表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/259

団長様に不審がられたものの

 それを見たとたん、私まで照れてしまって、団長様の顔が見られない。

 そもそも私のことペット扱いで、剣にキスぐらいは気にしないと言っていたのだ。団長様が恥ずかしがるわけが……ないよね?

 私が気づかないだけで、団長様は耳が赤くなりやすいのかもしれないし。

 視線をそらしているうちに、団長様は剣を元のように腰に吊るし直してから、鞘から抜いた。


「確かに、少し戻っているな」


 予定通り、剣の力を戻すことはできたらしい。

 団長様の声はいつも通りで、やっぱり照れているように見えたのは錯覚な気がしてきた。剣を鞘に収める時も、特に表情は動かしていないし。


「よ、良かったです」


 一方の私は、答えたものの少しどもってしまう。

 私の平常心よ……よみがえってお願い。団長様がペット扱いのつもりだったら、とんでもなく迷惑だろうし。

 そうだ。用事が済んだのだから、早めにここは退出しよう。


「そうしましたら、竜の討伐に同行する日時が決まりましたら、お知らせください」


 お願いをして扉へ向かおうと一歩踏み出したその時、団長様が驚くことを言った。


「ああ。行くとしても、次はフレイと一緒に行動はさせない」


 え? と思わず団長様の顔を見上げる。団長様は、表情を消して続きを口にした。


「フレイは、お前の様子を観察させる役目から外した」


「え……」


 言われた意味が、なんだかキツイもののように聞こえる。

 観察を必要ないからやめた、というのではない。その役目から外したというのは、まだその役があってもいいのに、フレイさんは不適格だとされたということ?


「あの、フレイさんはどうして……」


「そろそろ必要ないだろうからな。お前の状態を知りたいのなら、オルヴェに聞けばいい。そしてお前自身も、竜のブレスを防げるほどの魔法が扱える。並みの騎士以上の戦力を持っているんだ」


 強くなったから必要ないと言う。


「でも、あまり魔力が大っぴらになると問題が……。あと、竜との戦闘時は飛びトカゲに乗せていただかないと」


「それは私が連れて行く」


 だからフレイさんでなくともいいらしい。

 理由はわかったのだけど、なんとなく、釈然としない気持ちが残るのはなぜだろう。

 でもおかしい話ではないし、魔女のことを知られたくないのなら、団長様と一緒に行動出来た方が、私も都合がいいのだけど。


「私と一緒では不服か? だがそれが嫌なら、お前の茶を飲ませるという試みの方は、遠慮してもらおう。できればお前を火竜に近づけたくはないからな」


「私も近づきたくはないんですが……」


 普通に戦う以外の方法を使わないと、タナストラと紛争が起こってしまうから。そうしたら、魔女とも面倒な戦いをしなくてはならなくなる。

 どうにか流れを変えたい。火竜がタナストラを攻撃しなければ、それが叶うのではないかと思うのだ。

 だから連れて行ってもらいたいのだ。


 たとえ団長様の剣が少し回復したことで、火竜がタナストラを攻撃せずに終わる可能性があっても、だ。

 何があるかわからないから……。

 と、そこで団長様が変なことに気づいた。


「ユラ。お前はどうして、火竜をそこまで穏便に退けさせようとする?」


「そうしたら誰かが怪我をする可能性が、減りますよね……?」


 みんな仲良く終われれば、その方がいいはずだ。

 まぁ火竜の方はほら……私が無理を言わせるわけで、ものすごく釈然としないだろうけども。

 彼は尊い犠牲になるのです(決定事項)。


「だがお前は戦闘には参加したくないだろう。近づきたくないというのはそういうことだろう? むしろ剣が一度使えれば、騎士団で火竜を倒すことができる。無理にお前が行く必要はないのに、なぜ自分の気持ちを曲げてまで他の方法を勧めようと思った?」


「え? でも団長様。楽な方法を思いつけたら、きっと誰だってそちらを選択したいと思って、実行しますよね?」


 勝敗が一気に決する大魔法を知っていたら、当然使うと思う。

 だけど団長様が言っているのは、そういうことではなかったらしい。


「前から、少しひっかかってはいた」


 団長様は私に一歩近づく。あ、なんか嫌な予感がするぞ。

 そうして私が逃げようとするのを防ぐためか、団長様が私の肩に手を置いた。


「私はできれば火竜に近づけたくはない。なにせお前の防御力は、魔法が切れたら紙同然だからな。簡単に死んでしまう。以前は魔法も使えないのに、ダンジョンへやってきた。どうしてそこまでする?」


「あれはとっさのことで……。怖い場所だということを、考えていなかったんです」


 よもやここで「ダンジョンに異常が起こっているので、なんとかしないとストーリー通りに進まないと思った」とか言えるわけもないし。

 なのでものすごく曖昧な言い方をする。


「それにブレスなら、防げることがわかりましたので。団長様と一緒に行動をするのなら、団長様が魔法をかけたということにできるので、大丈夫ですよね?」


 なにせ私は呪文がいらない。

 団長様が唱えた時に、ボタンをぽちっと押せばいいのだ。

 と言ったのに、団長様がため息をついた。


「お前を心配してはいけないのか?」


 団長様の肩に置いた手が、私の頬に触れる。


「え、あの、心配して下さるのは……嬉しいです」


 思わずうつむいてしまう。恥ずかしくて。

 というか団長様、どうしてそんな聞き方をするんですか! 普通に心配してくださるにしても、なんかこう、雰囲気が甘すぎる気が……。

 犬猫みたいに、触っていると思っていいんだよね?


 さっきから、私はどう受け取っていいのかわからなくて困惑する。

 何より自分が、嫌じゃないから困る。


「でも、団長様達が怪我をするのとかは嫌です。それなら、いくらでも我慢できます」


 喫茶店を開いてから、今まで以上に騎士さん達とも仲良くなった。その人達が怪我をして、オルヴェ先生のところに担ぎこまれたり、命を落としたりしたら……きっと後悔する。

 なんで自分は、怖がって何もしなかったのかと。


 状況を覆せる力と、知識があるなら、私はためらうべきじゃない。

 だけど知識の分については、明かせないのだけど。


「無理はするな。そもそもは、お前に戦わせるために、騎士団に所属させたわけではないのだからな」


 そう言って手を引いてくれた団長様に、うなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ