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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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火竜さんのお食事1

 火竜さんが縮んだのは、どうも私が供給した魔力の質の問題だったようだ。


「お前のせいだ……。もっとしっかりと、我から奪った魔力だけを込めないから……っ」


 火竜さんの体を構成する魔力というのが、口から炎として接取して、火竜さんの体の中で時間をかけてカスタマイズされた魔力だ。

 ようは紅茶という形で体の中に入っても、すぐ浸透する魔力のほとんどは、私のマークがついた魔力ということで。


 多少なりと火竜さんの魔力がまじっていたこともあり、体の大きさが一時的に変化した。でも時間が経つと、火竜さん印の魔力ではないものは、体から離れてしまうみたい。

 着実に元に戻そうと思うのなら、火竜さん印の魔力を私が自分の中から厳選して、お茶に込めて飲ませるしかないようだけど。


「そんな器用な真似が、すぐさま私にできるとおっしゃる?」


「不可能そうだな……」


 問いかけると、そこについては火竜さんも諦めてくれた。


「とにかくこれについては、ちょっとまた創意工夫できるかどうか、考えてみます」


「早くしろ……さもなければ、今は我の魔力の名残があっても、あっという間にお前の色に染め変えられてしまう。それでは戻れぬのだからな」


 火竜さんには急かされましたが、確約できないので「がんばってみます」としか言いようがない。

 ……一個、これができそうな人の心当たりがあるのだけど。団長様、何て言うかな?

 聞いてみないとわからないよね。

 

 というわけで、次に未来のことをゲームとして知っている精霊がいることについて、考えたい。

 火竜さんのおかげでそれを知ることができたのだけど……。

 精霊、それもゴブリン姿の精霊にはゲームにつながる秘密があると思ってた。それが証明されたようなものだ。


 精霊の中には、確実にゲームの知識……むしろゲームをやっていた人間の知識がある。

 ソラなんかはその筆頭だ。

 でもプレイヤーみたいな言動の精霊さんに関しては、どう考えていいのかちょっとわからない。彼らは先のことを知って行動しているというより、その時リアルに「ログインしている」人のような感じだから。


「もしくは……。ログインした人のフリをして遊んでいる、とか?」


 話してみれば少しは手がかりが掴めるんだと思うけど、プレイヤー精霊さんが出てくる時って、たいてい大騒動だし、戦闘が終わると潮が引くようにいなくなってしまうので、話かけるいとまもない。


「今度こそ話しかける隙を狙うか、ソラになんとかして話してもらえるように頼むか……」


 そもそもソラは、なぜ話したくないのだろう。


「特に団長様には、姿を見られたくないって言っていたけど」


 だから団長様と、何か縁がある精霊なんだと思う。

 どうにかして話してもらうことはできるんだろうか。私が完全な魔女になる……この調子だとレベル50くらいになる頃には、秘密を打ち明けてくれるかな?


「それともケーキでも焼いて釣ればいいのか……って、あ!」


 私はそこで思い出す。

 私の魔力もろもろが上がったっていうことは、ソラって値上がりしているんじゃない? もうパンケーキじゃ呼べないかも!


「次のお菓子を考えないと」


 クッキーよりも大きなパンケーキの方が数が少なく済んだんだから、たぶんもっと大きなものを作ればいいのよね?

 ケーキとかタルトとか?

 何にせよ、考えるべきことがもう一つ増えてしまったようだ。



「先生おはようございます」


 体調も問題ないので、今日は朝の支度からいつも通りに行動した。ただ団長様にしばらく休めと言われたので、喫茶店の営業は明日あたりからにしようと思う。

 届けてもらった朝食を、先生のところに運ぶと、起きて診察室にいた先生が眉を跳ね上げる。


「もう調子はいいのか?」


「はい、特におかしな感じはしないです」


「まぁでも念のためだ。ちょっとそこに座りなさい」


 食事を乗せたトレイを近くの卓上に置いて、診察室の椅子に座る。

 まずは先生の魔法による診察。魔力量をそれでは計れないのがわかっているので、安心して受ける。どうもこれ、魔力が本人の容量に対して減っている割合とかを確認できるらしい。

 だから15万ある私が1万減ったぐらいでは、先生は何も問題がないと判定するのだ。

 ……なんか騙しているみたいですみません。


 その後、下目蓋をべーってするように引っ張られたり、大口を開けて喉を確認されたり、熱を確認するために額を触られたり、耳の下のリンパの辺りに触れたりされた。


 その時ふと思う。

 先生だと何ともないんだよね……と。

 これが団長様やフレイさんだったら、恥ずかしさで飛び上がって逃げる。間違いなく。耳の下とかもう、めっちゃダメでしょう。

 お医者さんのお仕事で、必要だからあれこれしてるせいもあるんだろうな。オルヴェ先生にその気は全くないし、私の方も患者さんという認識で受け入れているわけだし。

 そうして食事をとったのだけど、


「そういえばユラ」


「どうされましたか先生」


「そこの火竜は、何も食べなくていいのか?」


 オルヴェ先生が指さしたのは、私についてきていた火竜さんだ。

 一匹であちこちうろつかれても困るし、かといってずっとお部屋にいるのも息が詰まるだろうと、火竜さんについてくるかどうか聞いて見た結果だったりする。


「ここが人間の治癒者の部屋か」


 と言って、さっきからあちこちをしげしげと眺めていた。

 そういえば火竜さん、お腹がすいたとか言わないけれど大丈夫なのかな。


「火竜さんのお食事って……火でしたっけ? 何か食べたりしてみます? 焚火みたいなものとか」


 そう話してみると、火竜さんがむぅ、と目を細めた。


「それでは足りぬな。もう少し大きな火でなければ」


 このミニサイズでも、お食事は家が炎上するレベルがいいんでしょうか……。食欲旺盛だ。


「やはり火からの方が、魔力の吸収がいいからな」


「そうですか。魔力の吸収……お?」


 そこで私は、ふとひらいめいた。

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