第14話:お披露目のドレスと、閣下の秘めたる独占欲
お披露目の夜会に向けて、城には王都から(正確には、カイルム様が無理やり引き抜いてきた)超一流の仕立て屋が呼び寄せられていた。
「……あの、カイルム様。本当に、こんなにたくさんの生地が必要なのですか?」
私の前には、海を越えて運ばれてきたという最高級のシルク、真珠の粉を練り込んだサテン、そして見たこともないほど繊細なレースの山が築かれていた。
王都にいた頃、私のドレスはいつも妹のベアトリスのお下がりか、使用人の服と見紛うような地味なものだった。こんなにも鮮やかで、輝くような布地を自分に合わせるなんて、いまだに足が震えてしまう。
「足りないくらいだ。エルシア、君の肌は雪のように白い。……どの色も君を引き立てるだろうが、私以外の男に見せるのは、正直に言って……あまり気が進まないな」
カイルム様は、私の隣に座り、私の肩に置かれた布地を指先でなぞった。
仕立て屋が、おずおずと提案をする。
「閣下、今王都で流行しているのは、デコルテを大きく開け、背中を大胆に見せるデザインでございますが……」
「却下だ」
カイルム様の声が、一瞬で零下まで下がった。
彼は私の肩を抱き寄せ、その大きな手で私の首元を隠すように覆った。
「肌の露出は最小限に。だが、エルシアの線の細さと、その気品ある立ち振る舞いが際立つデザインにしろ。……宝石は、北領で採れた最高品質の『青氷石』を散りばめる。彼女の瞳と同じ、深く、吸い込まれるような青だ」
「か、閣下……。そんなに宝石を付けたら、重くて歩けなくなってしまいます……」
「大丈夫だ。歩けなくなったら、私が一晩中抱いて運ぶ」
「……っ、そんな……!」
真顔でとんでもないことを言う彼に、私は顔を真っ赤にして俯いた。
けれど、カイルム様は意地悪く微笑むと、私の耳元に唇を寄せた。
「エルシア。君が自分を『ゴミ』だと思っていたあの頃、君に触れようとした者たちは皆、君の価値に気づかない盲目だった。……だが、今は違う。君は、世界で一番価値のある、私の聖女だ。その事実を、夜会に集まるすべての人間の脳裏に刻み込んでやりたい」
カイルム様の手が、私の頬をそっと持ち上げる。
彼の灰色の瞳には、私を慈しむ熱と、そして他人に一切の隙を見せないという、剥き出しの独占欲が渦巻いていた。
「……私、緊張します。皆様の前で、ちゃんと『夫人』として振る舞えるでしょうか」
「君がそこに立っているだけでいい。……それ以上、誰かに微笑みかける必要もない。君の笑顔は、この部屋で、私だけが見ていればいいのだから」
そう言って、カイルム様は仕立て屋がいることも構わず、私の手の甲に深く、刻印を残すような口づけを落とした。
選ばれたのは、深く澄んだ「氷河の青」のドレス。
私が動くたびに、魔法の氷の粉が舞うような、幻想的な一着になるという。
鏡の中に映る自分は、まだ少し自信なさげだけれど。
カイルム様が見つめてくれるから、私は私を、もう少しだけ好きになれる気がした。
王都から届く「絶望」の知らせをよそに。
北の城では、世界で一番美しい「氷の蝶」が、羽化の時を待っていた。
「歩けなくなったら、私が一晩中抱いて運ぶ」
カイルム閣下の過保護ぶり、いよいよ極まってまいりましたわね!
露出を嫌がり、宝石で「俺のもの」と飾り立てる……。
そんな重すぎる愛に、エルシア様が少しずつ絆されていく様子、
皆様も「もっとやれ!」と思ってくださったのではないでしょうか。
自分に価値がないと思い込まされていた令嬢が、
最高のドレスと、最高の愛で、本物の「宝石」へと変わっていく。
これこそが、自己再生物語の真髄ですわ。
さて、次はいよいよ「お披露目夜会」の本番。
そこには、王都から「最後の命乞い」に訪れるあの人物の影が……。
カイルム閣下が、愛する妻をどう守り、どう見せつけるのか。
もし、閣下の独占欲に「キュンとした!」と思ってくださったなら、
ぜひ【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価で、
エルシア様のドレスに、さらに輝く宝石を贈ってあげてくださいな。
皆様の評価が、夜会の灯火となり、物語を最高潮へと導きます。
次回、第15話「氷華の舞踏会と、跪く元婚約者」でお会いしましょう。




