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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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魔法の訓練は夕刻に 1

「それで……量産の方は上手くいきそうなのか?」


「はい。ヘデルさえあれば紅茶が作れるようになりました。前みたいに数種類のものを混ぜて、ちまちま煎る必要もないので楽です。けれど今日のコレで、早く乾燥させられる魔法ができれば場所をとらずに済むようになるんですが」


 今、私は空の上を飛んでいた。

 夕刻、団長様が竜の運動のために飛ぶらしく。それに便乗して、城から離れた場所で魔法の調整を試みることにしたのだ。

 基本的に竜も飛びトカゲも一日一度は空に離して、勝手に戻ってくる。だけれど、定期的に団長様が乗ることも必要なのだそうだ。


「とにかくこれで、沢山お金が入ります! ありがとうございます団長様。イーヴァルさんも交渉してくださって、感謝していますとお伝えください」


 たぶんイーヴァルさんの場合、団長様からお礼を伝えられた方が喜ぶと思うんだよね。

 すると団長様が「ああ、あいつな……」とやや疲れたように言う。


「金銭関係を扱うのが好きなやつだからな。せいぜい使ってやってくれ。そもそもあれは、騎士よりは家令になりたかった男だからな」


「あ、わかる気がします」


 お金のことになるとイキイキして、団長様の命令で動くのがとても楽しそうだ。


「そもそも、なぜ騎士になったのかと言われるような奴でな。それも仕方ない。あれは元々、狩人の子なんだ。公爵家の家令となると、ずっと仕えている家系の人間がいるんで、難しかったんだ」


「納得です」


 もっと低い貴族の家だったら、平民が家令にということもままある。でも伝統ある公爵家では代々当主の秘密を守り続けて来た一族がいるだろう。そこにぽっと出のイーヴァルさんが割り込むのは厳しいに違いない。


「それならばと、側について歩けるように騎士になることにしたらしい。戦闘に関する才能もある奴だったからな。むしろ自分で立身出世を目指しても、それなりの地位にはつけそうなものだが……」


 オールラウンダーなんですねイーヴァルさん。でも団長様。たぶんイーヴァルさんは団長様と一緒以外の人生とか、考えていないんじゃないですかね?

 どうしてそんなに入れ込んだのか……と思って、ふと私は察した。


「王都から離れてお暮しだった頃に、イーヴァルさんと知り合われたんですか?」


「そうだ。よくわかったな」


 なるほど。困り顔をしながらもイーヴァルさんを信頼しているのは、辛い時に支えてくれた一人だったからだろう。

 イーヴァルさんもそんな頃に出会ったからこそ、団長様のことを卵を守る母鳥みたいに気を遣うのか。


「イーヴァルさんが団長様に過保護っぽいので、そうなる原因はそこだろうなと思ったんです」


 素直にそう言うと、団長様が笑った。

 その時、目的地に到着したようだ。

 森の中でも採取の人間が近づかない、けれど警戒ラインの内側にある場所だ。

 ここならまず、私が魔法を使ってもその状況を知られることはないだろう。

 魔物は先日の一件で移動したあげくに大量に倒されているので、少なくなっているらしい。

 少し開けた場所で降りた時には、まだ日は傾いているけれど、少し薄暗くなった程度の時間だった。


 それにしても……団長様、からかわれても別に良かったのかな。と、出発前のことを思い返す。

 団長様が珍しくも、私を一緒に連れて行くというので、厩舎の担当の見習い騎士さんも、行き合った騎士さん達もなんだか生ぬるい笑みを浮かべていた。わかってるよ……みたいなあの空気。


 覚えがある。というか前世ではそういう視線を送る側だった。

 付き合ってるんだろうな、あの二人……隠してるつもりなんだろうな……という。

 実はペットと飼い主なのだけど。

 しかもそのペットは、いずれ脱走予定です。恩を返すので許してほしいと私は思うばかりだけど、団長様は何か支障はないんだろうか。

 気にしている様子もないけれど。


 と、そこで思い出すのは結婚する気がない、という団長様の言葉だ。だから見守るような目を向けられても、自分には関係のないものだと思っているのかもしれない。

 ま、とにかく今は魔法の実験だ。

 まずは一通り魔法を使ってみた。


「あの、呪文を唱えなくても驚かないでくださいね?」


「……それは魔女だからか?」


「たぶん、そうだと思うんです。では始めます」


 まずは初級の魔法から。

 ステータス画面を見たらいつの間にかLV2になっていたけれど、普通はそれぐらいでとてつもない差が出るものではない。ちょっとダメージが増えるぐらいだ。……ゲーム上では。

 でも火球を使えば一気に五つ出て来て、風も切りつけるだけのはずが、離れた場所の木立を切断して斬り倒してしまった。


「……ほとんど使っていない状態でこれは……確かに異常だな」


「そうなんです……。次は、中級へいきますね」

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