転生
流石に一話だけ投げても仕方がないので連投することにしたらしいです。
「ん、うう……」
「っ! 意識が戻ったのねっ!?」
うすぼんやりとした意識。
ゆっくりと開いた視界に、心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる女性が映り込んだ。
「……おかー、さん?」
「アディっ! 良かった……!」
自然と口を付いてでてきた言葉に、『母』が涙ぐみながら抱きしめてくる。
ちょっとした息苦しさの中、目まぐるしい勢いで情報が整理されていくのを感じた。
どうやら、無事に転生は成功したらしい。
けど、ちょっと、眠いかも……
一気に飽和しそうになる情報量に耐えかねたのもあったのだろう。
私は、温かな胸の中で再度眠りについた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
さて。
ハッキリと意識が戻ってから、もう四日になる。
はじめは膨大な情報に押し潰されそうになったけれど、すぐに慣れた。
まず結論から述べると、私は転生に成功したらしい。
無事、前世の……大魔女であった頃の記憶を持って、今を生きている。
まぁ、細かい記憶の欠如はあるかもしれないけれど、そこは気にしても仕方が無いだろう。
長年研究を続けた魔法の知識と、目覚める前の記憶がしっかり残っている時点で十分だ。
アデル。それが今世での私の名前。四歳だ。
まだ兄弟は居らず、父ダリウス母カティアとの三人家族。
両親ともに元冒険者なんだけれど、結婚を機に引退して田舎の一軒家で暮らしている。
子供の目からしても2人はかなり村の人に慕われていて、日頃から良好な関係を築いているらしい。
『私』の印象としても、お父さんとお母さんは仲睦まじく、そして娘にも優しい。
うん。ここまでは理想って感じだね。
後は魔法関連。だけど、これはゆっくりといこう。
奇跡的に勝ち取った二周目。無理をしすぎて大失敗したらお話にならないから。
五歳になったら、基礎訓練でもこっそり始めようかなぁ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
五歳になった。
前世では物心ついた頃には両親がいなかったから、私にとっては実質これが初めての家族。
優しいお父さんお母さんに我ながら呆れるくらいに甘えて甘えて甘え倒して、思う存分親交を深めた。
えへへ。好き放題甘えられるのは幼少期の特権だよね。
そういえば、転生に伴って身体に引き摺られているのか分からないけれど、結構思考が幼くなっている気がする。
時折こうして冷静? に振り返ってみると、あれ、私こんな感じだったっけかなーって程度の話だけど。
ま、二度目の人生なんだし多少はそりゃ変わるよね。
それに、前世ではできなかった分、沢山の人と交流を深めたい、色んな人と仲良くなりたいって思っているから丁度良いや。
今世の目標は友達100人! それでいこう!
さて、残るはある意味一番肝心、魔法のお話だ。
まぁ、転生が成功しちゃった時点で、実はそこまで前世のような『大魔女』にこだわりは無い。
温かい生を得られた。それだけで充分。最悪、素質が無かったところで最低限は訓練で身につくからね。
無理をせず、友人を作り、交友を大切に。願わくば、あちこち世界を見て回りたい。そんなところかな。
おっと、はなしがそれた。
五歳になったことだし、魔力の基礎訓練を始めても良い頃合だろう。
高度なことや、実際に魔法を発動してみる……ということはしない。あくまで体内に魔力を循環させ、扱いに慣れさせていくイメージ。
前世通りだとするならば。魔力量は素養と、訓練どちらも非常に重要。それも、幼少期の訓練は将来の魔力量に大きく作用する。
と言っても、幼過ぎる頃に魔力を高めても身体が耐えきれないし魔力が暴走しやすくなるしで、一般的に英才教育を施すなら最速でも5-6歳からと言われていた。
私の知識と経験なら、無理をすれば4歳頃から始めても良さそうだったけど……そこは無理をしないと決めたから。
五歳でも、かなり早いくらい。充分さ。
因みになんだけど、魔力の素養は殆どが遺伝だ。たまーに突然変異的に魔力がバカ強い子が産まれることもあるけれど、基本的には両親の影響を大きく受ける。
まぁ、当然といえば当然なんだよね。
魔力に強く馴染んだ肉体の両親から産まれた子供はそりゃ魔力に馴染みやすいだろうし、逆にほとんど触れたことがないような親ならば、子供も魔力との縁は薄くなるって話。
その点で言えば、私の今世は物凄く恵まれているかなー。
五歳に入ってくる知識じゃ完璧にとは行かないけれど、お父さんお母さんともに相当に優秀な冒険者だったみたいだから。
それなり以上に魔力を扱えるようになれば、相手の魔力量もある程度読めるようになる。今はそれがかなり楽しみだったりする。
両親の優しさも強さも疑ってはいないけれど、それを実感できるならしてみたいよね。
おっと、また話題が逸れちゃった。
早速魔力の練習……まずは基礎の基礎、瞑想から始めていこう。
完全に探り探りでやっても良いけれど、もし万が一別世界だったり長い年月が立っていたりで法則が異なっても困る。
焦るものでもないし、ここは教導本でもちゃんと読もうか。お父さんの書斎にそれらしい本があったはず。
え?字は大丈夫なのか?
ふっふっふ。私を甘く見てはいけないよ。お手伝いをしながらも、お母さんにせがんで簡単な読みなら既に学んでいるのさ……!
努力し続けてきたしこれからもきっちり努力はする子。今世も魔女になれるといいね。
ブクマ及び評価ポイントは活力になり作者がぴょんぴょんします……!!