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竜門の十哲~最強の10人は再び集う~  作者: 柊 楓
幕間 「勇者」たち御一行
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第一話 黄金竜の討伐

帝王に依頼された黄金竜の討伐を遂行する【最強】パーティ一行。


激動の舞台、帝都での前哨戦の火蓋が切られる。

白いヴェールを被る山々に、竜の巨大な方向が響く。大地をビリビリと震わせるそれには、聞くものに恐怖をかりたてる威嚇などではなく、怖気を誘うような恐怖の咆哮だった。


シグルド山、既に活動を停止してから数百年経つとされる、カルタ峰の噴火口のなか。1人の魔剣士の攻撃にのたうつ、金色に輝く竜がそこにいた。


奇襲に成功した『勇者』の空間斬は、火口から遠く離れた黄金竜のしっぽを寸分たがわず切断。そのまま飛び降りて行った勇者は、万能に支援されつつ既に竜の片腕を切り飛ばしていた。


「相変わらず強いですね...」

「...出番が来ることが珍しい」


伝説と謳われるドラゴン相手にも、圧倒的な戦闘力を発揮する2人に、思わず『治癒』──マキ──が呟いた。


「でも、軍団殲滅だったら、カレンの右に出る人なんていないですよ!」

「ん...フォローありがと」

しゃがんで火口から顔を出しながらニコニコと話すマキに、飛行(フライ)で空中に浮いたまま答える。


そう、俺はなんとも恥ずかしいことに、魔王などという2つ名を貰っているのだ。勇者と同じようにパーティの火力の役を受け持つ、【プラチナ】の一員。ていうか、パーティ名が【最強】なのもどうかと思うし、勇者と魔王が同じパーティにいるってどうなんだろうか。


全ての原因であるそいつを上から睨んでいると、声とともに金色の竜が飛んでくる。


「カレン!」

「分かってるさ」

久々に使うことになった、超放出魔法強化杖──通称:ウランバトルを片手に、必死に上空に逃げる黄金竜の真上に浮く。龍の伊吹が、炎となって襲いかかるが、それ以上の冷気で分散させる。


「無様だな」

「グルアアアアアアアアア!!」

その龍の瞳は、自分が憧れる師匠と同じ黄色をしているのに、その姿に威厳など欠片もなかった。


そんな負け犬に、これ以上かける言葉もない。

「超越電撃(オーバーライトニング)」

突如、周りの空が真っ黒に変わり、見えない力が火口に集まる。その直後。


「グ、ルォォオオオオオオオオォォォォ」

その姿を現した稲妻はバリバリと、叫ぶ龍を貫き、その体内から燃やし尽くす。




「うっわあ...。相変わらず桁違いな威力だな...」

「ケント!剣放して!!」

呆れたように感想を述べていると、メイが叫ぶ。ハッとして剣を放ってその場を飛び退くと


ズパーーン!!


放した剣に、カレンの雷が落ちてきた。


「っぶな!?」

そういえば、あまり大きすぎる雷は制御しきれずに周りの武器とかに落ちることがあると、カレンが言っていた。久々の戦闘に興奮していて、そのことをすっぷり忘れていたため、メイに声をかけてもらわなかったら危なかった。


「ま、その時はマキがいるけどな」

「そんな甘い考えじゃ、ほんとにまずいときに治癒できないわよ」

あまり感情を顕(あらわ)にしないメイが、眉を潜めている。──ああ、これは怒ってるね。

「わかってるって。ありがとな」

「わかってないこと、私たちはわかってるからいいけど」

「これは手厳しい」


両手を肩まで上げて、やれやれと言ったポーズをとるメイの横に、男にしては長めの黒髪を靡(なび)かせながらカレンが降りてくる。

「浮かせるから、よろしく」

気だるげにドラゴンの死体を浮かす彼は、帝国史上稀に見る程の大魔法を打った後とは思えないほどに、飄々(ひょうひょう)としていた。


素材回収の途中。その茶色の目が、一瞬心配するように火口付近を見上げ──。

「...手伝いな」

「ほーい」

こっそり見ていたのがバレて、肩越しに睨まれる。普段ジト目のため、睨まれると余計怖いが、小突く程度に放たれる魔法の方が怖いので、そそくさと鱗を回収しに行くことにした。




「カレン。お疲れ様です」

「んー」

「2人もお疲れ様です」

「マキもお疲れ様」

一番年下で一番非力な私は、いつも離れたところで待つことしかできない。戦闘中はカレンがそばに居てくれるため、心配なことなどないけれど。


「結局、治癒要らなかったわね」

「さすがにドラゴンでも引きこもりじゃ体動かないよなあ」

飛行を使うカレンの後から、全く疲れたように見えないメイとケントが着地する。2人とも身軽なのは、対ドラゴンに誂えた装備や回収した鱗などが全てカレンの無限空間(インフィニティ)に入っているからだ。


「...さすがに体が重い」

無限空間は、前衛2人がクエスト終了後にも戦えるようにするため、回収した素材持ち運べるように、カレンが必死に覚えた魔法だ。変化・生成魔法で、カレンの適性に一切合わないのに、一生懸命。


「おぶりましょうか?」

労わなければという気持ちが率先し、思わず腰をかがめ、背中をカレンに向ける。

「...やめとく」

「体弱いんだから、ほら、俺がおぶってやるよ。か弱い女の子におぶられんの恥ずかしいんだろ?」

「助かる。2人とも」


確かに、女の子におぶわれる男の子というのは、恥ずかしいだろう。残念がる自分の心は、グッと抑え込む。


「にしても、あんなすごい電撃(ライトニング)初めて見たね」

「ああ。カレンの魔法が俺たちに当たりそうになる、なんて普段ないもんなあだだだだだ!?」

「今のはケントが悪いなあ」

「...前より威力が上がった気がする」

ケントの首を解放しながら、少し嬉しそうにカレンがつぶやく。


「まあ、最近はどうあれ、ずっとモンスター狩ってたもんな」

「本当にカレンの放出魔法は際限が見えないわね」

「ほんと、心強いです!」

思わず、力強く肯定してしまう。でも、戦っている時に、誰よりも頼りにしているのは事実だし──。


ちらりと、カレンを見ると、やはり嬉しそうにほんのり頬が緩んでいた。


それだけでも、今回のクエストを受けた甲斐があったと、しみじみ思えた。




私が作った土のドームの中に眠らされていた馬を起こし、未だ舗装されないでこぼこ道を馬車で駆け抜ける。来た時には藍色だった空は、既に真っ赤に染まっていた。


流石にこんな雪の積もった、足場の悪い山登りは体にこたえたのか、魔術師二人組はお互い寄りかかって眠っていた。仲のいいことで。


「ハッスルしてたな」

唐突に、御者から声がかかる。籠に屋根はかかっているが、御者台との間は遮られていないので、今日一番力を使っただろう男のそばに顔を出す。


「そんなにわかるの?」

「ああ。疲れすぎて寝る、なんてことはそうそうないからなこいつ」

「それはあんたもじゃない?」

チームの攻撃力の要である2人は、パーティ結成前から付き合いがあり、それこそお互い兄弟のように息が合う。そのケントが言うのだから、ほんとに珍しいんだろう。


「俺は体力が有り余ってるだけさ。カレンは...。体が弱いこともあるから、自分をセーブすることに慣れてるんだよ」

「そうね...。カレン、運動はからっきしだものね」

「ハーフエルフだからな。しかたないさ」


ハーフエルフ。エルフとヒトの血が混ざった子供。それがカレンの正体だ。


正体なんてもったいぶったものでもないのだろうが、エルフにヒトとは違う特徴があるのは事実だ。


曰く、ヒトは人間種の元祖である。


曰く、他の人間種はヒトから派生した種族で、それぞれ長所と短所が存在する。


曰く、エルフは魔力含有量と魔力適正の値が大きい代わりに、体が弱い。


ハーフエルフの中でも、カレンはエルフの血を多く受け継いだ方らしい。


だから、魔剣士なんてできないし、魔法が使えなくなったらただの置き人形になるだけだよ。


そういってたのは、パーティ結成から少したったあとの鉱石回収のクエストで、カレンが崖から落ちかけて足の骨をおった時だっけ。あのころは、何故かカレンがマキに対して冷たくてその分マキもトゲトゲしていた気がする。ま、今更その理由は聞けないけど。


ちらりと、気持ちよさそうに寝ているふたりを伺う。

「だから今日は、カレンにとって忘れられない日になるだろうな」

「そうね、帝都についてからの反応が楽しみね」

起きた瞬間にお互いが照れる姿を想像して、ふふと笑いが盛れる。


「...真実から目を背ける、そんな理由じゃないならな」

「え?」

「...いや、なんでもない」

つぶやくように吐いた言葉は聞こえはしなかったが、含まれた憤りの感情だけは伝わってきた。


そういえば、黄金竜が発見されてからクエストを受けるまで、半年も時間を開けてたものね。帝王に呼び出されてやっと、受けることを決めたけど。


もしかしたら、黄金竜についてなにか思うところがあるのかもしれない。


どうしてなのか聞こうとしても、いつもの優しい顔をちょっと顰(しか)めて、話そうとしない。その直前辺りまでなら、楽しそうに語ってくれるのに、竜を退治したくない理由と、パーティメンバーを募集する直前の話は一切してくれない。よく自慢する10人の兄弟というのが関わっているのだろうが、その2つの話だけはどうしても嫌がる。


それを、カレンが訳知り顔で、申し訳なさそうな顔で目を背けるのも、どうしようもなくモヤモヤするのだ。

【キャラ紹介】


パーティ名【最強】


ケント


金髪碧眼の優顔イケメン。帝国史きっての魔剣士で、度胸と努力とキメ顔が形を生した【プラチナ】級冒険者。

帝国貴族の出だが、ある理由で苗字を名乗らない。

二つ名の「勇者」を受け継いだ直後の先代「勇者」との対決で、相手を一撃で下したのは数ある「勇者TUEE」エピソードの中でも有名な話。

「魔王」に隠れがちだが、放出魔法に適性がある。

これまたあまり知られてないが、子持ち既婚者。


メイ・リオン

真っ赤な髪をポニテにまとめた、目尻吊り上がり系美少女。

二つ名は「万能」。

幼い頃から父親と狩りに行っていたそうで、サバイバル能力に長けた【プラチナ】級冒険者。

干渉とバフに適性があり、味方の支援と回避に特化した頼れる前衛。


カレン・アスティア

茶色い目に黒髪をショートカットにした正真正銘の男性。

生まれた直後親から離され、何故か女の子だと間違った情報が流れたことで、女の子らしい名前になってしまった【プラチナ】級冒険者。

本人は気に入っているらしいともっぱらの噂だが。

二つ名は「魔王」。

ハーフエルフで放出魔法に適性があり、スキル「火の眼」に杖ウランバトルで強化された放出魔法で、彼の右に出る者どころか膝丈ほどに達するものは歴史上存在しない。


マキ・エルメス

緑色に染めたショートカボブに茶色の目をした小柄な魔術師。

髪を染めた経緯に、カレンとの諍いがあるが本人曰くそれもいい思い出。

19歳のパーティメンバーの中で、1人だけ17歳の【プラチナ】級冒険者。

二つ名は「治癒」。

欠損した体の部分すら復活させるほどの腕を持つ。

最も、カレンが転ぶくらいしか怪我が出ないため、人材の無駄遣いとの声も少なくない。

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