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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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火竜さんお茶の時間です3

 まず第一撃を加える騎士達が、火竜さんに接近する。


《火竜:貴様ら全員、地獄に落として……》


「火竜さん、ダメージ三回ぶんは当てさせてくださるんじゃないんですか?」


 不穏な言葉を見て、私は思わず茶々を入れた。


《火竜:はあああっ!? なんじゃそりゃ! こちらも普通にお前達を叩き落としてやると言っただろう!》


 騎士さんに向かって口を開けかけた火竜さんが、かはーっと煙を吐いた。

 その間にフレイさん達の攻撃が始まるが、火竜さんはそれを避けるために尻尾をふりまわすのみになった。

 それでも危ないけれど、飛びトカゲに乗っている騎士達は鮮やかに回避していく。


 かわしたと見せかけて、明後日の方向に煙を吐いた火竜に、フレイさんが背後から襲いかかる。

 フレイさんが剣を振るうと、青白い光が針のように火竜に突き刺さった。


《火竜:くそっ、いまいましい!》


 続こうとした騎士達が火竜の翼に邪魔され、それ以上の打撃は与えられなかったけれど、一撃は入った。

 でも火竜が怒ったらしく、手っ取り早く主な原因に視線を向けた。

 すなわち私――が乗ってる、団長様の竜だ。


《火竜:この魔女め……。へりくつをこねて、邪魔をしおって!》


「団長様、火竜さんが少々お怒り気味のようです」


「そうだろうな」


 団長様は、戦闘真っ最中とは言い難い、微妙に疲れた表情をしていた。


「言いたいことは色々あるが、先に竜の始末をつけるか。振り落とされることはないと思うが、用心しろ」


「ひゃっ」


 言うなり、団長様が一気に高度を下げた。


「あっ、ブレスが」


 そんな私達に、火竜がブレスの準備をしていた。

 その一瞬に、水筒を一つ騎士が投げたものの、火竜が警戒して前足で叩き落とした。

 もったいないけれど、それで大いに隙が出来たのは確かだった。

 団長様は火竜のブレスを難なくかわす。


 真横を走る炎の帯に息を飲んだ私だけど、団長様は涼しい顔をして剣を振るった。

 私は急いで目を閉じた。まぶたを通しても見える、強い光。

 竜が叫んだけれど、何と言っているのかはすぐわからない。まぶしすぎて、なかなか視力が回復しなかったからだ。


 目を開けた時には、火竜がのたうち回り終えて、起き上ったところだった。

 ここで火竜はとてもマズイと考えたようだ。


《火竜:精霊王の剣はあれ以上使えぬと聞いたのに、騙されるとは……。もう、一撃たりともダメージを与えられてたまるかっ》


 火竜は泣きごとをもらしたかと思うと、咆哮し、炎の色の霧を出現させた。火竜の体が赤い霧で覆われて、すりガラス越しの光景のように見えにくくなった。


「面倒だな」


 団長様が火竜から距離を離しながらつぶやく。


「あれは何ですか?」


「竜なりの防御術だ。火の精霊力で作った盾だから、上級魔法の精霊の盾と似た効果と、物理防御力もある。ほぼこちらは何もできなくなるな」


「そんな……。それでは三回目の攻撃が難しいのでは」


 団長様が、風に銀の髪をなびかせながらうなずいた。


「火竜の魔術が切れるのを待つか……攻撃を繰り返して、防御を破るしかないな」


 そうして団長様は抜身の剣を閃かせた。


「通常攻撃でも、この剣は十分に使える。いくらか当てれば壊れるだろう。……精霊の盾は使えるか?」


「は、はい!」


「間違いなく自分にかけておけ。万が一の場合に、一番影響が及ぶのはお前だ。竜の魔力下にいるから、他の騎士よりはずっと守られた状態だろうが……」


「他の騎士さんにも、かけてもいいですか?」


 団長様は一秒考えたようだ。


「三人までだ。それ以上になると、私がやったことにしても、不審がられる」


 言いながら団長様が手を振る。

 火竜から一定の距離を置いて散らばっていた騎士の中から、一隊が団長様の近くに来る。

 フレイさんの隊だ。

 団長様が指示した意味はわかる。精鋭で、これから団長様と一緒に、火竜の防御を崩すために最適だと思われたから。

 団長様は私にささやいた。


「火竜に対して、ある程度自分で防御の魔法が使える者達だが、最も魔力が高いのはフレイだ。フレイは自力の魔法でどうにかなるだろう。他の者から三人選べ」


 フレイさんは大丈夫だと、団長様は信じているらしい。


「…………」


 私は言われた通りに、自分と団長様、そして三人を選んで精霊の盾を発動する。魔法をかけられた三人はちょっと驚いた顔をしたけれど、団長様がしたことだと思ってくれたようだ。団長様に敬礼のような仕草をして見せている。

 ほっとしながらも、私はやっぱりフレイさんにも、残りの五人にも魔法をかけたい。でも止められているのは、魔女だということがわからないようにするためだ。だから仕方ない。

 悩んだ末に、私は火竜さんとまた話してみることにした。


「火竜さん、防御方法するなんて、自信がないんですか?」


《火竜:自信という問題ではないわっ! わしだって痛いんじゃ! 特にそこの精霊王の剣はな!》


「そうでしょうけれど」


 団長様の剣で三度ダメージを与えただけで、火竜さんはこの山から動けなくなったのだから、それは察して余りありますが。

 でも私は、もう攻撃する必要もなく、大人しくお茶を飲んでほしいんだけど。


「それなら、条件をダメージニ回までに変更しませんか? そうしたらお茶を飲んで終わりですよ? 魔力がこもってますので、さぞかしお体も回復するかと」


《火竜:回復……ぐぬぅ》


 ダメージも入ったせいか、回復という言葉に火竜さんはとても魅力を感じたようだ。そうでしょうそうでしょう。

 でも一筋縄ではいかない。


《火竜:その茶を飲ませてどうする気だ……。きっと何か変なことになるんだろう。お前のことだ。絶対に何かやる!》


 完全に警戒されてしまった。

 これではますます防御を固められてしまう。そう焦った時だった。


「隊列止まれー」


「とまれー」


 一列に並んだ精霊が、竜の首のあたりにぽんっと現れた。

 青白い、キラキラとした氷の結晶のような飾りをつけた、二足歩行のウサギ姿だ。でもそのうち二体は氷の結晶の飾りをつけたゴブリン姿なので、間違いなく精霊だ。


「え?」


「……なっ!?」


 後ろの団長様も驚いていた。

 それはそうだろう。急に呼びもしないのに、整列した精霊が出てくるなんて、団長様だからこそ思わないはず。

 精霊は基本的に自由で、こんな風に組織だった動きもしないし……。


「戦闘じゅんび―」


「バフはー?」


「手当たりしだいに!」


「炎耐性のつくやつたのむ」


「継続回復もほしーの」


 こんな会話はしないから。

 って、そうか。クエストだからプレイヤー役の精霊さん達が出現したんだ! やった!

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