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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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団長様の発言がまたしても危険です。

「…………!」


 ちょっ、これはどう回答したらいいのかな?

 今の危険な言葉の方に、私、心臓が飛び出しそうになったんですが!

 だってこの言い方ちょっと……色々と危なくないですかね? 考えすぎ?


 そもそも団長様の場合、やたら言葉選びがおかしいけれど……。

 そうだ。団長様は私をペット扱いされておられるはず。犬なら「抵抗しないんだな」って言っても、まずおかしくはない。

 そういうことに違いない。まだ慌てるような状況じゃない。

 自分の頭の中で葛藤し、ようやく落ち着いていたのに、団長様がさらに心臓に悪いことを言い出した。


「抱き上げても抵抗しない猫みたいだな。こういうのに慣れているのか、それとも……」


「な、慣れてません! こんなことを頻繁にしてくるのも、団長様だけです!」


 言ってから私はハッとする。

 私もなんだかとんでもないことを口走っている気がする。

 これじゃいつも、団長様と抱きしめ合ったりしているみたいだし、私がそれが普通だと思っているような感じに!


 と思ったら、団長様が私の頭に頬をくっつけるようにした。

 団長様が、どんな顔をしてそんなことをしたのか、全く見えない。

 そして耳に感じる息に、私はぎゅっと目を閉じる。


 団長様、どうして? 

 これじゃまるで……私のことが好きみたいじゃないですか。

 そう思うと、なんだか涙が浮かびそうだ。

 ずっと昔、噂をたてられた時のことを思い出す。自分が好きだと思ったら嫌がられるような人間だ、と言われたように感じた時のことが心に蘇って、なんだか怖くなった。


 勘違いだったら、恥ずかしくて飛び下りたくなってしまう。

 それに、私みたいなただの田舎娘が、王族の団長様に恋されるわけがない。万が一にも団長様がミラクルな選択をしたところで、身分の問題があるだろう。


 ――それに、私は魔女だ。

 竜が呼ばれた以上、他に魔女になった人がいるのは確実だし、そちらが本当の、メインストーリーの魔女なのかもしれないけど。

 でも私にも魔女のスキルがある以上、自分がラスボスではなくても、いずれは姿を消すしかないのだ。

 だって、もし魔女と戦うことがあれば、私が魔女だということはバレてしまう。

 それにゲーム通りの魔女だとしたら……。同じだけ力が強い私が戦わないと……。


 そうして発覚したら、魔女を保護していただけでも、団長様は迷惑するだろう。

 でも離れたいとは思わない自分が、なんだかどうしようもなくて。


「お前はまだ、私が飼っているんだ。誰か他の男を好きでも、まだ離れるな」


 でも団長様はそう言ってくれる。

 少しは好きでいてくれるんですか? 私は、ペットに対する気持ちでも十分ですよ? 多くは望みません。


「まだ離れません。私はまだ、団長様のペットでいさせてもらえるんですよね?」


「もちろんだ。まだお前は私のものだからな」


 私の答えに、団長様はようやく身動きしたので、腕を離してくれるのかと思った。

 けれど違った。

 耳のすぐ近くを、吐息ではない柔らかなものが触れていく。そうして団長様は抱きしめた腕をゆるめてくれたのだけど。

 私がその手を離せなくなった。


「どうしたユラ」


 団長様が、わかっているけれどわざと尋ねたかのように、笑いを含んだ声で言う。


「あの、このまま一人で乗っていたら私、落ちます」


 こめかみに口づけられたのだとわかって、頭がパンクしそうで。頭の中がぼんやりしてきた。

 手がちゃんと、鞍の前を掴んでいられるのか自信が無い。

 し、シートベルトください!

 団長様は、笑いながら私の腰を抱え直してくれる。少しだけそれでほっとしたけれど、今日の団長様はいじわるだった。


「でもやはり、嫌だとは言わないんだな」


 団長様は満足げだけれど、私はそれどころじゃありません!


 そうして間もなく、私と団長様は城へ戻った。

 中庭に降り立った団長様から指示を受けるべく、待ち構えていた騎士達が駆け寄って来る。

 団長様はすぐに火竜の落下場所を教え、そこへの討伐隊を組織させる指示を出していた。


 そんな中、団長様に小脇に抱えられて地上へ降りた私は、まだぼんやりしていた。

 でもそれについては、


「竜が火を吹いた場所の近くにいたんだろ。そりゃ呆然とするさ」


「間近で団長の剣の力見て、目がちかちかしているんじゃないのか?」


 そんな風に解釈してくれたようだ。

 オルヴェ先生のところへ戻りなさいと、みんなが肩を叩いてくれる。私はありがたく、頭をペコペコ下げながら帰ろうとしたのだけど。

 そんな中フレイさんは、ただじっとこちらを見るだけで、珍しく話しかけてくれることはなかったのが、少し不安だった。


 なんにせよ、一度休もう。さもなければどうしていいのかわからない。

 私は荷物を降ろし、部屋に入ってマントなんかを脱いだところで、ほっとして寝台に座り込んでしまった。


「団長様……、いや、それは忘れよう」


 気づくと団長様の言葉や態度を思い出してしまって、どうしても他に思考が向かない。まだお昼で、お店を開けようと思えばできる時間なのに、ずっとぼんやりするわけにはいかないし。

 何より、聞かない限りは団長様の真意がわからない。でも聞くのは怖いから、忘れるのだ。

 むにーっと自分の頬をひっぱり、痛みで少し正気に返る。


「そう、竜のこと。竜のことをどうにかする方法を……」


 でもとりあえずは、火竜が登場した時の被害は抑えることができたんだ。

 それを思うと、ちょっとにやけてしまう。

 初めて魔女の力で、そうなるべき運命を変えられたという実感があった。


「お祖母ちゃん私、やったよ……」


 だから思わず、そんなことをつぶやいてしまったのだった。

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