表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/259

ソラに相談したら不思議な助言をされました

「どう……」


 どうしよう。

 私が魔女だという密告があった経緯はわからない。というか、今も何か話しているみたいだけど、聞く気力がわかない。


 それよりも早く逃げる方法を探さなくては、と思った。

 自分がここにいては、団長様達に迷惑をかけることになってしまう。


 わざわざ「私が外出している」という口裏合わせを徹底したのだ。逃がすなりするための時間稼ぎをするつもりだろう。

 それがバレたら、さすがの団長様も何もおとがめなしというわけにはいかなくなる。

 なにせ私の捕縛は国王命令なのだから。


 かといってどうしたらいいのか。

 魔女じゃないと訴えて、聞いてもらえる? 望みは薄い?

 もうこうなったら一度逃げるべきだろうか。でも団長様に迷惑をかけずに逃げる方法……。


 私はポケットに入れていたクッキーを取り出す。

 いつでも万が一の場合を考えて、数枚持つようにしているのだ。……そのまま私のおやつになることもあるけれど。

 団長様の部屋の中で、精霊がいないかを探した。けれど見当たらない。


「じゃあ精霊召喚……」


 私は扉から離れる。

 入っていた部屋は、団長様の私的な居室になっているみたいで、ソファーや、テーブルセットなどが置いてある。たぶん食事などはここでしているのだろう。

 私はテーブルの上にクッキーを置き、ステータス画面を呼び出す。

 LV10になっている精霊召喚の技を選択。


《召喚しますか?:要おやつ一個 Y/N》


 私は無言でボタンを押した。

 するとゴブリン姿の精霊が5匹、ぽぽんと卓上に現れた。

 火竜の魔力を吸収したけれど、ゴブリン精霊さん達の格好は変わっていない。……火竜さんに魔力を戻しているからとか、そういうことはないよね?


 とにかく今は、ソラを呼び出したい。

 一個のクッキーを五体で頭上に掲げたゴブリン精霊に、私は尋ねた。


「クッキー以外でソラを呼び出すなら、何を作ったらいいのかな?」


 絶対に値上がりしているから、最初から作るべきものを聞いておく。

 するとゴブリン精霊は一斉に首をかしげた。


「んー。ふわっと甘くて」


「クリームいっぱいの?」


 ……それで予想できるお菓子って、スポンジケーキぐらいしかないんですが。ホットケーキ重ねてクリームで飾っても大丈夫? そんなわけないよね?

 どっちにしろ今の状況でお菓子を作れるかどうかわからない。だから念のため重ねて聞いてみた。


「クッキーでどうにかすることはできない?」


「んんー、100枚?」


「げ」


 多すぎ! 絶対無理! と思ったら、一匹のゴブリン精霊が別の回答をくれた。


「クッキーをぴかぴかにするといいよ!」


「クッキーをぴかぴか?」


「お茶も輝くよ?」


 お茶……そうか、魔力を込めろってこと?

 でも物質に魔力を込めたことなんて……あ、火竜さんの時みたいな感じかな? とにかくクッキー一個でソラが呼べるのなら、今すぐやろうそうしよう!


 五体のゴブリン精霊が、分け合ってクッキーを食べている横で、私は一枚のクッキーに魔力をなんとか注ごうとした。

 しかも急がなくてはならない。

 扉の向こうでは何かもめているようで、激昂した声が聞こえたりしている。出入りする靴音もわずかに響いていた。


「…………んむむむむ」


 それでも一分ほど頑張って、ステータス画面のMPが1000ほど減ったところで、クッキーがぼんやり光り始めた。


「光るクッキー……」


 何とも言えない代物が出来上がった。

 それを見て、クッキーを食べ終わったゴブリン精霊がはしゃぐ。


「ぴかぴか!」


「ちょっとぼんやりさんだけどダイジョブ」


「呼ぶよ呼ぶよー」


 彼らにクッキーを渡すと、光るクッキーを中央にして、五体のゴブリン精霊が輪になる。


「いでよー!」


「王様やっほー」


「おいでませー」


「魔女のお呼び出しなの」


「お願いきてー」


 めいめいに好き勝手な呼びかけをして、繋ぎあった手を挙げる。

 とたん、ぴかっとクッキーの光が増し、その光が白く広がって広がって……。


「!?」


 前よりちょっと大きい。私より背を越してしまったような大きさっぽい輪郭になる白い光。その輝きがすうっと消えた後には……。


「ソラ……?」


 フレイさんぐらいに背丈が伸びたソラは、衣服こそ前回のままだったけれど。


「やあユラ」


 にこっと微笑んだその顔。いやその頭には、長い黒髪がふっさりと生えていた。


「か、髪……」


 なぜ髪が生えたの!? 叫びたいけど、今そんなことはできない。しかもソラの容姿にこだわっている場合じゃないけど、ツッコミを入れずにいられない!

 ソラは恥ずかし気に髪の端を摘んでみせる。


「ああこれ? 君の魔力が増えると、どうしても僕、元の姿に近くなるから……」


「元の姿?」


 どういうこと? と思ったけれど、ソラに質問をスルーされる。


「それよりユラは、切羽詰まった状況なんだろう?」


「そうなの、魔女だって疑われて、捕縛命令が出て。団長様達に迷惑にならないように、今すぐどこかに逃げたいんだけど、できる?」


 頼んでみたら、ソラから意外なことを言われた。


「大丈夫だよ、ユラ」


「え……」


「王都にもお茶は広まってきている。それにリュシアンも、君に不利にならないように手を尽くすことができる。ユラは安心して、国王にお茶を広めてくるといいよ」


「お茶?」


 捕縛されるのにどうやってお茶?

 疑問でいっぱいの私の頭を撫で、ソラはふっと姿を消してしまう。

 数秒後、扉がノックされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ