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5.記憶


 矢筒に入っていた2本の矢を取り出して、1本を番える。さて、この2本の使い方が問題だ。


 もう一度梯子の上の帝国兵を撃ち抜いたとしよう。また数人を巻き込んで落下してくれるだろうが、今のように若干の時間稼ぎにしかならない。あと10~20本の矢が有れば、間違いなく城壁の上の攻防に決着をつけるまでの時間を稼げるのだが、ほぼ”くじ”と言ってもいい矢が2本のみだ。


 マジックアローを使うべきか?


 一つの選択肢として頭に浮かんでくるが、こちらも2本しかない秘密兵器だ。ここでたった数人を倒すために使っていい代物じゃない。そして、それを悩める時間もない。

 引き絞り始めていた矢を戻したところで、ひとつの記憶が蘇った。


ーーーーーーーー


「お前が新人のアーチャーか」

「はい、リデルと申します!」

「ん、教育係のマルセラだ。お前、訓練騎士団から直接近衛という事は魔法持ちか?」

「はい。風魔法です」

「なるほど、それじゃあ風魔法を使って矢を放ってるって訳か」

「え?いえ、弓に風魔法は使いません」

「ん?じゃあ何に風魔法使うんだ?」

「えっと、暑いときとか、火を起こすときですかね」

「はぁ?んじゃあ弓を使うときは一切使ってないのか?」

「はい」

「ほぉ……なるほどな、結局お前も”半端者”(仲間)って訳か」


 後々聞いた話だと、いきなり15覚醒で近衛に入れる平民などまずもっていないそうだ。なので「よっぽど風魔法をうまく使って、弓を扱うのだと思った」と言われた。

 結果的に人より弓が上手いだけ、という事を知られて落胆された。今にして思えば、風魔法を使っていると思われるほど、上手なのであれば落胆される筋合いはないと思うのだが……まあ、今はそんな事どうでもいい。近衛に入れたのも運だったのだろう。


「マルセラさん、その腕の傷はなんです?」

「ん?あぁこれか」

「よぅ、こいつの話は長いぜ」


 近衛に入団してしばらく経った頃、同室になったマルセラの左腕には、肉が裂けたような大きな傷跡があることに気が付いた。このニヤケ顔は明らかに武勇伝を話したがっていることが分かる。


「なんですか?」

「5年前、収穫が終わった頃に帝国が、王国の城を攻めてきたんだよ」

「あー、なんか訓練騎士団にいた時に聞きました」

「いや!話させろ!」

「どうぞどうぞ」

「偶々な、俺ら近衛第三騎士団は、近々戦場になりそうな場所を”王の護衛”として巡察に出ていた訳なんだが、その時に帝国軍の攻撃が有ったと報告を受けたんだ。場所は早駆け1日の城!事情があって守備兵は100しかいなかった」


 マルセラは、市井の吟遊詩人並みの大仰な口調で語り始めたが、それがまた可笑しくて聞き入ってしまう。


「押し寄せる敵は、帝国の急先鋒!数は500!この差だと、即日降伏か、持って4~5日といった所だ。だが、獅子王はそんなことは気にしない!即断即決!1日かけて包囲されている城に到着すると、援軍を信じて必死に抵抗する味方の城を見て一言だけ、たった一言だけ王が発したんだ。『ゆくぞ』ってな。最初はどこに行くのか分からなかったんだが、ゆっくり加速する国王の馬とその方向を見て悟った。包囲攻撃中の敵に向かってたんだ。そしてそのまま、50の俺ら護衛と共に500の帝国軍の背中に突入すると、正面城門まで一気に突破して叫んだ『開門せよ!援軍に来た』ってな」

「でもそれ、かなりまずい状況じゃ?」

「これが意外にそんなことはなかったんだ。いきなり突入された敵は、王国の来援だと思って大混乱に陥ってたからな。悠々と城内に入れた」

「ハハッ、それは味方もでしょうね」

「そうだ、しかも獅子王直々の援軍だって言うもんだから、城代は腰が抜けてたわ」

「想像できます」

「だがな、ここからが問題でいくら無傷で入れたと言っても、援軍が他にいないことを知った帝国は当然攻城戦を再開する訳だ。こんどは150の王国軍と低い城壁で500の帝国を迎え撃つって形だ。だが、今度は獅子王の近習が、本軍を呼びに走っていたから7日耐えればよかった。それはそれは熾烈な7日間だった」


 遠い目をしながら1日ずつ語っていくマルセラに、流石に長すぎると伝えたくなったが必死に我慢した。マルセラはこういった話を邪魔されると向こう3日まで不機嫌なのだ。


「……でこの傷がついた訳だ!」

「ん?は、え?」

「おい聞いてなかったのかよ」

「いや、その前の魔力がどうのって」

「ん?だから矢に魔力を込めて、敵の梯子を同時に3本ぶち抜いてやった」

「マルセラさん、魔法使えるんですか?」

「あれ?言ってなかったか?お前と一緒の15覚醒の風魔法だぞ」

「聞いたことなかったです」

「そうだったか。まぁ、てなわけでこの腕の傷が付いてしまったわけだな!」

「その魔力を込めて矢を撃つ方法を教えて貰えませんか?」

「あ?いいぜ」


 ニヤリとして得意気に話し始めたマルセラの表情は、頼りがいのある兄貴みたいな感じだった。


「まずは魔力をだな……」


ーーーーーーーー


 懐かしい思い出が一瞬、走馬灯のように蘇った。


 あの時はマジックアローなんてものは無かった。ただの矢だ。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

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