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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第1章 人間国編
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第33話 魔術師スキルとマキナへの想い


 ソーマは魔術研究資料室で所長のザイオンと隣り合って魔術に関する質問をしていた。


「……つまり属性は生まれながらに持つ先天性のものと、鍛錬のなかで発現する後天性のものがあると?」

「そうじゃの、ただ後天性のものが先天的に内在していたのか、条件により新たに発現したのかは分かっておらん」

「発現条件は詳しく分かってないんですね」

「そもそも後天性の発現事態が稀だからの、研究対象が少なすぎるんじゃ」


 ザイオンは質問に対し、熱心に答えていた。

 ソーマの着眼点や発想は、ザイオンにとって柔軟かつ創造性に富んでおり、また非常に鋭い切り口で魔術の概念を捉えていた。

 滅多に現れぬ逸材にまさしく賢者の器と感心すると共に、自らも学ぶ機会であるとザイオンは腰を据えて対話に臨んでいる。

 さらにソーマの質問は続く。


「……ではやはり覚えた魔法のアレンジは術者のイメージによって拡張性を持ち、柔軟に変化するんですね」

「そうじゃの、水属性使いが氷を駆使することがあるというのもそこから来ておるな」

「あ、ちょうどこの本ですね」


 ソーマは目の前に山積みにした分厚い本の中から一冊を取り出し、ザイオンの言ったことに該当するページを探し出す。


「……そうそう、これ読んでて思ったんですが、どういう原理で氷が発現するんでしょう? イメージだけだと水を冷やすことは出来ても凍らせるまではいかないんです」

「ほっほっ、研究熱心な賢者様じゃ。魔術スキルの成長に関しては学ばれたかの?」

「え……いえ、まだ調べておりません」

「良いですかの、魔術スキルを上げると……」


 二人はその後も勤務時間ギリギリまで時間を惜しむように魔術やスキルについて、時に笑い、時に熱心に語り合った。


 ザイオンもまたブライアンと同じくその道を極めんと邁進するものであり、その心意気にソーマは敬意を表していた。

 ザイオンとブライアンも、才能に恵まれているが決してそれに溺れず日々勉学稽古に励み自身を高めんとする、若き賢者の今後を楽しみにしていたのであった。




 一週間ほど経ったある日、ソーマとザイオンは早朝の魔術稽古場でソーマの魔術スキル上げを行なっていた。

 ザイオンが魔法結界を作り上げ、その結界に対してソーマはMPの続く限り魔法の嵐を打ち込んでいる。


 エルの火流星群と見(まご)うほどの火球の嵐を撃ち込み、室温が上がれば今度は岩をも穿つ威力の水球を無数に放ち、稽古場が水浸しになれば今度は一流の剣士の一線を凌ぐ鋭さの風の刃を叩きつけ続ける。

 ザイオンはその猛攻を、久々に汗を流しながら結界で受け続けた。


 中位魔法の方がMP消費の観点からは効率が良いのだが、ソーマが本気で中位魔法を放つと稽古場を壊しかねないことから、下位魔法による猛攻が続いている。


 ここ数日でソーマとザイオンの訓練は話題になっており、稽古場の周りには早朝からギャラリーが出来ていた。

 ブライアンの次はあの鉄壁のザイオンの結界を破るのか、と観衆は色めき立っている。

 魔術師の女性達は各種属性によるとてつもない猛攻に黄色い歓声を響かせていた。

 そんな折、ついに二人の目的が果たされる。


――――――――――

ティロリロリン♪


スキル・魔術のレベルが50になりました。

スキル・魔術は魔術師にランクアップしました。

――――――――――


 ソーマは魔法を打つのをやめ、汗だくになりながら肩で息をしている。


「……ザイオンさん! ……スキル、ランクアップしました!」


 ザイオンはホッと胸を撫で下ろしたあと、結界を解いてソーマの元に歩み寄る。


「ほっほっほ、ついに会得されましたな。最近はソーマ様の魔法の習熟度もどんどん上がられて、いつ結界が破られるかヒヤヒヤしておったとこですぞ」

「いやぁ、出来るんなら破ってやろうと思ってたんですけどね、さすがにビクともしませんでした」

「ランクアップしたスキルで中位魔法を乱発されれば老いぼれの結界など紙も同然じゃわい」


 またまた、とザイオンを小突き、握手を求めるソーマにザイオンも満面の笑みで握手を交わす。


「ありがとうございました、これでまた心置きなく魔法の稽古が出来ます」

「才能ある若者に手を貸すのが老いぼれの役目じゃ。何か発見があったら報告頼むの」


 そういうとザイオンはほっほっほ、と長い白髭を撫で付けながら研究所へと戻っていった。

 その様子をギャラリーの中で、一人恨めしそうに見つめる黒の三角帽子。


 そしてまた、その日のうちに王都中に『賢者様は新たな強力なスキルを体得し、そのスキルと魔法を使えば鉄壁のザイオンの結界も紙同然に破れるらしい』との噂が広がったのだった……。




 夜、ソーマは一人魔術稽古場にいる。

 早朝と夕食後から深夜までの鍛錬はリルムの街にいた頃からの日課であり、それは王都に来てからも出来る限りずっと続けていた。


 ソーマはありったけの思念とイメージを込めて水球を発動する。

 すると目の前には白く霜を付けて真っ白な霧を上げる氷の球体が現れた。


(よしっ!! よしっ!!! これなら……)


 その後、ソーマは同じく強固なイメージを元に礫弾を発動した。

 そこには鈍く周囲の光を反射する鉄球が現れる。

 ソーマは心の底から安堵したようにその場にへたり込み、一筋の涙を流した。


(ああ……やっぱり……やっぱり鉄も発現出来たんだ……思った通りだ……これで、これでようやくマキナに会いに行けるぞ……)


 ソーマが喜びを噛み締めていると、後ろから小さな足音が聞こえた。


「ちょっと……お願いがあるんだけど……」


 振り返るとそこには、相変わらず黒の三角帽子から灰髪をはね散らかしたユーリが俯いて立っていた。



いつもお読み頂きありがとうございます!

もう少し一日三話更新続きます!

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