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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
其れは、紅く燃える強者の大陸
218/237

203 先行通知

 試合が終わった後、受付付近では参加者への報酬の手続きが始まっている。聞けば、トーナメントとは違って多くの順位賞が無いので参加賞並びに活躍に応じた報酬は試合が終了した時点で自動で払われているらしい。其れでも手続きが行われているのは条件を満たした参加者に追加報酬が発生するのだとか何とか。その条件は"最後に生き残った"というものに加えて毎回ランダムで決められる隠し条件というものも存在するらしい。条件というのだから特定スキルを数回使ったとかなのだろう。


「おおっ、こんなの貰えるの?」


 そしてその隠し条件を満たしていたらしい"Akari"は追加報酬を受け取りに行ってはそんな事を言っていた。

 同じく参加していた"わんたん"は特に条件を満たしていたりは無かったようで観客席から戻った私たちと直ぐに合流した。追加は無かったものの其れでもそこそこの報酬はあったらしい。


「…それ何?」

「参加賞で貰ったアクセサリー。配布なだけあってそんな良い効力は無いけど」


 そう言って"わんたん"は見ていた説明欄を閉じて参加賞のアクセサリーを仕舞った。良い効果は無いと言うが参加費を考えたら格安で手に入った上で賞金まで有るのだから良い方だろう。その賞金にしてもあまり活躍したとは言えなくとも其れなりの時間生き残ったからなのか、アイテム補充の費用には充分過ぎる額が手に入ったらしい。


「それにしてもすっごいハラハラした」

「周りみんな敵ですからね」

「右見ても左見ても襲ってくるから全然余裕が無かったよ!」


 そういうルールなのだから仕方が無いだろう、などと思いながら話をしていれば、追加報酬を貰いに行った"Akari"が戻ってきた。その手には追加報酬の品であろうアイテムが存在した。


「おかえり。追加報酬何だったの?」

「じゃーん、巻物貰っちった」

「良いなー!」


 見せてきたのは、使用すればランダムでスキルを獲得出来る【秘伝の書】シリーズのアイテムだった。上級の物では無いようだが其れでも有り難いものである。

 "Akari"たちのやり取りを見た他の人たちも巻物等が手に入ると知って少しやる気を出していた。まだ戦力が整っていない者にとっては手に入れておきたいものだろう。


「追加報酬ってそんな物もあるのね」

「みたいだよ。そもそも条件が毎回違う上に隠されてるから良い物が用意されてるみたい。私の後に貰ってた人はエレメンタルオーブのセットだったし」


 どうやら隠し条件という運試し要素を含んだ形式なだけあって追加報酬に指定されている物は其れなりにレアリティの高いもののようである。狙って条件を満たせない上に貰える物もランダムなようであるので、貰えたらラッキーぐらいの考えでいた方が良いだろう。

 ちなみに今更だけど"Akari"が貰った参加賞は鉱石だった。参加賞に関してもランダムなようだ。


「あ、終わったみたいだね」


 先程よりも早く移行作業が済んだようで受付付近に浮かぶアイコンが次のものへと切り替わった。だけど参加者募集は開かれない。何か問題でも起こったのかと思えば、アイコンの場所に時間が表示されているらしく、その間はコロシアム全体が休憩時間のようである。プレイヤー側からすれば準備中とあまり変わらない感じではあるけれど、再開時間が判明しているからなのかプレイヤーたちの動きがはっきりしていた。


「私らも街でも見に行く?」

「賛成!」

「そうね。此処に居ても出来る事もないし」

「アー」


 他のプレイヤーが立ち去っていくように私たちもコロシアムを後にして街へと向かう事にした。


 コロシアムから出れば、時間も経って空が暗くなり始めていた。そもそも炎帝領域の中ということで届く光が淀んでようになっているので余計に暗く感じる。だけど洞窟内にあった娯楽都市と比べれば分かり易い方だろう。


「そろそろ休める場所を探さないとね…」

「其れならコロシアムの陰とかでも良かったんじゃない?探せば丁度良いスペースぐらい有るんじゃない?」

「…潜伏?」

「安心出来ないから却下で」


 ログアウト自体は何処でも出来るとはいえ、そんな場所で出入りするのは気が引ける。急いでいるのなら兎も角、時間はあるのできちんとした場所を探した方が良い。その方が問題も起こりにくい筈。


「となれば宿かぁ。宿なら向こうの辺りじゃない?」

「そういえばそんな事を言ってる人も居ましたね」


 噂を頼りに街の方へと歩いて行く。日が沈み始めれば同じようにログアウト場所を確認しておこうという者も居るのでそういう流れも見ておけば宿の場所も薄らながらでも分かってくるだろう。


 そんな軽い気持ちで街の中を歩いていれば、ふと視界の隅に何かが出ている事に気付いた。メッセージが届いている表記だ。他のメンバーには届いているような反応は無いのでお知らせという線は薄い。送ってくるような相手の殆どは現在共に居るのでそれ以外で唐突に来たと言う事は急用なのだろうか。


「…あ、あの辺りで人の出入りがある」

「じゃあちょっと見に行ってみようか」


 "Akari"たちが近くにあったそれらしき建物に様子を見に行った。全員で行かなくとも良い気がしたのに加えて直ぐに戻ってくるだろうから、私は入り口の外で先程のメッセージを確認する事にした。

 ウインドウを開いて呼び出したそのメッセージは今迄出会ったプレイヤーの誰からのメッセージでは無かった。どちらかと言えば運営に近い。だけど自分に届いて他の仲間に届いていない運営サイドからのメッセージ。

 そのメッセージにこのような事が記されていた。




―――――――――――――――――――――――――――



従者を持つ者に先んじて伝える。


近い未来、妾らは予てより準備していた宴を開く。


その宴は以前のような限られた者だけを招くものでは無い。大勢のものを迎えての宴となるじゃろう。


時期が近くなればまた知らせが来るじゃろうが、手掛かりを提示してやろう。



"宴は平等な地から始まる。"



参加を待っておるぞ。



―――――――――――――――――――――――――――




「アー?」

「どう見ても予告ね…」


 メッセージの内容はどう見ても予告だった。其れも公式発表などよりも早いであろう宴の予告。そしてその宴も前回のような集会ではなく大掛かりなイベントであると読める。

 メッセージの差出人は当然ながらあの存在であると分かるが今迄と違って《《妾ら》》と単身では無さそうな事が気になる。大掛かりだから単身では出来なかったとかなのだろうか。


「それにしても変なヒントね。"平等な地"なんて」

「アー」


 今迄ならあの差出人は決まって森の中に居たのだけど、このヒントからして今回は森の中とは限らない。イベントに相応しい場所でも有るのだろうか?

 気になる部分は多いが、時期が来れば改めて情報が来るようだから其れを待つ事にしよう。今から急いでその場所に向かった所で肝心の時期が何時になるか分からないからね。


「何を見ているのですか?」


 メッセージに目を通し終えた頃には様子を見に行った面々も戻ってきた。そして気になるのは当然ながら私がウインドウを出してしていたこと。


「近々イベントが開催されるかもって話」

「マジで!?」

「そんな情報が回ってきたのですか?」

「…で、何時から?」

「其処までは記されてないわ。そもそも予告の予告みたいなものだからね」


 偶々縁があったから知る事が出来ただけでまだ非公式にも程がある情報だからあまり言い触らすと言うのも控えた方が良いだろう。"近い未来"がどの程度の感覚で言っているのかも怪しい所だから。


「其れで、そっちは何か分かったの?」

「残念ながら宿ではなかった。だけど変なものを見つけた」

「変なもの?」

「此れ此れ」


 そう言って見せてきたのはボトル型の容器。中には何も入っていないが代わりに蓋の部分にキャップでは無い物が付いている。どうやら建物内でこういった物が売られているようで、此れは其処から一つ買ってきたらしい。


「此れ、このままだと使えないけど領域の熱気に晒しておけば簡易的な投擲武器が出来あがるんだって」

「投擲武器?」

「要は爆弾」

「!?」


 改めて纏めると、このボトルには熱気を蓄える機能が付いていて此れを持ったまま領域内に居ればボトルの中に領域の熱気が溜まる。その溜まった熱気はボトルの中で凝縮されて高熱の炎へと変わる。そしてその状態のボトルを投げれば着弾地点に炎が上がると、そういう攻撃アイテムらしい。ある意味闘技都市と言うだけの事はあるアイテムである。

 ちなみに、少ししか蓄えていない状態でも攻撃に使えるらしいが、威力は溜めた分に比例しているようなので、勿体ないとしか思わない。


「もう一つ煙幕タイプもあったよ。面白そうだから買ったけど」

「買ったんだ…」

「さっきの収入で余裕だからね。けど、どっちもそこそこな値段で売られてたんだよね。直ぐに使えるわけじゃないのに」


 危険物だからじゃないだろうか。そんな事を思いながらもその話は終わった。爆発物を持ち歩いているという事に少々の恐れを感じながら私たちは街を行く。

 街を歩いてようやく宿の確認が出来た。試合などが行われるからなのか思ったよりも大きな建物の宿だった。目印となるものも有ったので次からは見つけ易いだろう。



 なお、まだ終わらない。






【独り言】

この日は色んな変化がありますなぁ。✿

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