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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第4章 獣人国編
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第99話 海龍神ダンジョン


 ソーマ達は海龍神のダンジョンに向けて海を進んでいた。

 今は全員でムフフの本を見ながらステータスやスキルなどを確認し、作戦を練っているところだ。

 ちなみに今回はソーマのこううんのステータスを一般的な数値にまで下げて記載してもらっている。あまりにも数値 が異常なため目立ちすぎるし説明するのも面倒だと言うのが理由だ。


(俺の二回のクラスチェンジでかなりマキナにステータスは近付いたな。まあマキナがまたクラスチェンジしたら離されるかもしれないけど。でもやっぱ今後マキナは魔法特化にしていった方が絶対強くなるよなぁ。フィオナも戦闘に加わるには及第点と言ったところか。というか王のステータスが凄まじいな)


 ソーマは腕を組みながら考え込んでいる。

 マキナも一時はパーティ最強だったが、徐々にソーマや丸眼鏡が強くなっているのを見て少し焦りが見えている。やはり最強の名が欲しいのだろう。

 丸眼鏡はソーマとマキナに付いて行ってるのを数字で確認して安堵し、フィオナはまだまだ劣っていることが分かったのか悔しそうな表情を滲ませた。


 一度丸眼鏡がフィオナと何か話していたが、もしかするとフィオナにも見せたくないスキルがあるのかもしれなかった。

 特に戦闘に支障が無ければわざわざ突っ込む必要もないので、ソーマは放っておくことにした。


「さて、一応全員のステータスその他を見たところだけど、前衛はヴァンとマキナに任せる。ヴァンを物理攻撃メインのアタッカーに、マキナは速度と魔法も駆使して戦ってくれ。俺は中衛の位置から全体を見ながら適宜指示を出す。前衛職もこなすし後衛も守るよ。丸眼鏡は魔法アタッカーと敵の拘束、味方全体の魔法での防御担当、フィオナはバフと回復だね」


 ソーマは解説しながらムフフの本に全員の隊列や役割などを記していく。

 ちなみに王はせっかくパーティに入るのだから、敬語と敬称は止めてくれとのことで、ソーマは以降ヴァンと呼ぶことにしている。

 ちなみにマキナは相変わらずおっさんと呼んでいるし、フィオナは元々全員に敬語なので王に対しても変わらなかった。丸眼鏡は困り果てていた。


「パーティが円滑に戦闘するために重要なのは丸眼鏡とフィオナだね。丸眼鏡は物理攻撃が通る相手なら敵の拘束と防御を優先に動いてくれ。フィオナはまず英雄神の歌は絶対に切らさないように。回復も全員に目を配りながら適切に頼む。そうすると俺の負担が減るから結果的にパーティ全体の火力が上がって討伐までの時間が短くなる」


 ソーマはその後も各々の役割の詳細、パーティ全体の基本的な戦い方を組み立て説明すると、あとは敵に合わせて臨機応変に動くしかないねと言って作戦会議を締めた。


 その後、フィオナに対し今後どこをどう伸ばしていくかの確認をした後、各々稽古に当たろうと思っていたら王からスキルや魔法に関しての質問攻めにあったので、答えられるもの、教えられるものに関しては全て惜しみなく教えた。

 特に剣豪と大魔術師に関しては三人とも取得していたので取得条件などを尋ねられたが、さすがに魔神を脅して――もとい、交渉してようやく教わったことを易々と教えるわけにはいかないので、ムフフの本を見て考えてくれと諭した。


「それにしても全員三属性・Sランク持ちにソーマに至っては六属性か! 恐れ入ったわ!」


 王はムフフの本を眺めながら豪胆に笑い飛ばし、負けてられんなと意気込んでいる。


「いや、むしろヴァンのステータス見てよく勝てたなって思ったよ。何回かやったら勝てなくなりそうだね」

「初見では手数の多さも重要だからな、まあ勝ちは勝ちだ、喜ぶといい」


 王はそう言うと稽古に(いそ)しんだ。

 地属性魔法で鉄を作り出すのをすぐに取得したと思ったら、アダマンタイトの短刀を使って何やら無心に輪切りを始めた。

 さすが勘が鋭いなとソーマは思いながら、別の場で稽古に励むマキナへと近寄って行った。


「ちょっといいか」

「あ? なんだ?」

「マキナ次大魔術師スキル取得するだろ? そしたらいよいよステータス的にも魔法特化を目指すべきだと思うんだ。剣王取るにはステータスが足りないし、知力もMPもトップクラスだ。次のスキルは賢王だろうし――」


 マキナは面白くないのか明らかに不機嫌そうな顔でソーマを制した。


「わーってる。ステータス見りゃ分かったよ。それにこれから海龍神の聖地を復活させりゃ丸眼鏡ッちのステータスもさらに上がるだろうし、人間の聖地を復活させりゃおめーのステータスも上がんだろ。いずれおめーには剣で勝てなくなるだろうし、それでも剣に固執してたら丸眼鏡ッちにも魔法で勝てなくなってちまう。剣を捨てる気はねぇけどあたしの役割は大火力の魔法だっつーくらい分かったぜ」

「……そうか、口出しして悪かった。謝るよ、ごめんな」


 ソーマが謝罪すると、マキナはうるせーと一言言って稽古に戻っていった。

 最強にこだわりが無いソーマでもマキナの気持ちは分からなくなかった。


 剣も魔法も使え、さらに六属性もあるとなると全てを鍛えようと思えばいくら時間があっても足りないのはソーマも同じであった。

 マキナのようにステータスが特化していれば割り切れるが、ソーマの場合はステータスが平均的なのでそうもいかない。

 現時点では物理攻撃は王に劣り、攻撃魔法ではマキナに劣り、探知や補助・非戦闘時のスキルでは丸眼鏡に劣り、バフや回復ではフィオナに劣る。

 やりたいようにやれば良いというのはソーマ達の共通認識ではあるが、それでパーティに貢献できない、迷惑を掛けるのであればそれは避けたいというのも全員の本音である。


 剣が好きなマキナがその道での最強を諦めるのには色々と思う所もあるだろう。それは他人に言われて嬉しいことでは決してないはずであった。

 そしてソーマも、何かを捨てて特化するべきか、それとも満遍なく伸ばしていって今回のようにパーティ全体のサポートと指揮をする立場に進めば良いのかを迷っていた。


(まあヴァンがいなくなったら俺がメインアタッカーになるから当分は剣王を目指すことになるけど……ヴァンのステータス見るとメインアタッカーが務まるのか不安になるなぁ)


 一抹の不安を覚えながらも自身のやるべきことを再確認したソーマはダンジョン到着まで稽古に勤しむことにした。



 朝、港町ラスタを出た王専用の船は夕方前にはダンジョンがあると言われる海上に着いていた。

 そこは何の変哲もないただの大海原であり、となるとやはりダンジョンの入り口は――。


「海底に入り口か、どうやって入るんだ?」

「ソーマ殿、最近わたくしに探知を任せっきりでご自身で使っておらんじゃろ」


 丸眼鏡の突っ込みにソーマは水中探知を使ってみると、海底から長く伸びる塔のようなもの水面近くまで伸びていた。


「なるほど、ってことは丸眼鏡博士の出番かな?」

「なんじゃその呼び名は……では――」


 そう言うと丸眼鏡は風壁と水壁の応用で海を掻き分けた。

 さらっとやっているがとてつもない魔力量と魔法コントロールである。ソーマと王は感動すら覚えた。

 丸眼鏡は船の高さを調節し、ちょうど塔の最上部の入り口に入れるようにして、そのまま船を進める。

 塔の入り口は扉が閉まっていたが、王が魔力を通すと自然と開き、船のまま中に入り込むと扉は自然に閉じていった。


「すげぇな、こんなダンジョンあるなんて絶対わからねぇだろ」


 マキナの言葉に、ソーマもたしかにこんな場所までくまなく探知で探すのは難しいな、と同意する。


 扉が閉まると塔内部の水が足りなくなり、船底が地面についたので王は船員に待っているよう伝えると、五人でダンジョンへと進んだ。

 最初の転移レリーフの前で王が全員に向き直る。


「このレリーフから転移すると、塔の最上部から螺旋階段を降るエリアとなる。悠長に降っていると上から大量の水が放たれて流されることになるから、一気に降るぞ。まあそなたらのすばやさがあれば問題ないと思うが」


 皆は王の言葉に了承して全員で転移レリーフに触れて第一層へと転移した。

 王の言う通り、目の前には螺旋状の階段が伸びていた。

 塔の外周がそこそこあるのでかなり緩いカーブ状になっており、反時計回りに降る形となっていた。

 階段の左には背丈以上の高さの塀があり、マキナは早速その塀の上に登って下を覗いている。


「おい、中は空洞になってるっぽいからこっから飛べば一気に下までいけるんじゃねぇか?」


 マキナの言葉にソーマも塀に登ってみる。


「なるほどな、確かに全員風属性持ちだし、全員で突風使いながらだったら降りれるかも。面白そうだね」


 ソーマの言葉に王と丸眼鏡、フィオナも塀に登るも、三人とも一様に何が面白いのかといった具合で恐れ(おのの)いている。


「走っても間に合うんじゃし……普通に走れば良いのではないかのう」

「わ、私もココネさんの意見に賛同です」


 そうか、じゃあ仕方ないねと残念そうなソーマにほっと胸を撫で下ろす王。

 そして四人は疾風を用いて全力で階段を降り始めた。

 マキナは普通に走って降りるのがつまらないのか最下部までは行かないまでも、反対側まで飛んだりしながら面白そうに降っている。


「おいマキナ! せっかくだから階段で勝負しよう」

「おうおう、ステータス上がって調子に乗ってんな? 負けたら酒一杯奢りだ!」


 ソーマがマキナを誘うと、マキナも階段まで戻ってきて久しぶりの競争が始まった。

 すでに二人はあまりの遠心力に階段ではなく外側の外壁を走っており、その姿を一瞬捉えた他の三人は呆れ顔をしながら全速力で後を追った。


 ソーマとマキナは宝箱の前で三人を待っていた。

 結果はマキナの勝利であったが、久々に全力で競争したソーマは負けても清々しい気持ちだった。


「で、どちらが勝ったんですの?」

「マキナだよ、さすがにすばやさでは勝てなかったね」


 聞いたフィオナもその結果につまらなそうな反応であった。

 まだまだ水が放出されるまでには時間的な猶予があるらしく、五人は宝箱を開ける順番を確認し合う。

 結果的には仲間になった順ということで、まずはソーマが開けることになった。

 ソーマ、マキナ、丸眼鏡が宝箱の前に並び、久しぶりにお約束の祝詞(のりと)を上げる。


「「「女神様、どうかレアアイテムをお授け下さい!」」」


 聞いたこともない異様な光景に王とフィオナは驚くも、直後ソーマが開けた宝箱からは早速真っ白な絹の袋が出たので、さらに驚くのであった。


「おっ! 早速出たな、中見せてみろよ」


 マキナに促されて開けた絹の袋からは、美しい紫と黄色の玉が出てきた。

 紫は闇属性かとウキウキするマキナを横目に、ソーマは丸眼鏡に鑑定をしてもらう。

 丸眼鏡の淡いアメジスト色の瞳が光を帯びて揺らめいた。


「ふむ、毒属性付与と麻痺属性付与の宝玉だのう。武器に付けて斬りつけていれば相手に毒や麻痺を付与出来そうじゃ」

「あんだよ闇属性じゃねぇのかよ」

「いやでもこれ一番活かせるのマキナだろ。ヴァンの大剣はマキナのカットラスほど手数が多くないからな、敵を一回でも多く斬り付けられるマキナにはピッタリだね」


 ソーマの言葉にマキナはニターッと嬉しそうな顔をして喜んでいる。実に単純なやつである。

 フィオナはソーマが開けた宝箱から出たアイテムがマキナに一番合うと聞いて、面白くなさそうにしていた。




いつもお読み頂きありがとうございます。

98話はステータス回だったので、今日は三話更新です。

書き手としてはたまにステータス確認したくなるんですけど、人の作品を読むときはステータス回だと僕は結構がっかりするんです(笑)

ということで、今日は三話更新でした。

楽しんで頂けたら嬉しいです。

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