五層目
一通りのステータスアップの検証を終えたところで、そろそろ次のステップに進もうか。
現在、階層は四層目の攻略を終え、アイテムの回収もほとんど済んだところ。
やはりアイテムの回収に関しては、ステータスの取得によって使えるようになったインベントリの恩恵が大きい。
ただし、このインベントリも容量は無限ではないようだ。
家に貯めていた今までの収集品を突っ込んだところ、容量はほぼ満杯になってしまった。
まさか使えるようになってすぐにインベントリが埋まるとは思わなかった。
...いや、逆に『ダンジョンに存在するアイテムのほとんど』が収納できたと考えれば、十分に大きいのか。
ネットを見回しても、インベントリの容量不足を嘆く声は聞こえない。今のところ、アイテムを独占できた者だけが抱く贅沢な悩みだ。
とはいえ、今後ダンジョンの攻略を進めていけば、ドロップアイテムも道具も装備も増えていくはず。いずれ多くの人が同様の問題に直面するだろう。
今のうちに、対策を考えておかねば。
そんなわけで、些細な悩みはありながらも四層目までの攻略はほぼ完了した。
次に挑むは節目となる五層目だ。
***********
あらかじめ見つけておいた階段を降り、五層目に到達。
これまでのカタコンベなら薄暗く埃っぽい空気が漂っているはずだが、五層目はどうやら違うようだ。
階段を降りきると、静謐な空間に出た。
今までの階層と違って明るく、風化したような様子も見られない。
周囲を見回すと、どうやらここも地下墓地には違いないらしく、いくつかの棺が目に入った。
ただ、これまでの階層とは異なり、かなり広めに空間が確保されている。
四層目までは、通路に無数の棺が所狭しと並べられていたが、ここは墓の数もそれほど多くない。
広間の中心にある階段から放射状にタイルが敷かれ、その先に五つの通路が続いている。
今のところスケルトンの姿も新たな敵の姿も見かけない。
まさか敵に遭遇すらしないとは。となれば、アイテム収集し放題のボーナスステージなのか?まあ、できれば一度戦って、敵の強さを確かめておきたいところなんだが。
周囲を見回しても、敵の気配は感じられない。
警戒しながらも、近くの棺に近づく。
ここにある棺は、今までの石櫃とは素材が異なるらしい。
墓の前まで近づくと、これまでの階層では見られなかったものが目に入った。
・・・どうやらこれは供え物のようだ。
これまでは、副葬品が棺の中に納められていたが、棺のすぐそばに供えられているのは初めてだ。
周りを見渡すと、すべての墓に何かしらが置かれている。その多くは花のようだ。
みずみずしい花の様子を不審に思い手に取ると、どうやら生花ではなく精巧に出来た作り物のようだ。
よく観察すると、一つ一つに宝石だったり、金属のようなものが使われている。一見しただけでは、造花だとは思えない精巧さだ。
ここまで丁寧に整備され、花まで供えられた墓を見ると荒らす気にはなれない。流石に盗掘する気にならなかった。
依然として姿を見せないスケルトンを探し、今度はこの広間から続く通路に歩みを進める。五方向に伸びたうち、階段から見て正面に位置する通路を歩く。
この通路にも墓はあるが、四層目までのような打ち捨てられたような印象はなく、つい最近まで誰かが訪れていたかのような雰囲気すらある。
よく見ると墓の一つ一つに文字のようなものが彫られているのに気が付いた。
残念なことに、知らない文字・言語のため読めないが、おそらくは名前だと考えられる箇所に共通した文字列が見られた。
どんな文明、文化なのかも想像がつかないので、何とも言えないが、ここに眠るのは、同じ一族か、あるいは一つの集団の墓なのだろう。
******
脇に並ぶ墓を眺めながら通路を進むこと少し。少し前から見えていたが、そこには巨大な扉があった。
鉄製の扉は閉じられており、中の様子を伺うことは出来ない。
ここまで来て、ようやくこのスケルトンダンジョンのタイプが分かった。
おそらくだが、この扉の中にこのダンジョンの中ボスもしくはラスボスがいるのだろう。
ネットで調べた限りでは、5の倍数の階層は、謎解きのようなタイプや、特定のアイテムを捧げるタイプもあった。
そのため、このダンジョンにも戦闘ではないパターンを期待していたのだが、どう考えても中にボスが居そうな扉を発見してしまった。
まだ、ボス戦と決まったわけではないし、他の通路の探索も残っている。
だが、もしボス戦となるなら相応の準備が必要だろう。
...ちょっとこれは、スルーしてきた墓の中にあるだろうアイテムにも、協力()してもらう必要性がありそうだ。




