ソレイユ
合格発表の場、お嬢様っぽい人に絡まれた!
「……11番、と聞こえたような気がしたのですが」
絞り出すような声に、ギギギ……と音が出そうなほどの速度で振り返る。
仁王立ちのような格好で、私を見下ろす姿が目に飛び込んできた。
「……はい。私が11……です」
「……そう、ですの。貴女が」
恐る恐る答えたら、彼女はすっかり黙りこくってしまった。
こ、これ、正直に答えない方が良かった!?
……でも、いま誤魔化しても、絶対すぐにバレるよね。
パッと見の直感が、素直に答えるべきだと告げていたんだけど。早まった…………?
「…………貴女」
「ひゃいっ!」
「…………お名前は?」
「は、はいっ、アデル、です」
じっと見詰められて、思わず萎縮する。
彼女はズンっと一歩踏み込んできた。
「……ソレイユよ。
次は、負けないんだから」
「……! うんっ!」
ふんっと鼻を鳴らして、女の子──ソレイユは立ち去ってしまった。
彼女の後ろ姿を眺めながら、小さくガッツポーズする。
やった! 一瞬びっくりしたけど、友達二人目ゲットだっ!!
◇◇◇◇◇◇◇◇
さて。合格した私は、ぱぱっと諸々の手続きを済ませた。
といっても、たいした作業もなかったけどね。
そして、今日のうちに着替えを何着か購入して、多少の生活用品と共に寮に運び込んでおく。
早速、今日から使って良いらしいんだけど、なんと一人一部屋だった。太っ腹だね。
一通りの用事が終わった後は、ひょこっとギルドに顔をだす。
夕方で、そこそこ賑わっている段階だったけど、どうやら皆、私が報告に来るのを待っていたようで。
無事、特待生として合格したことを告げると、歓声が爆発。そのまま大宴会という運びとなった。
私も勿論参加させてもらって、応援してもらったりバシバシ背中を叩かれたり。
いつまでも騒ぎそうな流れだったので、流石に遅くなる前に抜け出したけどね。
学校という制度もあり、更にそもそも登録が16歳からである以上、ギルドにとって子供はあまり馴染みが無い。
そんな中、剣聖ダリウスの実の娘が冒険者を志して父親と一緒にちょくちょくギルドを訪れていた……って時点で、実は私が思っているより遥かに彼らには期待をされていたらしい。
そして、15歳になった今。一人でこの街を訪れ、本当に入学を確定させたことで先輩方のボルテージは最高潮。
これでこの街の将来は安泰だの、何かあったら頼ってくれだの。色々な言葉を掛けてもらってしまった。
ところで、剣聖ダリウスってなに? 私、お父さんから何も聞いていないんだけど??
寮に帰った後は日課の軽いトレーニングをして、就寝。
そういえば、授業……というか学校の始まる時期なんだけど、合格発表から一週間後だって。
まあ、そうだよね。引っ越しとか諸々準備することもあるだろうから、配慮しないとね。
翌朝。いつも通りの早朝に起床した私は、日課のルーティンをこなす。
瞑想と、柔軟、筋力トレーニングだね。
さて次はランニングだと部屋の外に出た瞬間、不意に隣の部屋からでてきた女の子と目があった。
「あ、ソレイユちゃん! おはよう!」
「ちゃん呼びですのっ!?」
「せっかく友達になったんだし、さんよりは良いかなって」
「いつ、わたくし達が友達になりましたかっ!?」
「え? 名前教えあったんだしもうお友達でしょ?」
にっと笑ってみせると、彼女は面食らったような顔をする。
「こ、これがコミュ力というやつですの……?」
「? ソレイユちゃん?」
なにやらブツブツとつぶやき始めたソレイユちゃん。
訝しんだ私が呼びかけてみると、今度はキッと睨むような表情になった。
「こ、この際、友達でもなんでも構いませんわ」
ただしっ! っと彼女は私に指を突きつけてくる。
「わたくしたちは、ライバルであるということもお忘れなく。
いつまでも負け続けるつもりはありませんわよ!」
「うん! こっちこそ望むところ!」
「ええ。わかってくれれば良いのですわ。
……それで、こんな時間からどこに行くつもりだったのかしら。みたところ、明らかに外出着って感じですけれど」
「ん? 早朝トレーニングの一環だけど」
「トレーニングの一環」
「うん。瞑想とか柔軟とかは終わったから、あとは軽く走ってこようかなって」
「……わ」
「?」
「わたくしも行きますわぁ!!!」
そう叫ぶと、部屋の中に駆け込んでしまった。
呆気に取られていると、僅かな合間にまた部屋から飛び出してくる。
先程までの部屋着っぽいものとは異なり、今度は外で運動できそうな格好。
「……待ってくれていたこと、感謝致しますわ」
「いや、それは全然構わないし、仲間ができるのは素直に嬉しいんだけど。
……かなりきついとおもうけど、ホントに来る?」
「アデルがこなしていることを出来ませんと、ドンドン差が離れていくだけですわ!
それに、私を甘く見ないでくださいませ。根性だけは誰より自信ありますわ」
そう言って、獰猛な笑みを浮かべるソレイユちゃん。
私も、思わず表情が緩んだ。
「うん。そう言うなら。良いよ、一緒にやろ!」
ひょんなことから、トレーニング仲間が出来た瞬間でありました。
えへへ。学校に来てよかったなぁって早くも思うよ!
一応、距離もペースも半分くらいにはしたんだけど、終わった後の彼女がどんな状態だったかは言わないでおいてあげよう。
お嬢様魔改造の始まりである(無自覚
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