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氷の追放令嬢、死神辺境伯の熱に溶かされて幸せになります ~捨てられた聖女の調和魔法で、極北の地を宝石の都へ~  作者: 花菱エマ


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第49話:熱帯夜の秘め事。カイルム閣下の解けない腕

「……エルシア、やはり暑いな。その薄絹を今すぐ脱がせて、私の冷気で直接冷やしてやりたい」


 サバナ王宮、賓客のために用意された離宮。

 窓の外では砂漠の熱帯夜が、ねっとりと重い風を運んでいます。けれど、この部屋だけはカイルム様が放つ清冽な魔力によって、ノースウォールの早春のような涼やかさに保たれていました。


 カイルム様は、天蓋付きのベッドの上で、私を背後から包み込むように抱きしめています。

 大きな掌が私の腰をなぞり、熱い吐息が耳元を掠める。……その独占欲に満ちた愛撫が、砂漠の暑さとは別の「熱」を、私の内側に呼び起こしていました。


「ふふ、カイルム様。……そんなに強く抱きしめられては、逆に熱くなってしまいますわ」


「構わん。他の誰にも、君の肌が放つ輝きを見せたくないのだ。……昼間のオアシスでの君は、あまりに神々しすぎた。……跪く者たちの瞳の中に、君を独り占めしたいという醜い欲望が混ざっているのを、私は見逃さなかったぞ」


 カイルム様が、私の項に唇を押し当てました。

 不機嫌そうに、けれど愛おしくてたまらないというように、深く。

 王都ルミエールで、誰からも必要とされず、透明な存在として扱われていた私。そんな私を、彼は「世界の誰の目にも触れさせたくない」ほどの至宝だと言ってくれる。


(……ああ。私は、この人の腕の中でだけ、自分の名前を愛せるようになったのね)


 私は振り返り、彼の逞しい首に腕を回しました。

 灰色の瞳に映る、自分自身の幸福な顔。私はそっと、彼の唇に誓いの口づけを落としました。


「……ありがとうございます、カイルム様。……でも、今夜は少しだけ、私を自由にしてくださる? あの水面に映った少女のことが、どうしても気にかかるのです」


 カイルム様の瞳が、一瞬で「死神」の鋭さを取り戻しました。

 

「……ああ。アハメド王子のあの狼狽え方、そしてこの王宮の地下から漏れ出る、君に似た不自然な魔力。……あやつらは、何かを隠している。……君と同じ血を引く者を、この地の生贄にでもしているのか」


「……もしそうなら、私は絶対に許しません。……行きましょう、カイルム様。私の氷が、彼女を呼んでいるのです」


 私たちは、歓迎の宴の喧騒を魔力で欺き、静かに離宮を抜け出しました。

 

 砂漠の夜は、黄金色から漆黒へと塗り替えられています。

 王宮の地下へと続く階段は、昼間の熱気が嘘のように、深く、重い『氷の沈黙』に包まれていました。


「……カイルム様、見てください。壁が……凍っていますわ」


 松明の光が照らし出したのは、砂岩で作られた壁を侵食するように広がっている、青白い氷の結晶。

 それは私が作ったものではありません。

 絶望と、孤独と、そして「誰かに見つけてほしい」という悲痛な叫びを孕んだ、歪な魔力の痕跡。


 進むほどに、空気は重く、鋭利な冷たさを増していきます。

 カイルム様は、私の手を一分たりとも離そうとはせず、むしろ自身の魔炎を私の周囲に巡らせて、異質な冷気から私を守ってくださいました。


「……私の隣を離れるな、エルシア。……この奥にいるのが何者であろうと、君に触れようとするなら、私がこの地の底ごと灰にしてやる」


「……ええ。心強いですわ、私の騎士様」


 やがて、私たちは最深部の巨大な石扉に辿り着きました。

 アハメド王子が「禁域」として固く閉ざしていたはずの扉。

 けれど、私が手を触れた瞬間――。


 パキパキッ、と氷が砕ける音がして、扉は私を招き入れるように、音もなく開きました。


 扉の向こうに広がっていたのは、砂漠の王宮とは思えない、巨大な『氷の牢獄』。

 そして、その中央。

 巨大な水晶のような氷柱の中に閉じ込められていたのは、白銀の髪を揺らし、まだ幼い面影を残した一人の少女でした。


「…………っ、あの子……!」


 少女の胸元には、私が母様から受け継いだものと対を成すような、青い宝石のペンダントが輝いていました。

 

 水面に映った幻影よりも、ずっと白く、透き通った姿。

 その少女が、ゆっくりと、凍てついた睫毛を震わせて目を開けたのです。

砂漠の地下に広がる、あまりに美しく、残酷な氷の牢獄。

閉じ込められていた少女は、エルシア様と同じ「銀髪」と「ペンダント」を持っていました。

これは偶然か、それとも母イザベラ様が残した、もう一つの「運命」なのか……。


それにしても、潜入前のカイルム閣下の甘やかしぶり、ご馳走様でしたわ!

砂漠の熱さえも「冷気」で遮断し、自分だけの愛で満たそうとするその独占欲。

エルシア様がその腕の中で感じる「心の安全基地」が、読者の皆様にも届いていますように。


いよいよ物語は、少女の救出と、サバナ王国の「隠蔽された闇」との対決へ。

エルシア様は、自分と同じ血を引く(かもしれない)少女を救い出せるのか!?


もし、閣下の「君を離したくない」という熱い抱擁と、

地下に眠る謎の少女との邂逅に、ワクワクしてくださったなら……

ぜひ【ブックマーク】の継続と、下の【☆☆☆☆☆】の評価で、

エルシア様の「お姉様無双」に祝福の光を灯してあげてくださいな。


皆様の評価が、エルシア様の魔法をさらに輝かせ、

暗闇に囚われた少女を救い出す「最強の慈愛」になりますわ。

次回、第50話「白き亡霊の正体。砂漠に閉じ込められた少女」でお会いしましょう。

(※50話の記念すべき回。物語が最高潮に加速いたしますわよ!)

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