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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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火竜さんを連れ帰った後

 お城へ帰った後も、なかなか大変だった。


「ユラは怪我をしたんですか? ……!?」


 顔見知りだったらしい、待機組の騎士さんが駆け寄ってきて、私が抱っこしていた火竜さんを見てぎょっとした。

 いやぁ、びっくりしますよねこれ。

 そんな感想は浮かぶけれど、それ以上はちょっと考えるのがつらい……。なんかこう、この世界で風邪にかかった時のことを思い出す。


 なにせこの世界には、精製された薬がない。怪我や魔法効果による状態異常は回復魔法で一発だけど、病気は地道に薬草で治していくしかない。

 そもそも精霊が実在して魔法が使える世界なので、原因が前世みたいにウイルスや菌なのかもわからない。体の魔力バランスが……とか、薬草でそれが安定して治って……とかありそう。

 なんにせよ、重い症状が出る風邪だと、一週間は寝込むことになる。


 よくお祖母ちゃんに看病してもらったな……。懐かしい。

 思い出すと、もっと小さく丸まってしまいたくなる。

 団長様に抱えられていても、恥ずかしさなんて全く感じなかった。とにかく体の辛さが優先で、抱えてくれる腕とかが暖かいのがありがたい。

 火竜さんに魔力が移ると少し楽になるんで、思わずぎゅうっとしてしまうけれど、火竜さんもじっとしていてくれる。


「ぴぎゅー」


 と抗議っぽい声は出すんだけどね。


「竜は、言葉が話せるユラに任せることにしている。ユラは魔力あたりを起こしたらしくてな、体調不良で先に戻した。ヘルガ達はいるか?」


「第五棟にいると……」


 応対する騎士さんは、戸惑いながらもそう答え、手を伸ばした。


「俺が運びますか? 団長も早く戻りたいでしょう」


「いや、ここまで来たら同じことだ」


 団長様は騎乗していたヴィルタちゃんを他の騎士さんに任せて、そのまま私を運んでくれた。団長様に応対した騎士さんは、先にヘルガさん達に報せに行ったようだ。

 第五棟に入ると、ヘルガさん達が待ち構えていた。

 団長様は私を部屋まで運んでくれると、ヘルガさん達に注意事項を告げる。


「ユラが抱えているのは、正真正銘の竜だ。うかつなことをするとかみついたり、建物を燃やす可能性もある。ユラが目覚めたらどうにかするはずだから、抱えたままにするか、うろついても触らないように」


「はい、承知いたしました」


 ヘルガさんがうなずいている。

 私はそれをぼやーっと見ていた。

 次に団長様は、抱えられて「ぴぎゅー」と言う火竜さんに言う。


「火竜、滅多なことをしたら辛うじて保っている力をはぎとる。大人しくその娘の側にいるように」


「ぴぎゃー!」


 火竜さんはおむずかりの様子で、団長様に牙を剥く。たぶん、命令するなとか思ったのかもしれないけど、ステータス画面もいつの間にか消えてて、何を言っているのかさっぱりだ。

 といあえず、団長様に迷惑をかけちゃいけないと思って、私は火竜さんの頭を撫でるようにして抱え込む。


 すると火竜さんも、あやされるように牙を収めて目を閉じた。

 よしよし。大人しくしないと、魔力を返しませんよー。

 なんて思っていたら、団長様が私の頭を撫でた。


「よくやったユラ。しばらくは飽きるまで休め」


 大きな手が、周囲にいる人の目をはばかってか、すぐに離れてしまう。

 けれど褒められて嬉しい。

 団長様が出て行くと、ヘルガさんに声をかけられ、火竜さんを一度横に置いた上で眠りやすい服装に改める。

 そうして再び火竜さんを抱えてお布団にもぐり込んで眠った。


 ……目覚めたのは翌日の夕方でした。

 

「おはよう」


 目覚めの時に側に座っていたのは、フレイさんだった。

 何かの合間に来たのか、マントも着込んだ姿だった。


「具合はどうだい? ヘルガ達が帰ったから、オルヴェ先生と交代で見ていたんだ。先生を呼んでくるから待っているといいよ」


「おてすう、おかけします……」


 寝起きでぼんやりしながらも、それだけは言うとフレイさんに笑われた。


「寝癖、可愛いね」


「はっ!?」


 フレイさんがそう言って、横髪にちょっと触ってから部屋を出て行った。


「……なに、今の……」


 ぼんやりしているせいで、すぐに対応できないまま見送ってしまった。とにかく寝癖。寝癖はいかん。

 オルヴェ先生はお医者さんだから、そんなこと気にしないでいてくれるだろうけど、みっともない。

 ぼさぼさしているだろう髪を手で梳きながら、さっきのフレイさんの発言のことを考える。


 正直、寝起きのひどい顔なんて見たら、百年の恋だって冷めるだろうと思っている私としては、フレイさんの発言が理解できない。

 犬猫の寝癖は可愛いけど……そういう感覚?

 とにかくできるだけ居ずまいを正そうとしたところで、横に転がる火竜さんに気づく。

 あわててステータス画面を開いて、チャンネルDをぽちっと押した。


「おはようございます火竜さん、お加減はいかがです?」


「くっ、まだ戻らん……」


 そう言って火竜さんはしょげていた。確かに小犬の大きさのままだ。

 ん、あれ? 火竜さんの声が直で聞こえるような。

 試しにチャンネルDをオフにしてみても、火竜さんの言葉がちゃんとわかった。


「え、あれ。チャンネルなくても火竜さんの声が聞こえる」


「お前の魔力を受け取ってるからだ。くっ……早く戻さんか!」


「とは言っても、方法がわからないんですよね」


「お前の魔力の中に、微弱―に我の魔力が混ざっておるが、足りぬのだよ!」


 副音声で火竜さんの声に、ぴぎゃーという声が聞こえる。何とも言えないこの気分。


「とにかく時間をかけるしかなさそうですよね。しばらく一緒に暮らしましょうか。あたりの物や人を燃やさないで大人しくしてくださいね」


「おのれ……。しかしお前から返させるのが、一番手っ取り早いのは確かだが……」


 火竜さんは「ぴぎゃー」と繰り返しながら悩み出す。

 すると「にぎやかだなぁ」と言いながら、オルヴェ先生が部屋に入って来た。


 とにかく熱なんかは無くなったとお墨付きをもらい、それでも三日は休むように指導されました。

 先生の診察も終了し、再び火竜さんと一緒に寝転んだ私は、はっと思い出してステータス画面を開く。


「そうなると思ってはいたけど……またMP増えた……」


 ユラ・セーヴェル/紅茶師

 生命力(HP)/魔力(MP)……800/150000


 攻撃力………6  魔法攻撃力………… 700

 筋力…………6   魔法スキル練度…… 875

 速さ…………9   剣技スキル練度……   0

 物理防御……8   魔法適性…………10000

 魔法防御……650 精霊適性…………10000


 取得能力

 紅茶師……スキルレベル19

 チャンネル:C・D・E・F・G


 魔女 ……スキルレベル35

《精霊操作LV10》《精霊召喚LV10》《精霊力操作LV10》

《冥界の知識》《魔力操作》

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