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第31話 キョーワの町へ

「聞きたいことがあるんだけど……」


「いいぞ。出来る限り答えるぞ」


 初代日向国王の日記には、元の世界に戻る方法が書いてあるかもしれない。

 わざわざ時間をかけてこの世界を回らなくても済むなら、その日記を見るためにまっすぐ日向へ向かう方が早い。

 ならば蒼に協力するのが良いことは分かったが、そうなると気になることがある。

 それを解消するために凛久が話しかけると、蒼は快く返事をした。


「蒼の味方は何人位いるんだ?」


 説明を受けた感じだと、蒼が日向に戻るとなると確実に荒事に発展する。

 出来る限り国が乱れないように事を済ませるためには、ある程度の人数で蒼の兄を捕まえるか暗殺するしかない。

 協力する以上蒼の協力者の人数が知りたい。

 そう考えた凛久は、蒼の味方の人数を尋ねた。


「……この淀牙率いる御庭番衆以外私に付いている者はいない」


「……総勢何人だ?」


 凛久の問いに対し、蒼は少し間を置き言いにくそうに答える。

 出来る限り答えると言ったが、聞かれたくない質問だったようだ。

 嫌な予感がするが、聞いておかないわけにはいかないため凛久は蒼へ追及した。


「……25人」


「少なっ!!」


 蒼は少し小さい声で返答する。

 答えを聞けば、凛久がどういう反応をするか分かっていたからだろう。

 その予想通りとでもいうように、凛久は思わず大きな声を出してしまった。


「そんな少数でどうやって勝って言うんだ?」


「申し訳ない……」


 少ないにも程がある。

 王位についたどちらかの兄を暗殺するために隙を窺って計画を練ったとしても、その人数では無理がある。

 そのことを指摘すると、蒼もそれが分かっているらしく恐縮したように謝ってきた。


「そこで君の知識だ。何かしらの方法があるはずだ」


「そんな無茶苦茶な……」


 この世界に転移してきて、凛久は何のチート能力も持っていない。

 持っているとしたら、この世界にはない知識だけだ。

 期待してくれているようだが、その知識ですらどこまで役に立つのか、凛久には分かったものではない。


「暗殺で今思い付く事といったら、遠距離からの銃撃くらいかな……」


「あのゴブリンロードに入れた武器ね?」


 少人数でも暗殺をする方法はなくはない。

 どんなに警備を重ねていても、僅かに隙ができるはず。

 その隙をついて暗殺するのなら、凛久が思いつくのは銃による攻撃しかない。

 長距離から狙えば相手に気付かれないだろうし、もしも失敗しても逃げることも可能だ。

 銃撃と聞いて、蒼もなるほどと言うような反応をする。

 そこにいる風巻から聞いたのだろうか。

 銃のことを理解しているようだ。


「ゴブリンロードに一撃入れたあの武器なら暗殺も可能かもしれないけど……」


「けど……?」


 蒼程強ければ難しいかもしれないが、蒼の兄たちはそこまでではないはず。

 それならなんとか銃によって暗殺できるはず。

 蒼も一瞬納得したようだが、すぐに不安げな表情へと変わった。

 凛久は、その蒼の不安材料が何なのか気になり問いかけた。


「警備されている中を暗殺するなら、ゴブリンロードの時以上の距離から仕留めないとならない。そうなると威力を上げないとならない」


「あぁ、そうだな」


 ゴブリンロードを撃った時は、5~600mくらい離れた距離からの一撃だった。

 暗殺をするとなると、護衛にバレないようにもっと離れた位置から攻撃しなければならないし、距離が遠ければ遠くなるほど威力を上げないとならない。

 蒼の尤もな意見に、凛久は納得する。


「言いにくいが、今の凛久では実力が足りない」


「……たしかに」


 ゴブリンロードを撃った時より距離を取りながら威力を落とさないとなると、魔力による強化をしないとならない。

 魔力により威力を上げて、微細なコントロールで弾丸を打ち出す。

 つまり、魔力の量とコントロールが必要になる。

 そうなると蒼の言うことは正しいため、凛久は素直に頷いた。


「そのために、私からの提案なのだが……」


「あぁ、何だ?」


 問題の解決に、蒼は何か考えがあるらしい。

 そのため、凛久は耳を傾ける。


「私がまた凛久を鍛えよう」


「えっ? 訓練なら一通り受けたと思うが?」


 この世界に来てすぐ、剣術の型などの基礎的なものを蒼から教わった。

 まだ他にも教えてくれるということなのだろうか。


「この世界では生物を殺すと僅かに能力が向上する。だから教えるというより、魔物を倒して強化するんだ」


「それは良いんだけど……どこで?」


 魔物を倒すと能力が向上するというのは、以前の訓練時に教えてもらっている。 

 しかし、能力向上といっても、 強力な魔物でも倒さない限り急激に成長するというものではない。

 それは、教えてくれた張本人である蒼も分かっているはずだ。


「アカルジーラ迷宮だ。イタヤなんかよりも深いし強力な魔物がいる」


「アカルジーラ迷宮」


「南の大陸にあるサーラン王国。そこにある地下迷宮だ」


 東西南北の大陸のうち、凛久たちが現在いるのは西の大陸。

 最終的には、東の大陸の側にある島国日向へと向かう。

 その日向へ向かう途中、アカルジーラ迷宮へ寄っていくようだ。

 再ダンジョン化した地下都市イタヤで迷宮ダンジョンは経験したが、所詮は上層部で弱い魔物を倒していたに過ぎない。

 そのため、凛久は大して能力向上はしていないだろう。

 能力を向上させるためにアカルジーラ迷宮が良いというのなら凛久としては頷くしかなかった。


「じゃあ、予定通りキョーワの町へ行くで良いのか?」


「あぁ」


 南の大陸に向かうなら、キョーワの町から船が出ている。

 蒼個人なら最短距離でキョーワの町へと向かえるが、凛久には無理だ。

 そのため、凛久たちは予定通りのルートでキョーワの町に向かうことにした。


「そうだ!」


「んっ? どうした?」


 改めてキョーワの町へと向かう凛久たち。

 その途中、凛久は何か思いだしたかのように足を止めた。


「蒼って姫様だろ? 俺ってこのまま呼び捨てで良いのか? 敬語とか使った方が良いか?」


「私はこのままで構わないよ」


 蒼が女性ということは知っていたが、さすがに姫様だとは思わなかった。

 そうなると、今のようにタメ口で良いのだろうか。

 そう思って問いかけるが、蒼は気にしないようだ。


「…………」


「……蒼様が許可を出しているなら、我々も文句はない」


 蒼は良くても、風巻などの配下は良く思わないのではないのないか。

 そう思って蒼の背後を歩く風巻に目を向けると、現在のままで良いとされた。

 しかし、その表情は蒼が言うから仕方ないというかのようなものに見える。


「じゃあ、このままで……」


 風巻が我々ということは、彼の配下の者たちも了承させるということだろう。

 一応彼らの了承も得られたようだし、凛久はこのままの態度で蒼と接することにしたのだった。



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