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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
其れは、紅く燃える強者の大陸
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199 炎帝領域渡り その6

 猛竜地帯を彷徨っている私たちはとあるエネミーを発見した。そのエネミーは他とは違ってプレイヤーが付いていても気にせずに移動するという変わった個体。私たちは少しでも出口へと向かうためにそのエネミーを利用して大移動していた。


「も…もう限界…」

「待って!今はどの辺り?!」

「確実に入ってきた方向には近付いてる」


 他のエネミーが居ても飛び越えて突き進んでくれるお陰で戦闘は回避出来ているが、激しい上に力業だから如何せん疲労が溜まる。目的地に辿り着く迄等と言っていられない。


「…あ…この辺見たかも」

「大体風景一緒だと思うけど!?」

「お…え…?」

「どうしたの!?」


 問うてみたけれど返事が来る前に其れに気付いた。速度に流されかけていた自分の身体が少しずつではあるが地面に近付きだしていた。此れは自分の身体が重いなんて失礼なものではない。走っていたエネミーが速度を落とし始めている。


「っとっとっとと」


 速度を失って浮いていた足も地上に付いて今ではエネミーの速度に合わせるように動かしている。速度を落としたのは定期的に訪れる休息期間に入ったかららしい。突然の事では有るが、休息期間に入ってくれたお陰で吹き飛ばされる事無く安全に着地する事が出来た。飛び降りに関してどうしたものかと悩んでいたので助かった。


 速度が正常レベルまで落ちたので、限界な事もありエネミーに掴まっていた身体を離した。また直ぐに掴まれと言われても次は流石に耐えきれずに落ちるだろう。そんな事など知らずにエネミーはゆっくりと歩いていた。


「腕がだるい…」

「ずっと振り回されてて変な感じです…」

「酔うとまではいかないけど此れはくるわ…」


 思いの外エネミーでの強引な移動による影響が生じていて平衡感覚が軽くやられていたので、一先ず道の端の方に移動してから座り込んだ。


「で、どの辺りだろ此処?」

「狙い通りにはなったみたい」

「へ?」


 "先輩"がそう言って指で示した方向を見てみれば、其処には私たちが居る場所よりも濃い空気に満たされた場所があった。熱気に満たされた本来の炎帝領域である。少しでも近付けば良いものだったがどうやらあのエネミーはそれ以上に近付いてくれたらしい。ほぼ出口である。


「妨害は…来ない。今なら出られそうだね」

「その前に合流が先だけどね」


 出口への進路は確認できた。脱出を阻止する影も今の所は見当たらない。後は同じようにエネミーで向かってくる後続を待つのみ。合流地点としてもこの場所で良いだろう。

 待っている間にエネミーに集まられては困るので周囲に注意を払いながら、あのエネミーが来る迄待機。……冷静に考えてみれば、エネミーが来たら困るのにエネミーを待つとは何を言っているのだろう。


「何時来るんだろう?」

「その辺りの正確な予測は出来ないから分からない」


 後続を待つとはいえ其れが何時まで掛かるのか正直な所は把握出来ていない。何せエネミー有りきの移動だ、他にもあの手のエネミーが居るのなら案外直ぐに来る事も考えられるが、自分たちが使ったエネミーが一周するのを待っているのなら時間は掛かる筈である。とはいえ其処まで時間が掛かっているのなら自分たちで突撃していそうだけど。


「まあ、今は大人しく待ちましょうか」

「そうですね。合流地点をころころ変える訳にもいきませんからね」

「…っと、隠れて」


 会話の途中であったが、促されるままに息を潜めて陰に寄る。すると奥からエネミーがやってきた。だけど速度は其処まで速いと言う訳ではなくそもそもあのエネミーではない。向こうは此方に気付いている様子はなく、ただ彷徨っているだけという様子。このまま潜めていれば直に去るだろう。


「…行った?…」

「…まだ…」


 エネミーはまだ離れる気配は無い。気配に気付いたのかと少し疑いだしていると、唐突にエネミーが吠えた。


「…何?バレた!?…」

「…いや…あの様子は…」


 エネミーが唐突に慌ただしくなった。だけどその動きを見ている限り、此方へと来る様子はない。此方に気付いた訳では無かった。

 すると、エネミーは引き返すように去っていった。先程の反応は何だったのかと思っていると、エネミーが引き返していった方向には別のエネミーの姿が。


「え、やっぱり来た!?」

「違うけど…何する気アレ?」


 他のエネミーを見つけたエネミーはそのまま突撃していき、本能のままに相手に噛み付いた。噛み付かれた相手はもがくように暴れ出して周囲にも少しながらも影響を与えている。

 此方には影響の無い野性の戦闘であるが、周囲に影響を及ぼしているので此方も巻き込まれないという保証は無い。その上、戦闘が起きている場所は後続が来ると予想されているルートであるため、あのまま居座られては問題が起きる。


「彼処じゃ邪魔になる…」


 しかし、手を打つ時間は無かった。

 狙ったようにその戦闘へと向かってくる影が現れた。例のエネミーだった。乗っていたり尾に掴まっていたりとあのプレイヤーたちの姿も確認出来る。プレイヤーたちも前方の戦闘は認識しているようだ。


「前方にエネミー同士の戦闘がある。しっかり掴まっておけ!」

「おいマジかよ!突っ込むのか!」


 プレイヤーを乗せたエネミーは野性同士の戦闘を軽々と飛び越える。そして"Akari"が手を振っていたのを見つけてそのまま移動を続けた。例のエネミーが走ってくる。しかし今回は休息に入るような減速は見られない。このままだと通り過ぎてしまうが其れを察したようでプレイヤーたちは大胆に飛び降り始めた。


「っぐ…!」

「っっってぇぇ!!」

「痛たた…」


 …自分から飛び降りたのに投げ出されたような着地を目の前で繰り広げられて、本当に休息期間が有ってくれてよかったと思った。目の前の数人は無事では無いけれど。



―――オオォォォ!!



 目の前が割と悲惨な状況になっているが、気を遣っている時間は無い。正面から飛び越えた事でエネミーの一体が相手を投げ出して此方へと向かっていた。案内役も飛び降りる前から其れを承知でいるようで、ダメージを引き摺る事なく直ぐに行動に移した。


「出口はどっちだ?!」

「このまま向こうです!」

「其れなら行くぞ!このエリアから出てしまえば奴も諦めるだろう!」


 そうして合流して早々に出口へと移動を開始した。とはいえ皆の状態の事もあり普通に急いでも追い付かれるだろう。だから設置系のスキルで妨害を展開しながら急ぐ。他のメンバーも少しばかりの妨害を展開したお陰か、エネミーは素直に引っかかりその度に進行が止まる。その隙に急ぐことでどうにか私たちは猛竜地帯を抜けて濃い空気の中へと入った。


「もう追ってこない?」

「そうみたいね…」

「同じ領域内でもエリアが切り替わったようなものだからな。縄張りより外には来ないだろう」


 エネミーを振り切って一安心。と言いたい所であるが一つ忘れている事がある。戻ってきたと言う事は此処は本来の炎帝領域の中。となれば……


「…って、此処に入ったら熱ダメージが復活するんじゃん!!」


 HPを減少させながら"わんたん"が叫んだ。再びHPの危機が戻ってきた以上、野晒しでは居られない。運良く近場に遮蔽物のようなものを見つけた事を機に其方へと急いだ。立て直しは其れから


「そういえば此れが有ったか…」

「そうげんなりするな。もうすぐ街も見えてくる筈だ」


 フォローなのだろうが、領域の熱気のせいで遠くが確認出来ないので気休めになっているのか微妙な所である。


「予定よりは逸れたが、向こうに直進していけば到着するぐらいまでは来ている。もうすぐだ」

「そうか。ならとっとと行こうぜ」

「そうだね。流石にそろそろ休みたいからね」


 街がもうすぐと聞いた私たちは方向をよく確認し、早く落ち着きたいとばかりにその方向へと走り出した。




……此れで街が無かったら恨むだろう。





【独り言】

次の世代が発表されたばかりだけど私はヒスイ地方に行ってきます。



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