第34話 雪遊び
「雪合戦てのはな、こんくらいのサイズの雪玉をどれだけ相手に当てられるかを競う遊びだ」
「別に勝敗が重要ってわけでもないけど」
「最初に用意した雪玉がなくなっても、試合中に作ってよーし」
いくつかの雪玉を作って投げ合いながら、2人で雪合戦の実演をしてくれる。なかなか楽しそうで、リリカも雪をこね始めている。
「ま、とりあえずやってみようか!」
「特に制限とかはないのか?」
「制限?あ、雪玉に氷入れるのはなしね。痛いから」
「準備できましたよ!」
我らがジンチームは3人とも雪玉を作り終え、スタンバイを終えている。初めての競技に、あるいは久々の遊びにワクワクがとまらない。
「で、なんで俺対ほか3人なんだよ」
「ブー垂れないの。あんた向こうの世界で野球部より野球できてたんだから、こんくらいのハンデにしないと」
「納得いかねえ」
そんなことを言いながらも、やはり興奮は隠しきれないらしく、今もしきりにスローイングの素振りをしている。
「まあいいさ。始めようぜ」
「そうね、3回当たったら自己申告で離脱にしましょ」
全員が雪玉を手に取る。
「ああ、じゃあ。用意」
両手に握った雪玉を再度握り直す。
「始め!!」
ヨウタと3人の距離はおよそ5〜10メートル。投げられれば避けられなくないが、こちら側の間隔はあまりにも狭いため、避けた時にぶつからないよう移動を余儀なくされる。
すると、囲まれることに勘づいたヨウタは
「干渉」
「あっ、ズルい!」
自分の周りを雪で囲いはじめた。
「さっき言ったろ!『ルールなし』って!!」
「それなら私も」
便乗したリリカが、ヨウタの雪玉に水をぶっかける。
「あああっ!凍ったあ!?」
「氷は投げないでくださいね!」
「じゃ、あたしも。炎!」
アマネの放出魔法で、ヨウタの雪壁が溶ける。
「あっちっ!いや、それルール違反...」
「ジン、ぶち込んで!」
「まあ、そういう流れだろうな」
2人の魔法が放たれている間に、干渉魔法で作り上げた雪玉はおよそ150個。それをヨウタの周りに満遍なく浮かせた。
「いや、待っ」
「凝集」
作り上げた壁は一瞬のうちに溶かされ、素手で防げる数も数えるばかり。あっという間に150の雪玉が陽太の体に降りかかった。
「...魔法入れたら雪合戦じゃねえな」
「それはあたしも同感」
腰の辺りまで雪に埋まったヨウタが渋面で唸る。
「確かに、このままじゃあ競技性に公平さが欠けるな」
「魔法チート野郎が何を言うってんだ...」
「でも、チーム戦にしたら色々役割ができて面白そうね」
ヨウタはともかく、こちら側は上手い具合に連携が取れていたため、それなりに楽しめた。2対2や、人数を増やしてみても面白いだろう。
「にしてもその格好。まるで雪だるまね」
「うっせ、そろそろ寒く...」
ハッとしたように、ヨウタの口が止まる。
「...どうし」
「そうだ雪だるまだ!!」
「うっさ...」
「あ。あーわりい」
急に叫ぶヨウタに、耳を塞ぐアマネ。憮然とした顔があっという間に輝くヨウタは、いそいそと雪の山から抜け出す。
「雪だるま?」
「ああ。雪遊びと言ったら、まず思い浮かぶのが雪合戦と、この雪だるまだ」
「まあ、雪で像を作ることよ。だるまっていう大きな雪玉を2個乗っけた形にするのが、定石だけど」
地面に座ったヨウタが、先程の雪合戦と同じくらいの雪玉をこね出す。こね終わると、今度は雪の上をコロコロ転がしていった。
「まるでフンコロガシみたいですね」
「そんな素直な感想聞きたくなかった!!」
そんな姿をみて、リリカが思わずつぶやく。確かに玉を転がしている様は、フンコロガシのそれだ。
「ていうか、風作り出せば早くないか...?」
「いや、魔法は禁止。雪の上を転がしてくとどんどん大きくなるから、その大きさで勝負だ」
「雪だるまに勝負とかなくない...?」
「確かにそんな気はするな...」
「じゃあ、こうしませんか?」
うーんと唸る2人に、リリカはそうだと提案する。
「全員で一緒に大きな雪だるまを作る、とか」
「それありだな!」
「それなら魔法も使って、見たことないくらい大きいの作りたいわね」
ウキウキと3人は集まって作戦を立て始める。
「ただ転がすだけなら、1人で事足りるな」
「周りから雪をつける人も入れたらどう?」
「崩れないように固める係もいるかもですね...」
思えば、私も幾度となく雪遊びを経験していた。2人の時は小さな塔を作って、メイドさんが来た時はもっと大きな塔を作って。
10人の時は雪の上でもとことん戦って、師匠が来たら全員でゲリラ戦をして。
ああ、いい思い出だ。
「ジン!3人の補強お願い!」
「崩れそうだったり、でこぼこしてたら何とかしてくれ」
「でっかいの作りますよ!!」
「ああ」
心のどこかに懐かしい子供心を抱えながら、ウキウキとする3人と、だだっ広い雪景色を踏みしめる。
何故か得意げなヨウタのドヤ顔も、ちょっと呆れたようなアマネの苦笑も、気恥ずかしそうなリリカの微笑みも。
ああ。いい思い出になる。
物語は加速します




