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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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火竜さんお茶の時間です1

 火竜さんの墜落場所までは、竜や飛びトカゲで行けばすぐだ。

 ゲームでは火竜と戦うその前に、問題が発生する。

 それはいよいよ始まる、魔女の妨害。

 火竜を早く自由にするために、魔女の仲間が氷の精霊力を減らすため、魔物を放つのだ。


 火では氷の精霊力にやられてしまうので、敵は寒さに強い土属性の魔物を使っている。彼らはプレイヤー達を見つけると、こちらにも攻撃をしかけることになっていた。

 そのせいで、プレイヤー達は山を登りながら戦うことになるんだけど。


 私はその情報を、精霊さんから聞いた、という体で話すことにする。

 なにせストレートに言うと、さすがの団長様も「どういうことだ」と不審に思うだろう。そんな情報を得られるのは、敵と通じている人間だけだ。

 それだと魔女だと明かす以上に、団長様にとっては信用ならない人間になってしまう。前世の記憶とか、誤魔化しにしか聞こえないに違いない。

 むしろ実験時に、敵側の言うことを聞くように魔法でもかけられてて、いざという時に行動するため情報を与えられたとか、そっちの疑惑をかけられそうだもの。

 ……自分で考えてて嫌になってきたな。


「……団長様、火竜の側には『岩喰い鳥』がいると精霊が言っていました」


 岩みたいな体の鳥だ。鳥なのに牙もあるしかぎ爪も鋭いし、なにより石つぶで攻撃をしてくる。

 おかげで山頂に、竜が直接乗り入れることができなくなってしまうのだ。

 岩喰い鳥のことを知らせておきさえすれば、団長様なら、火竜にこのままアタックするのは難しいと気付いてくれるだろう。


「イーヴァル!」


 名前を呼び、団長様がイーヴァルさんに何かのサインを送った。それはイーヴァルさんから他の人達にも伝えら

れていく。


「魔物がいる可能性については伝えた」


「ありがとうございます!」


 これで岩喰い鳥の対策はできるだろう。魔物の名前を聞いた団長様が手配したのだから、大丈夫なはず。

 ブレスについては、次の交渉次第かな。


「団長様、とりあえず火竜と話してみるので、ちょっとだけ攻撃を待っていただいても?」


「……話す?」


 団長様が眉をひそめた。

 あ、しまった。火竜と話せること、団長様に言ってなかったわ。


「実はゴブリンやクー・シーみたいに、竜とも話せることがわかりまして」


「……相変わらず非常識な」


 そう言いながらも、団長様は苦笑いするだけだ。


「お前が魔物と話せるのは、今さらのことだったな。それで竜は何と言っていた」


 受け入れてくれたことにほっとしながら、私は正直に言った。


「確かこちらに対して、ブレスによる殺害をほのめかした発言が少々」


「……焼き尽くすとかそういうことか?」


「まさにそれです。でも再連絡すると言って放置したら、なんか寂しがってました」


「さみし……」


 団長様が絶句していた。

 寂しがる竜って話なら、火竜さんのこと、ちょっと可愛いなと思ってもらえるかと思ったんですが、だめでしたか。


「ええととにかくですね。水筒を口に放り込んでいただくタイミング的に、火竜が会話に気を盗られた瞬間を狙っていただけると安心かなと。ブレスを吐く前の前兆動作の時にも放り込めそうですけれど、近づくと危険そうですから」


 団長様に作戦的な話をすると、五秒ほど無言だった。

 あ、団長様を悩ませてしまったみたい……? いや、これはもしかして怒られる?

 びくびくしていたら、ややあって団長様が言った。


「とにかくわかった。ブレスを吐く直前よりは、安全だろう。元から私の合図で投げさせる予定だったからな……なんとかしよう」


「よ、よろしくお願いします」


 怒られなかった、良かった……。

 考えてみれば、ゴブリン、クー・シーと話ができていたんだから、竜とも話せると言っても、受け入れやすかったのかもしれない。竜は知能が人以上の場合が多いという話だし。

 そこでふと思う。私、ヴィルタちゃんとも話せるんじゃないかな? でも今までチャンネルDが発動しなかった。どうしてだろう。


「そろそろ上空だ、ユラ。ヴィルタに掴まって伏せていろ。そして何でもいいから話しかけ始めてくれ」


 団長様にそう言われて、しっかりと鞍の持ち手を掴んで伏せ気味にする。

 その背後で、団長様が剣を抜いた音が聞こえた。

 私はステータス画面を出し、チャンネルDボタンを押す。


《火竜:…………》


 やっぱり火竜さんしか出ないみたいだ。複数人と同時会話ができるのは、ゴブリンやクーシーでも経験済みなので、ちょっと不思議だ。

 その疑問は横に置いて、まずは任務を果たす。


「あーあー。火竜さん、いつもの魔女ですがお元気ですか?」


《火竜:き、貴様。ようやくきたのか……っ!》


 あれ。これって待たれていたパターンってやつですか。


「予告したので、来るのを待っててくれたんですね、嬉しいです。お届け物をしに襲撃しに来ました」


《火竜:届け物……?》


 火竜さんが普通に尋ねてきてくれた。お届け物に興味ありですか? と思ったら、背後から疲れたような声が聞こえた。


「ユラ……まさか、その会話で火竜に呼びかけているのか?」


 団長様に尋ねられたので、素直にお返事する。ちらっと振り返ったら、団長様が珍しくも呆然とした表情をしていた。


「はい。あまり深刻な話し方だと、普通に害意を煽るだけかなと……」


「いや、むしろ煽ってないか?」


 そうでしょうか?

 画面を見ると、火竜さんは私の返答が聞こえていたみたいだ。


《火竜:誰と話してるんだお前……。なんて扱いもう好きにしろよ……ブレスで吹き飛ばしてやるから……》


 物騒だけど、トーンダウンしているもよう。これはいい傾向だと思うんですよ。最初は問答無用で森と一緒に焼き払うって感じだったので。


「よしんば煽っているとしても、戦闘時にまず間違いなく私を攻撃してくるので、他の騎士さん達は標的にならないのでいいかなと」


 なにせ上級魔法の精霊の盾で、ブレスを防げるのはわかっているのだ。


「あと一応お話は聞いてくれるみたいですし、お届け物に興味は持ってもらえたようなので」


「……本当か?」


「疑問視されましたが、たぶん大丈夫です。だって今、襲撃のことよりお届け物の方を気にしてくれてみたいなので」


 すると団長様は、三秒ほど空を仰いだ。


「……慣らされたんだな」


 妙な感慨をもったつぶやきが聞こえたけれど、私は笑って目をそらした。

 とにかく火竜さんにお返事しよう。


「あ、すみません放置して。火竜さん、お茶はいかがですか?」

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