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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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そして私は決めた 1

 ノックの音に、私はテーブルから離れる。

 すでに精霊達もクッキーごと姿を消していたので、証拠隠滅するものもない。「はい」と答えて扉が開くのを待った。

 そうして入ってきたのは、団長様とフレイさん、イーヴァルさんだ。


「まだ詳細を聞かせていなかったな。説明するから座りなさい」


 団長様はソファーを指し示してそう言い、私を座らせてくれた。

 向かいのソファに団長様、フレイさんはテーブルの椅子を引き寄せて座り、イーヴァルさんは生真面目に団長様の後ろに立つ。


「まず、何者かがお前に魔女だと貴族に密告したらしい」


「……密告した人については、何も情報はないのでしょうか?」


 ソラと話したりして少し落ち着いた私は、団長様にそう尋ねた。

 なにせ貴族から国王にまで話が伝わるのだ。情報源に、それなりに信頼がなければ起こらないことだと思う。


 ましてや、一騎士団の騎士でもない人間である私のことだ。

 下手をすると、どこかの貴族が逆らった平民を適当に魔女だと言って、罪を負わせようとしているのでは? と疑う人もいるはず。

 なのに、戯言扱いもされずに国王が命令を出す状況にまでなったのなら、誰か……信用のある人間が言ったはず。


「お前の言うことはもっともだ。騎士団に雇われているだけの平民である上、今のところ紅茶を作っていることぐらいしか広まっていないお前を、魔女だと言って陥れる必要のある者など、本来はいない。

 そして平民のことを告発したからといって、魔女の被害も出ていないのに信じる者もほとんどいないはずだった」


 団長様が私の意見を肯定してくれる。


「だが、告発した人間が問題だった。お前のことを直接見て、知っている人間の上、理由があって無視できない意見だったのだろう」


「直接見て……?」


 私と会ったことがある人。その言葉に私は嫌な予感がする。

 まさか……と心揺らぐ私に、団長様が告げた。


「メイア・アルマディールだ」


「…………」


 やはり、と思った。

 彼女自身はそういうことを言うような人ではないと思う。けれど魔女のことがかかわったなら……逆に私を魔女として告発する可能性はある。

 ただわからない。


「私を魔女だと告発しても、どうしてそれを国王陛下たちは信じたのでしょう」


 他の魔女にはいてほしくない、私に邪魔をされたくないから、拘束させるつもりで告発するのはわかる。

 けれどメイア嬢も私を魔女と糾弾したところで、表向きには、元婚約者の側に女がいるのが嫌なのだろうと軽く扱われる恐れがある。でもそうはならなかった。


「タナストラだ」


 団長様が答える。


「かの国が、イドリシアの人間が破壊行動をすることで、多くの民が逃げ込んだアーレンダールに物言いをつけてきた。メイア・アルマディールはそれを抑える人質として、タナストラ第二王子の花嫁となることが決定された」


「メイア様が……」


 お嫁入りという華やかな話のはずなのに、人質としてという言葉がつくだけで不穏なものになる。


「その話の際、タナストラ側から火竜を操ってけしかけようとしているのではないか、という難癖がつけられたらしい。国境近くの山で暴れたことをも、アーレンダールの失点にしようとしたんだろうが……。

 その時にタナストラ側は、アーレンダールに魔女がいて、火竜を操ったのだろうと言い出した」


 んむ? と思う。

 どうしてそこでタナストラは、すぐに魔女だなんて言い出したんだろう。


「それに対して、メイア・アルマディールが騎士団に魔女らしい者がいる。その者が火竜を呼び寄せたせいで……騎士団が討伐をしなければならない状態になったのではないか、と言い出したのだ」


「………なんとなく私にも理解できました」


 そう言うと、団長様がうなずいて続ける。


「おそらくタナストラの使者だか、その使者をよこした人の中にかわからないが、魔女の仲間がいるのだろう。

 フレイの話を聞く限り、イドリシアの者達の最終目標は、タナストラを潰すことだ。そのために魔女を送り込むのに、こういう形でメイア・アルマディールを移動させると計画していたのかもしれない」


 なるほどと納得しつつ、私ははっと気づく。


「あ、えーっと団長様」


「なんだ」


「そのお話、イーヴァルさんには……なさっていいんですか?」


 団長様の後ろにいるイーヴァルさんは、少し頭痛をおさえるように額に手を当てていた。あの、まさか今初めてこの話を聞いたんではないですよね?


「これからの行動に、どうしてもイーヴァルを巻き込むことが必要だ。だから今朝のうちに、手短にお前のことは話してある。詳細はまだだが」


 団長様はさらっと言い、それを聞いているフレイさんは苦笑いする。


「私のことはお気になさらず、リュシアン様。足りない情報は後ほどおうかがいするとして、今は必要なことだけ聞き取っておりますので」


 イーヴァルさんの方はあきらめ顔で、そう言った。

 そうして団長様は続けて言った。


「こうした説明をするためにも、今後のことを話すためにも、お前を一時的にでも隠して時間をかせぐ必要があった。お前がどの道を選ぶにしても、情報は必要だろうからな。なので今、最も探られにくい私の部屋に来させたわけだが……お前には二つ選択肢がある」


 団長様は数秒間を開けて告げた。


「このまま捕まって陛下の元へ行くか。それとも失踪という扱いで、逃げるかだ」


 私は唾を飲み込む。

 捕まるのは怖い。でもソラは国王にお茶を広めるといい、と言っていた。それなら牢に入れられてしまったり、処刑されるなんてことはないんだと思う。

 だけどその理由がわからない。


 なのですぐにうなずけずにいると、団長様が懐から一通の封書を取り出した。

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