街についたぞー!
「さっきはすみません。つい興奮しちゃいまして」
恥ずかしそうに笑いながら説明する美人さん。
「いやいや、謝る必要はありませんよ。それよりそちらの方々は大丈夫ですか?」
そう、見るからに騎士風の男たちがやばい。体のいたるところから血を流しており、特に傷のひどい二人はこのままでは確実に死んでしまうだろう。
「正直あまり大丈夫ではないのだが、幸いここは街からも近い。急いでいけば何とか間に合うかもしれん」
そう答えたのは三人の中でも唯一無事そうだった男だ。あの強さといい、この男は倒れている二人の上司なのだろうか?
「それなら俺たちが治療しましょうか?」
正直このまま死なれたらかなり寝覚めが悪い。それくらいはしてもいいだろう。
「……できるのか?」
「はい、問題ありません」
「すまない、恩に着る」
治していいということなのでちゃっちゃとやってしまいますかね。
といっても、治すのはアリスに任せるけどな!!
「アリス~」
「わっかてるの!【リジェネレーション】」
アリスが魔法を発動すると、二人を光が包み込む。そして、時間が戻るかのように傷が治っていく。
その様子を目の当たりにした四人は呆然としていた。
「さすがアリスだな」
そういって頭をなでると、アリスは嬉しそうにはにかんだ。
******
この人たちに馬車に乗っていくように言われ、俺たちはありがたく乗せてもらうことにした。
ちなみに、アリスは俺の膝の上に座っている。これは人数オーバーで仕方なく、そう仕方なくやっているのだ!
「私はルノア・リベラ。この先にあるリベラの街の領主をしています。爵位は伯爵です。」
ふぁ、この人が貴族!?それはまたなんというか、ずいぶん意外だな。貴族なんてもっと人を馬鹿にしてくるような奴だと思ってたよ。
「俺は、ゴーズ・グルツェ。リベラの衛兵長兼ルノア様の護衛騎士長だ」
「俺はリョーガ・タナカです。こっちは、」
「お兄ちゃんの妹のアリスなの!」
「リョーガ君にアリスちゃんですね。それで二人はどうしてここに?」
「俺たちはもともと遠い国に住んでいたのですが、世界を回って来いと師匠に言われまして。それでまずはここに来ることにしたんです」
正直穴だらけの答えだと思うが大丈夫だろうか……
「そうですか、それは大変ですね。では、2人は冒険者になるのですか?」
あっ、普通にごまかせたわ。この人が領主でこの先のリベラの街は大丈夫なのだろうか?
「はい、そのつもりです」
「冒険者は危険な職業です。体には気を付けてくださいね。」
「もちろんですよ」
あれ?アリスは?あ、寝てる。まあ疲れてたんだろうな。街につくまではこのままにしておこうか。
そのあと馬車の中でリベラの街の話なんかをしていたのだが、ルノアさんの『私の王子さま』発言については、何も聞くことができなかった(その話をしようとすると、修羅の顔になった。怖かった)。
******
そして昼過ぎ。
「お、おお、おおおーーー!!!」
でけえー!すげー!すげーよ!!
たどりついたリベラの街はただひたすらすごかった。街の周囲は巨大な外壁で囲まれ、外壁の一部にある門には多くの人が行き来している。
「さて、この門をくぐれば、お別れですね。これは少ないですけどお礼です」
ルノアから渡されたのは、布の袋だ。お金が入っているのかな?
「何から何までありがとうございます。この恩は絶対に返します」
「いいえ、私は命を救われたのです。まだまだこれだけでは私が納得できないのですが……」
そうはいっても、俺たちはほんとに大したことはしてないからな…
「じゃあ、貸し一個ってことにしておいてください」
「……わかりました。では、今度こそお別れですね」
ルノアがそう言うと、馬車が走り出した。
ん?何か忘れてるような……あっ、盗賊放置したままだ……
******
「お~!すごいの!人がいっぱいなの!」
「こりゃすごいな……」
リベラの街の商店街は人でごった返していた。
日本の風景と比べても大差ないほどの賑わいだ。
「お兄ちゃん、これからどこ行くの?」
「まずは宿を取りに行こうか。ルノアさんによると、日暮れの宿ってところがいいらしいよ」
「じゃあそのあとはご飯食べるの!」
「そうだねー。じゃあ宿を取ったらそのまま食事に行こうか」
「やった~~♪」
お金に関しては、ルノアからもらった袋には、金、銀、銅貨五枚ずつが入っていたから足りないことはないだろう。
「ここが日暮れの宿かな」
たどり着いた宿はきれいでなかなかよさそうな宿だった。
「すみません」
と、俺は女将だろう恰幅のいい女性に声をかけた。
「はいよ、食事かい、それとも宿泊かい?食事は一人前銅貨五十枚、宿泊は一部屋一泊銀貨三枚だよ」
料理は普通の値段だが、宿泊料金安くないか?
でも、この世界ではそんなもんなんだろうな。
「あー、食事もいただけるんですか。アリス、どうする、ここで食べてく?」
「んー、ここで食べるの!」
「おっけー。ということで、とりあえず一週間の二人部屋での宿泊と食事を二人前お願いします」
「了解!」
運ばれてきた料理はステーキだった。程よく脂ののった肉はとても美味そうだった。
「おお!この世界に来て初めてのまともな食事だ!森の中でソフィアさんに手伝ってもらいながら作った料理も悪くはなかったが、本職が作るのはやっぱり違うよな!」
『まあ、どれだけ頑張っても、森の中にはまともな調味料がありませんからねっ』
あれ?ソフィアさん怒ってらっしゃる?
「お兄ちゃん!とってもおいしいの!!」
「あ、ずるいぞアリス!いつの間に食べ始めてたんだよ!」
さて、俺もいただこうかな!!
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