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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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フレイさんと森で出会って

 返事を聞いて近づいたフレイさんは、私が濡れ鼠なことがわかって、駆け足になる。


「どうしてそんなにずぶ濡れなんだ!?」


「実はその」


 しまった。火竜さんを私の火球から救うためだったとか言えない。しかも精霊さんと遊んでいてずぶ濡れとかも、ちょっとあり得ない。

 ええと、ええと。


「火竜さんとちょっとケンカして、でも攻撃魔法を使うのは何なので、池の水をかけたら足を滑らせました」


 ……我ながらひどい言い訳だ。

 さすがのフレイさんも、ちょっと残念なものを見るような目を向けて来る。

 あの、ごめんなさい、おバカなのはすぐ治らないんです。


「ユラさん、いくらなんでもその年では……」


「ああああのっ! なぜフレイさんがここに? 巡回に行かれたのではなかったんですか!?」


 もうこうなったら、大声で遮るしかない。不自然でも聞かれたくないんだとわかってくれるだろう。

 フレイさんは苦笑いした。


「まずはユラさん、服を乾かした方がいい。火竜が焦がした場所なら、いくらか大きな焚火をしても大丈夫だろうし」


「あ、なるほど」


 わかっていながら話に乗ってくれたフレイさんは、やっぱりいい人だ。

 私はさっそく火竜さんにお願いする。


「あっちでたき火したいんですけれど、集めた薪に火をつけてくれませんか?」


「それぐらいはかまわんが、乾かすのだろう?」


「はい」


「それならばこれで少しは乾くであろう」


 火竜さんはヤレヤレといった顔をしながら、口をかぱっと開けて風を吹き出した。

 え、まさかブレスを!? と警戒しかけたけれど、吹いて来たのは熱風だ。

 全身ドライヤーみたいな感じだろうか。


「おおおおお、これはいいですよ火竜さん!」


 感動しながら当たっていた私だけれど、さすがに火竜さんもずーっと風を吐き出すことはできなかった。

 三十秒ほどで、一度息が切れてしまう。

 それでも髪が大分乾いたし、体も暖かい。服はまだ乾くのに至っていないけれど。


「すごいすごい! 火竜さんたらとてもいい特技をお持ちなんですね!」


「おうおう、もっと我を褒めたたえるがいい!」


「でもまだ服が乾かないので、やっぱり焚火の火、起こしてもらえませんか?」


「くっ……」


 今の熱風ブレスだけでは不十分だったと知って、火竜さんが悔し気にうつむいた。

 それを見ていたフレイさんが笑う。


「ずいぶん仲が良さそうだね。火竜に君は襲われそうになったのに」


「確かに初対面は最悪でした。火竜さんに殺されそうでしたし」


 この森で出会った火竜さんは、私に本気のブレスを叩きつけて来たし、私の方も、最初は倒そうと思っていたのだ。

 考えてみれば、ものすごく殺伐とした関係だったような。


「なんというかこう、お話できるとわかってからですかね。たぶんお互いに、話せばある程度意思疎通ができるとわかったからでしょうか……」


 あの謎チャンネルで遠隔地の火竜さんと話せなかったら、結果は違ったかもしれない。

 紅茶を飲ませるようにソラに言われても、ちょっと難しいと判断したかもしれない。結果、普通に倒していた可能性もある。

 でも話せたからこそ、なんとかしてお茶を飲ませようって思えたし、火竜さんも嫌々ながら私にかまってくれたんだと思う。


 池から離れるように歩きながら答える。

 火竜さんが焦げ焦げにした一帯までは、すぐだ。

 到着すると、フレイさんが乾いた木を拾ってくれる。座れそうな場所の近くに積み上げると、火竜さんが点火。

 さすが竜がつけると一気に火がついた。


「ああ、あったかい……」


 側にしゃがんでいたら、フレイさんに言われる。


「さすがにそのマントは外して、火に当たった方がいい。時折火竜にさっきの温風を頼めば、早く乾くだろう」


「あ、そうですね」


 いそいそとマントを脱いだら、フレイさんがさっとそれを横からさらって、すぐ側の木の枝にかけてしまう。


「ありがとうございます」


「いや、気にしなくていいよ」


 そう言ったフレイさんに申し訳なくて、背負いカゴの中に入れていた敷物になりそうな布をその場に広げた。


「どうぞ座ってください。さすがに乾くまで少し時間がかかりますし」


「そうだね」


 応じたフレイさんは、ややあってから私の隣にちょっと距離を開けて座ったものの、私の方を見ない。

 そういえばフレイさんは、どうしてここに来たのだろう。ヘデルを入れる籠を背負っているわけではないし。

 私は火竜さんに横からぶわーと温風ブレスを吹いてもらいながら、質問する。


「それでフレイさんは、どうしてここに?」


「……正直に言うと、君を探していたんだ」


「私ですか? どうして……」


「火竜は基本的に、人を敵と認識している。いくら小さくても、いつ人に牙をむくかわからないだろう?」


「あ、なるほど……」


 確かに。私と火竜さんの間で魔力の譲渡契約ができているとか、団長様と契約させられているとかを知らなければ、そうなるだろう。

 あれ? 団長様と契約しているのは話してもいいのではないだろうか。まぁ、あとで団長様に確認しておこう。暴れないようにとか、そういう理由で契約したと言えばいいものね。


「ちっ、好き勝手言いおって」


 ブレスを一度止めた火竜さんが毒ずく。ちなみに温風ブレスは、数分休憩したら出せるとのこと。

 むかついたのか、火竜さんはフレイさんのところまで飛んで行き、ぺいっと後ろ足で背中にキックした。

 一瞬身構えたフレイさんは、ちょっと拍子抜けしたようだ。

 苦笑いして私の方を見た後、また視線を焚火にすぐ向けて立ち上がってしまう。


「あともう一つ、理由があったんだけど……」


 剣を抜いたフレイさんが、私に背を向け、やってきた池の方を見る。


「ユラさんはそこにいて。すぐ終わらせる」


「え?」


 疑問の声を上げた私は、フレイさんの向こう、池の側に現れた二つの黒い人影を見て、私は息を飲んだ。

 間違いない。

 私が精霊融合の禁術を受けた場所。あそこにいた人達と同じ格好をしていた。

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