模擬戦三連発!前編
10年越しに、の書籍版を読みました。
原作とはかなり違っていて、Web版を読んだ人でも楽しめるような内容になっていました。
まだ読んでいない人は、今から本屋さんにゴー!
まあ、この更新は深夜十二時なんですけどね。
宴も竹縄、とまではいかなくとも、宴会も終わりが近づいてきた頃。
「よっしゃ!じゃあ今から移動するぞ!!」
何のために、とはいう必要は無いのだろう。
かくいう俺も、割と楽しみにしていた。
やって来たのは門を出たところ。登録試験をした場所だ。
結局、宴会に参加していた人達全員が来ている。
それに、賭けをしている者もいるようだ。
「あのアリスって子とユキって子は相当強いんだよ。だから、あの二人は勝つかもしれないんだ。ただ、ひも男は弱いから負けるはずだ!」
「なるほど、あの男は弱いのか……。なら俺は逆にあいつに銀貨十枚!」
「おいおい、ギャンブラー過ぎるだろ!」
「そうだぜ、負けに行く必要はねぇよ」
「いいや、俺はあの男を信じるぜ!!」
…………絶対に負けられねぇ。
ようやく、アリスとナゼルさん?の戦いが始まるようだ。
ナゼルさんが誰かわからないんだが、誰か教えてくれない?
観客席(席なんかある筈もないので地べた)で待っていると、少年の声が聞こえた。
「おっ、もうすぐ始まるのか!ってリョーガじゃねぇか!」
この無駄にテンションの高い男はシン少年だな。
「んー。お前も見学か?」
「そりゃな。せっかくの機会だからな」
「ところでシン、アリスの相手のナゼルって誰?知ってる?」
「お前……。はぁ、まあお前だからな」
なんだかよく分からないリアクションをされたが、ナゼルという人物については教えて貰えた。
ナゼルはこの街唯一のAランクで、魔法使いなのだそう。将来確実にSにいくと予想される優秀な男で、この街の冒険者で知らないやつはいない程に強いらしい。
そりゃシンくんが呆れるのも当然の事だな。
この街最強の冒険者の事を知らないと言ったのだから。
「アリス、行っておいで。きっと勝てるよ」
「うん!頑張るね!」
アリスを見送り、リングのように用意されているステージを見る。
アリスと逆の方向から一人の若い男がステージに上がろうとしていた。
「かったるいな……。なんで俺様がガキの相手をしなきゃならねぇんだよ」
かなり態度が悪い。それに、あの様子からして、かなり自分の実力に自信を持っているのだろう。
アリスには、是非あいつのプライドを砕いてもらいたい。
逆にアリスはワクワク、という言葉が似合う。
目を爛々と輝かせて、相手を待っている。
多分この状態のアリスは手加減がいつもより下手だろう。
プライドを砕いてもらいたいとは思っていたが……
南無三。
「先手は譲ってやるよ。かかって来い、ガキ」
ナゼルのその言葉から二人の試合は始まった。
アリスは無詠唱で【アイスジャベリン】を展開し、打ち出す。
しかし、
「その年で無詠唱できるのは凄いが、威力が足りねえな!」
と、ナゼルの結界に全て阻まれる。
「次はこっちだぜ。【ホーリーランス】!」
ナゼルは光でできた槍を展開する。
その大きさは通常の投げやり程度だが、密度がおかしい。かなり高密度の光子のようだ。
正直ここまで強いとは思っていなかった。
まさかアリスが負ける事はないだろうが、これは一体どう対処するのかな?
と、思っていた時期もありました、はい。
アリスの対処方法は想定外のものだった。
【ホーリーランス】がアリスに近づくと、段々とその速度が下がり、最終的にはアリスの目の前で止まった。
あれは神性魔法の応用力を活用した方法だろう。
水魔法の本質の一つである『減衰』だ。
【ホーリーランス】の推進力を『減衰』させて停止させたのだろう。
まっ、全部ソフィアの受け売りなんだけどね!
「これだけなの?じゃあアリスもいくね?」
「なっ!?何だよそれ!どうやって【ホーリーランス】を止めてるんだよ!?」
「んー?だってその魔法、単純だから」
「は?一体どういう――」
「いくね。【デルタボルト】」
青白い雷。それがアリスの手にまとわりつく。
その色が示すのは、複合属性。
水の性質と雷の性質を併せ持つ魔法である。
そしてアリスはナゼルに接近する。
「これで終わりなの」
雷がほとばしり、観客たちの視界を奪う。
視界が戻った時、そこに経っていたのはアリスだけだった。
「…………勝者、アリスさん」
レナさんが言う。
しかし、その場は静寂に包まれたままだった。
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