれていました。


 不浄の令嬢と呼ばれた私と、孤独を強いられたこの子。

 そして、私たちを救い出してくれた、不器用で重すぎる愛を持つ死神様。

 かつての私が、もう一人の私を取り戻した夜。

 砂漠の王宮を後にする私たちの足取りは、かつてないほど軽く、輝く未来へと続いていたのでした。


「……この国の砂の一粒まで、すべて私の氷の下で後悔させてやる」

有言実行、カイルム閣下の圧倒的な制裁……最高にスカッといたしましたわね!

エルシア様を「光」と呼び、彼女の邪魔をするものを「塵芥」と断じるその一途な狂気。

これこそが、私たちが待ち望んでいた「絶対的な安全基地」ですわ。


そしてエルシア様の、慈悲深いけれど容赦のない「魔力封印」。

力を奪われたアハメド王子が、これから砂漠の厳しい熱の中で、

自分が虐げてきた少女の痛みを知ることになる……。

最高に上品で、最高に「ざまぁ」な結末に、私の胸もスッといたしました。


救い出した少女、シエルちゃん。

エルシア様を「おねえさま」と呼ぶ彼女を加え、

物語はより賑やかで、より「家族の絆」を深めるフェーズへと移ります。

ですが、カイルム閣下の独占欲、早くもシエルちゃんにまでライバル心を燃やしているようですわよ……?


もし、閣下の「業火の蹂躙」と、三人の新しい門出に「おめでとう!」と思ってくださったなら……

ぜひ【ブックマーク】の継続と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、

新しい家族の旅路に「祝福の極光」を贈ってあげてくださいな。


皆様の評価が、エルシア様の氷をさらに清らかに、

新しい家族を守る「最強の盾」になりますわ。

次回、第52話「砂漠の女王の目覚め。感謝のオアシス」でお会いしましょう。

(※サバナ王国の民たちが、ついに真の救世主に跪きますわよ!)

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